Sunday, June 20, 2021

Fadepage.com のベストセラー

Fadepage.com はパブリックドメイン入りした作品の電子化を行っている。カナダの団体なので、死後五十年を経過した作家の作品を対象にしている。やり方は基本的にプロジェクト・グーテンバークとおなじで、proofreader たちが本と OCR で読み取ったテキストを比較し、訂正を加えていく。このたび2015年十二月以来そのサイトからダウンロードされた作品のトップテンが公表された。以下に示す作家がそれで括弧内はダウンロード数を示す。


1.Blyton, Enid (297,503)

2.Lewis, C. S. (Clive Staples) (212,289)

3.Hemingway, Ernest (178,248)

4.Fleming, Ian (132,625)

5.Sayers, Dorothy L. (126,551)

6.Elles, Dora Amy (93,601)

7.Faulkner, William (84,687)

8.Smith, Cecil Louis Troughton (76,495)

9.Montgomery, L. M. (Lucy Maud) (75,493)

10.Huxley, Aldous Leonard (64,832)


一位は「フェイマス・ファイブ」のイーニッド・ブライトン。子供向けの冒険小説を書いた人だ。二位はC.S.ルイス。これはナルニア国物語を書いた人。さらに九位は「赤毛のアン」など少女小説を書いたL.M.モントゴメリ。いずれもなつかしてく愛着のある作家だからもう一度読んでみようとか、子供に読ませたいと思う人も多いと思う。子供たちにとって名作が手軽に読めるというのは非常によいことだ。イーニッド・ブライトンについては以前から人種差別的な表現が問題にされてきた。それは批判されて当然なのだが、子供たちに彼女の作品を読ませないようにする必要はない。読みたいのならいくらでも読ませればいいのである。たくさん読んだほうが批判能力が身につく。

三位は「老人と海」のヘミングウエー。ハードボイルドの文体をつくりあげた人の一人だ。翻訳された作品を読んだだけではわからないが、英語で読めば(いや、十九世紀と二十世紀初頭の英語の特徴もよく知っていれば)彼の文体がそれまでのものと画然と違うことがわかる。多くの模倣者を生んだのもよくわかる。

四位はイアン・フレミング。007は永遠である。ジェイムズ・ボンドの映画はアクションとお色気を強調しているが、小説のほうは端正かつジャーナリスチックな文体で書かれていて、はじめて読んだとき、てっきりパルプ小説だと思っていたわたしは愕然とした覚えがある。。フレミングもヘミングウエーのように文体の改革者だった。

五位はドロシー・セイヤーズ、六位はパトリシア・ウェントワースのことだ。いずれも大物女流推理作家である。といってもわたしはウェントワースは、保守的すぎてあまり好きではない。

七位はフォークナー。アメリカ南部を舞台にした作品で有名な作家だ。ミステリがお好きなら「サンクチュアリ」から読み始めるといいだろう。

八位はC.S.フォレスターのこと。歴史小説、海洋小説、ミステリ、児童書、いずれの分野でも読み応えのある作品を書いている。この人も文章がうまい。

十位はオルダス・ハクスレイ。ディストピア小説「すばらしき新世界」が有名だが、思想的・哲学的な作品が好きならどれも面白く読める。

一位はダウンロード数が三十万近い。Fadepage.com が出す書籍は誤植がわりとすくなく(わたし自身は一度も誤植を見つけたことがない)スムーズに読んでいけるので、是非ダウンロードして読んでみて頂きたい。

ちなみに最近出た作品のなかで面白いのはベティ・バード・マクドナルドの The Plague and I (「病気と私」)。結核に罹った作者がサナトリウムで過ごした日々を描いたユーモアあふれる作品だ。

英語読解のヒント(144)

144. half...half... 基本表現と解説 The tone was half jocose, half sullen. 「その語気はふざけているようでもあり、怒ったようでもあった」 「半分は(幾分かは)……半分は(幾分かは)……」という表現。 例文1...