Friday, May 17, 2024

独逸語大講座(20)

Als die Sonne aufging, wachten die drei Schläfer auf. Sofort sahen sie, wie1 schön die Gestalt war. Jeder von ihnen verliebte sich in2 das hölzerne Mädchen, jeder von ihnen wollte es zum Weibe haben, und so gerieten3 sie zuletzt4 in Streit.5 „Ich habe es zuerst gemacht,“ sagte der Zimmermann, also ist es mein Eigentum.6" Ich habe ihm das Teuerste7 gegeben," sagte der Goldschmied, „also gehört es mir.“ „Sie ist mein,8" rief9 der Schneider dazwischen,10 „denn11 erst12 die Kleider machen ein Weib schön.“ Der Mönch aber gebot13 ihnen Stillschweigen14 und sprach: „Was bedeutet das alles,15 was15 ihr dem Mädchen gegeben habt, ohne dasjenige,16 was mein Werk17 ist? Ein Stück18 Holz und weiter19 gar nichts. Mein Recht ist unbestreitbar,20 denn ich habe ihr die Seele gegeben."

訳。太陽が昇ると als die Sonne aufging, 三人の眠り手たちは die drei Schläfer 目覚めた wachten auf. 彼等は sie 直ちに sofort 如何に wie 其の似姿が die Gestalt 美しくある〔かを〕 schön war 見た sahen. 彼等の各々が jeder von ihnen その木製の乙女に in das hölzerne Mädchen 惚れ verliebte sich 彼等の各々が jeder von ihnen それを es 妻君に zum Weibe 持とうとした wollte haben, そう云う風にして und so 彼等は sie 結局 zuletzt 喧嘩を始めた gerieten in Streit. 「俺がそれを最初に造ったのだ」 „ich habe es zuerst gemacht“ と大工は云った sagte der Zimmermann 「だからそれは俺の財産だ」 also ist es mein Eigentum. 「私はそれに最も貴重なるものを与えた」 „ich habe ihm das Teuerste gegeben“ と金細工師は云った sagte der Goldschmied 「だからそれは我輩に属する」 „also gehört es mir“ 「彼女は俺のものだ」 „sie ist mein“ と裁縫師はその間に挿んでどなった rief der Schneider dazwischen 「何故ならば denn 着物にして始めて erst die Kleider 一人の女を ein Weib 美しくする」〔事が出来るのだから〕 machen schön.“ ところが僧は der Mönch aber 彼等に ihnen 沈黙を Stillschweigen 命じ gebot そして und 云った sprach:「愚僧の業なる was mein Werk ist ところの物 dasjenige なくては ohne 卿等が乙女に与えたるところの was ihr dem Mädchen gegeben habt それら凡ての物は das alles 将た何事を意味するや was bedeutet? 〔それは単なる〕一片の木材〔なり〕 ein Stück Holz 而して und それ以上 weiter 何物にも非ず gar nichts. 愚僧の権利は争う可からざるものじゃ mein Recht ist unbestreitbar, 何故と申すに denn 愚僧は ich 彼女に ihr 魂を die Seele 与えたぞ habe gegeben.

註。――1. wie は此処では疑問詞で、(英 how)それを接続詞的に用いたのである。「……の如く」(英 as)と云う wie とは別物である。――2. sich verlieben (惚れる)は in を伴う。即ち sich in jemanden (四格) verlieben と云う使い方である。――3. gerieten (陥いる)は既に一度出た字。――4. zuletzt=endlich, am Ende, schließlich.――5. in Streit geraten (争いに陥いる、即ち争い始める)は熟語。――6. eigen (英 own)「己れ自身の」という形容詞から来た名詞。つまり英語の possession. =tum と云う語尾は英語の -dom と云う語尾にあたる。――7. teuer (英 dear)「高価な」に =st の語尾を附けると teuerst から中性名詞 das Teuerste (最も高価なもの)を造ることは第二巻 188 で述べた通りである。――8. mein は英語の mine と同じ使い方をする。――9. rufen (呼ぶ)の過去。呼ぶと云うのは、つまり「呼ばわる」大きな声を出して言うこと。――10. dazwischen は「其の間に」、即ち他人の言葉の間を縫うようにして、他人が喋舌っている真最中に、の意。――11. denn は「何故と云うに」と訳するのが適当である。weil のように「であるために」と、後の方から先に訳して後で附けるのとは多少趣を異にしている。――12. erst は茲では前置的なものであるから、erst die Kleider (着物が始めて)と、名詞と合体して考えないといけない。(第四巻に於て述べる筈の所謂前置詞的接続詞なるものに属する)。――13. gebieten, gebot, geboten (命ずる)。――14. Stillschweigen は stillschweigen (沈黙する)という分離動詞を不定法の儘名詞化したもので、こんなのは必ず中性である。(第一巻 47 の 2).――15. alles, was に就ては第二巻 166.――16. dasjenige に就ては第二巻 178.――17. Werk, n. (英 work)は、業績、作品、作の事であって Arbeit (働き)とは違う。けれども日本語でも「仕事」という言葉を作られた物品と働きという動作との両方に用いるように、Werk も Arbeit も其の両方の意味に用いる。――18. Stück (英 piece)英語では a piece of wood だが、独逸語では of に相当するものを入れないで、単に並べて ein Stück Holz という。ein Glas Bier (一杯のビール)ein Pfund Zucker (一ポンドの砂糖)等。――19. weiter (英 further)は、「それ以上」「それ以上進んで」「それ以外に」の意。たとえば ich lese weiter (私は読み続ける)に現れた前綴 weiter= と同じ事。――20. unbestreitbar の un= は英語の否定前綴 un- と同意。bestreiten が「争って疑問にする」「物云いを附ける」「けちを附ける」と云う動詞。=bar という語尾は英語の -ible, -able 等に相当し、「……し得べき」を意味する。unbestreitbar はつまり英語の indisputable と同じ構造である。(in- は un- と同じ意、ただ拉丁系統の前綴だというだけの相違)。

Tuesday, May 14, 2024

英語読解のヒント(115)

115. the fact is / the truth is

基本表現と解説
  • The fact is, he couldn't write at all. 「じつは彼はまったく字が書けなかった」

「じつは……である」という意味。the fact of the matter is とか the truth of it is という形になることもある。

例文1

The fact is, I felt irresistibly impressed with a presentiment of some vast good fortune impending.

Edgar Allan Poe, "The Gold-Bug"

じつは今にもたいへんな幸運が訪れるのではないかという気がしてならなかったのです。

例文2

The fact was that Mrs. Errol had thought it better not to tell him why this plan had been made.

Francis Hodgson Burnett, Little Lord Fauntleroy

じつはミセス・エロルはこの計画を立てた理由を彼に話さないほうがいいと思ったのだ。

例文3

....but the truth of it is, that he met with a bad woman.

William Carleton, "Larry M'Farland's Wake"

……でもじつは彼、悪い女に出会ってしまったのよ。

Saturday, May 11, 2024

英語読解のヒント(114)

114. in the eyes of / in one's eyes

基本表現と解説
  • In the eyes of law and reason, it is no excuse. 「法律から見ても道理から考えてもそれは弁解にならない」

「……の考えでは」「……の見るところでは」という意味。in the estimation of / in one's estimation とおなじ。

例文1

In their eyes she is the embodiment of treachery, degradation and perversity — a perfect devil!

Max O'Rell, Between Ourselves

彼らの目からみると、彼女は不実、堕落、邪悪を体現した人間、まったくの悪魔である。

例文2

Remember always that in the eyes of a woman you have to be manly — that is to say, generous, magnanimous.

Max O'Rell, Between Ourselves

男は女の目から見て男らしくならねばならない、つまり寛大鷹揚でなければならないことを記憶せよ。

例文3

We love people who put us in a position to render them good services still more than those who do us good turns, because the former ones raise us in our own estimation, whereas the latter put us under obligations to them.

Max O'Rell, Between Ourselves

われわれは親切にしてくれる人より、親切をさせてくれる人のほうを愛するものだ。というのは親切を施せば自分の目にも自分の評価が上がる。ところが親切にされると負い目を感じることになるからだ。

Wednesday, May 8, 2024

英語読解のヒント(113)

113. every

基本表現と解説
  • I have every respect for your opinion. 「あなたの意見にはこのうえない敬意をもっています」

このような every は very great とか all possible といった意味。

例文1

Every precaution is necessary when dealing with such a fellow.

Arthur Conan Doyle, "The Adventure of the Dancing Men"

こういう奴を相手にするときは、なにからなにまで注意することが必要だ。

例文2

At daybreak the wind freshened still more, and there was every appearance of a storm.

Jules Verne, Round the World in Eighty Days (translated by Henry Frith)

夜明けに風はさらにいっそう強くなり、どう見ても嵐が来そうであった。

例文3

Knowing that every attention would be paid to his son's comfort, Lord Earle thought but little of the matter.

Charlotte Mary Brame, Dora Thorne

息子が快適に過ごせるようあらゆる注意が払われるであろうと思っていたアール卿は、そのことはほとんど気にしなかった。

Sunday, May 5, 2024

英文読解のヒント(112)

112. never so / ever so (2)

基本表現と解説
  • Home is home, though it be never so homely.
  • Home is home, be it ever so homely.

「いかに粗末でも家は家」。譲歩を示す節のなかで使われる場合は never so と ever so は「いかに……であっても」の意味と解される。never so の形のほうが文語的響きを持つ。

例文1

She would trust him as a brother, and his words should be sweet to her were they ever so severe.

Anthony Trollope, The Vicar of Bullhampton

彼女は彼を兄のように信頼していて、彼の言葉はどんなにきびしくても彼女の耳にはやさしく聞きなされるのだった。

例文2

Grammarians differ with regard to the correctness of using never in such sentences as, "He is in error, though never so wise," "Charm he never so wisely." In sentences like these, to say the least, it is better, in common with the great majority of writers, to use ever.

Alfred Ayres, The Verbalist

文法学者はつぎのような文章における never の用法の正しさに関して意見が割れている。「彼はいかに賢くとも誤っている」「彼はたくみに呪文を唱える」。このような文章においては大多数の人がするように ever を用いたほうがよろしいといわざるをえない。

 "Charm he never so wisely" は聖書の詩編の言葉。

例文3

Betide what may, we will not despair, were the world never so unfriendly.

James Anthony Froude, Thomas Carlyle

なにが起きようと、世間がいかに冷たかろうと、われわれは失望しない。

Thursday, May 2, 2024

英語読解のヒント(111)

111. never so / ever so (1)

基本表現と解説
  • He looked never so healthy. 「彼がそのように健康そうに見えたことは今までになかった」
  • He looked ever so healthy. 「彼はじつに健康そうに見えた」

never so も ever so も very とか awfully といった意味になる。

例文1

Ask me never so much dowry and gift, and I will give according as ye shall say unto me: but give me the damsel to wife.

King James Bible

いかにおほいなる聘物おくりもの禮物れいもつもとむるも汝らがわれに言ふごとくあたへん唯このむすめを我にあたへて妻となさしめよ

 New American Standard Bible ではこの部分が ever so を用いて書かれている。

Demand of me ever so much bridal payment and gift, and I will give whatever you tell me; but give me the girl in marriage.

例文2

When you need me again I will come ever so far.

William Makepeace Thackeray, Henry Esmond

もしもまたわたしに用があったら、わたしはどんなに遠くてもあなたのところへ参ります。

例文3

"We won't take a tent," suggested George; "we will have a boat with a cover. It is ever so much simpler, and more comfortable."

Jerome K. Jerome, Three Men in a Boat

「テントは持っていかない」とジョージは言った。「覆いつきのボートにするんだ。そのほうがずっと面倒がなくて快適さ」

Monday, April 29, 2024

ロジャー・トーリー「殺人への四十二日間」

ロジャー・トーリーは1901年に生まれ、1946年に急性アルコール中毒で亡くなったアメリカのパルプ作家である。ハードボイルドをたくさん書いているが、いずれも短編か中編で、長編は本書だけではないだろうか。ハメットやチャンドラーのようなトップレベルの作品ではないが、しかしこの時代のある種の雰囲気を身に纏っていて、わたしはそこが楽しかった。

主人公で語り手の私立探偵ショーン・コネルは、意外にももとピアニストで、昔は仲間とクラブで演奏し金を稼いでいた。この物語のなかでもリノのとあるバーで昔の音楽仲間に出逢い、そこで演奏をはじめるという場面がある。そのあたりの描写は非常に活気に満ちていて、バーの騒然とした情景が映画のように彷彿と目の前に浮かんでくるのである。三十年代後半の風俗を、誇張をまじえてはいるのだろうが、これほど活写できる人はあまり記憶がない。

さて話のほうだが……。ウェンデルという船会社の社長が南アメリカから戻ってくると妻がリノの町へ行き、離婚の手続きを開始していた。どうやら彼女は悪党弁護士にそそのかされて夫に話をすることなくいきなりリノへ出発したらしい。ウェンデルは妻に事情を聞こうとリノへ乗り込むが、悪徳弁護士が警察に手を回し、彼を捕まえさせて強制的にニューヨークへ帰してしまった。そこでウェンデルは私立探偵のショーン・コネルに妻との話し合いの場を設けて欲しいと頼むのである。

悪徳弁護士と警察権力が手を結んだろくでもない離婚騒動だが、コネルがリノに乗り込んで直ぐに、事件がそれだけではないことに気づく。ウェンデルの妻は小間使いを連れてリノへ行ったのだが、その小間使いが殺されていたのである。しかもコネルが調べたところ、その小間使いは過去につまらぬ犯罪を幾つも犯していたようだ。今回の離婚騒動は見た目よりももっと大きな事件とつながっているらしい。それをコネルが探っていくという物語である。

本作は脇役が大勢登場する。コネルの助手役を務めるレスター青年、ウェンデルをコネルに紹介する飲んべえのジョーイ・フリー、リノの保安官、ジーメン(G-man)、コネルがピアノ演奏をするバーの店主等々、彼らが物語にたいへんな活気を与えている。どれも個性豊かで、その会話はユーモアに満ちている。たとえばコネルが部屋を借りたアパートの大家(女)がこんなことをいう。


 「あたしはセブンアップで、そこらへんの女が手にする以上の金をすってしまったよ。でもお金なんかなんの価値があるんだい。食えもしなけりゃ、寒いときに毛布の代わりにもなりゃしない」

 「ものが買えるだろう」とおれは言った。

 彼女はにやりと笑った。「はっ! 食事だって一度に一食食うだけさ。寝ると言ったって一つのベッドに寝るだけさ。金なんてひざまづいて拝むようなものじゃないよ」

 悪徳弁護士のクランドルが同じような考えの持ち主なら、ウェンデルも苦労はしなかっただろうに、とおれは思った。


悪徳弁護士は馬鹿高い手数料をふんだくるためにウェンデル夫人に離婚手続きをさせるのだが、下宿のおばさんはその形而下的議論で弁護士の拝金主義を批判する。これによって脇役にすぎない一登場人物は、一瞬、大役を担う登場人物と同じレベルまで引き上げられる。どの登場人物もこんな具合に一瞬光るものを見せるのだ。こういう書き方がなかなかうまい。

 ハードボイルドとしてはせいぜい良く言っても中の中といったところだが、ほかの部分で面白いものを見せてくれる作家だ。かえすがえすも若くして亡くなったことがおしまれる。

独逸語大講座(20)

Als die Sonne aufging, wachten die drei Schläfer auf. Sofort sahen sie, wie 1 schön die Gestalt war. Jeder von ihnen verliebte sich in 2 d...