権田保之助著
有朋堂発行
「基準独文和訳法」より
問題5(p. 45)
Die moderne Zeitung ist eine typische Erscheinung des kapitalistischen Zeitalters. Alle mit ihr verknüpften Erscheinungen haben im Interesse des Unternehmers (Verlegers) den Daseinsgrund, an dem sie haften, mag sich auch noch so viel dagegen sagen lassen.
研究事項
1)die moderne Zeitung の訳は?
2)Erscheinung には「現象」といふ訳の外に、「出版」の訳もある。此処では何れが正しいか?
3)im Interesse einer Person (einer Sache)には、「或人(或事)の為めに」「或人(或事)の利益の為めに」といふ意味があるが、此処の im Interesse はさういふ意味か?
4)an dem sie haften の中にある代名詞はどの名詞を代理してゐて、且つこの副文章は何か?
5)mag sie auch...sagen lassen といふ副文章の説明をせよ。
解釈要項
1)modern といふ語は「近代の」「近世の」の義を表はすので、die moderne Zeitung は「近世新聞紙」が適訳。之を「今日の新聞紙」とか、「現今の新聞紙」とかと訳しても間違ではないにしても、術語的表現としては不十分である。
2)Erscheinung は此所では「現象」の義である。事が新聞紙に関するので、これを「出版」と訳しなどしては誤である。
3)此の im Interesse は „im Interesse einer Person den Daseinsgrund haben“「或人の利害関係の中に存在理由を有する」といふ熟語の中の im Interesse であるから「或人の為めに」の im Interesse ではない。
4)an dem sie haften の dem は Daseinsgrund を指し、sie は alle mit ihr verknüpften Erscheinungen を受けてゐる。然るに dem を Unternehmer にかけたり、sie を Zeitung に取つたりしては誤である。
5)mag sich auch noch so viel dagegen sagen lassen は認容文章で、「尚ほ非常に多くのことが、仮令それに反対して言はれ得るにしても」の意味である。
訳文
近世新聞紙は資本主義時代の一典型的現象である。それと結合せる一切の現象は、仮令尚ほ多くの異論はあり得るにしても、起業家(発行者)の利害関係に、それ等の依つて立つ存在理由が存するのである。
Wednesday, April 1, 2020
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