Monday, July 12, 2021

ザ・アレスビス「誰がコーラリーを殺したのか」(1927)

 以前おなじ作者の「死者の徴」を読んで面白かったので、それより二年前に出された本作を読んでみた。「死者の徴」は筋運びが巧みで、途中まで圧倒的な面白さをを維持しつづけたが、本作はそれほどでもなかった。舞台はサンフランシスコのチャイナタウン。チャイナタウンだからそこにある店は中国系の移民が経営しているのだが、じつは二軒だけアメリカ人の店があった。霧の深いある晩、そのうちの一つで殺人事件が起きる。誰もいないはずの店内で店主の女性が椅子に座ったまま死んでいたのだ。それを発見したたった一人の店員は大声をあげて外に飛び出してくる。現場の近くにたまたま来ていた新聞記者のダービーは、殺人現場の目撃者となり、この事件の解決に乗り出すことになる。

「死者の徴」ほどではないけれど、ダービーがチャイナタウンにたむろするあやしげな乞食や巨漢や医者などに出会い、話を聞きながら、しだいに事件の真相に迫っていく過程はまあまあ面白い。日本の作家で云えば岡嶋二人の作品のような面白さだ。時流に乗った話題を巧みに取り入れ、深さはないけれども、そのぶんテンポよく物語を進めていく。

数年前に「死者の徴」を読んでから作者のザ・アレスビスとは誰なのだろうと思っていたが、Allen J. Hubin による Crime Fiction IV: A Comprehensive Bibliography 1749-2000 によると、これは Helen Rose Bamberger (1888-1940) と Raymond Steven Bamberger (1877-1957) という夫婦のコンビ名であるらしい。彼らはこの名前を使って小説を三作出している。

英語読解のヒント(144)

144. half...half... 基本表現と解説 The tone was half jocose, half sullen. 「その語気はふざけているようでもあり、怒ったようでもあった」 「半分は(幾分かは)……半分は(幾分かは)……」という表現。 例文1...