Saturday, October 30, 2021

ジョン・チャールズ・デント「ジェラード街の不思議な事件」

ジョン・チャールズ・デントは1841年カナダ生まれの作家、ジャーナリスト、歴史家である。まったく読んだことがない人なので、短編小説に目を通してみた。これは幽霊譚である。

ウィリアム・ファーロングという若い男が語り手で、両親のいない彼は叔父に育てられ、従妹のアリスと婚約しているのだが、あるときオーストラリアへ行ってビジネスをしようと思い立つ。この当時、カナダにかぎらずイギリスでも、オーストラリアやアフリカへ行って一儲けするということはよくあることだった。そして数年後、そこそこの成功を収めたあと、本国のカナダへと帰る。港から叔父の家へ戻るまでのあいだに不思議な事件がおきる。

彼はたまたま郵便局に立ち寄り、冗談に局員に自分宛の手紙があるかと尋ねた。すると驚くべきことに、彼の叔父からの手紙がそこにあったのだ。叔父は彼がいつ帰国するか知らなかった。まして彼がその郵便局に立ち寄ることも知らない。ところが、叔父はすべてを予期していたかの如く、彼宛の手紙を出していたのだ。

ファーロングが故郷の駅に到着すると、そこには叔父が彼を待っていた。彼らは話をしながら歩いて家へ帰るのだが、途中でファーロングの友人と出会う。ファーロングはそこで立ち止まり短く会話を交わすのだが、気が付くといつの間にか叔父がいない。あちこちを捜したがどこにも見つからない。それどころではない。あとで友人に話を聞くと、友人は叔父の姿など見なかったと言うではないか。

いったい何が起きているのか。じつに魅力的な謎を提示している。とりわけ不可解なのは、郵便局で手に入れた手紙で、これはそのときファーロングと一緒にいた友人が中身を読んでいて、後になってファーロングが確認したところ、友人もその奇妙な内容をほぼ正確に記憶していたのである。この手紙は、ファーロングが駅で叔父に出会ったときに渡してしまい、叔父の消失とともにこの世から消えてなくなった。しかしそれが「実在」したことは友人の証言によっても確認されるのだ。奇怪な現象がファーロングの幻覚、彼一人の問題であるなら、容易にこの物語には説明がつくが、他者をまきこむとなるとそうもいかない。わたしはこの存在しえないはずの「レター(手紙・文字)」の「存在」が気になってならない。存在しないけれど、世界に対する知識を秘めた letter。いわばレアルのかけらだ。

この問題を徹底的に追求する内容になっていたらうれしかったけれど、物語の後半は、まあ、だいたい読者の予想通りの展開になる。そのつっこみ不足、ひねりのなさがちょっと欠点ではあるけれど、まずまず楽しめる出来だった。

Wednesday, October 27, 2021

フランク・ケイン「やつらの犯罪」

フランク・ケイン「やつらの犯罪」

フランク・ケインはサスペンスやハードボイルドを書いたブルックリン生まれの作家である。本作はジョニー・リッデルという探偵を主人公にしたシリーズものの一作。


ブラジルからアメリカに宝石が密輸入されていた。その犯罪をあばくため、ある男が密輸に使われているとおぼしきクルーズ船に乗客のふりをして乗り込むが、ある嵐の晩、何者かに殺され、海に捨てられた。その直後に捜査の継続を依頼されたジョニー・リッデルがおなじ船に、やはり客のふりをして乗り込む。殺された前任者はなにを突き止め、なにを追っていたのか、そして誰に殺害されたのか、それを明らかにするのが彼の任務だ。クルーズ船だからいろいろな客が乗っている。普通の夫婦もおれば、不倫の恋にふける男女もある。大金持ちのビジネスマンもいれば、名高い悪党も船に乗っていた。一見華やかなカリブ海旅行をしながら、リッデルの捜査が進んでいく。

最初の数章は非常にテンポ良く進み、面白かったが、そのあとは豪華客船の様子やら登場人物の過去の話がたてこみ、とくにアクションもなく、ひたすら与えられる情報を消化したという感じだ。過去の話も、ハリウッド女優の苦労話や、政略結婚の結果、お互いに相手に嫌気がさした夫婦の物語など、あまりにもありがちなもので、ちょっとさえない。もう一つ文句を言うと、ところどころにあらわれるハードボイルドを気取った書き方がややぎこちない。とってつけたような印象を与える。最後は乗客全員を集めてリッデルの推理が示されるのだが、ハードボイルドと本格推理とアーサー・ヘイリーの「ホテル」みたいなドラマが入り混じった変わった一作になっている。

Sunday, October 24, 2021

ゲーム実況者のための英語(13)

ゲーム実況者のための英語(13)

Yakuza 5 から秋山の格闘シーン。実況者は Majima fan girl のクリスタルさん。

This place looks rundown as fuck1.
Hi.
These guys look so friendly, don't they?2
I think they want to cuddle3.
Yeah, he did4.
Okay.
Deep breath, Christal.
You can play the video game.
Why are you backing away from me?
That move is so fun.
Okay.
Wheeee!5
Wait. Hold on.
I want to do that like cool air combo6 thing.
Oh, no!
You stopped me
Fuck!
Get out of here.
There are lots of guys.
Holy shit!
Good thing I have a lot of health items7 because you know we are gonna need a lot of that.

この場所はひどく荒れ果てているわね。
こんにちは。
この人たち、ずいぶん優しそう……じゃない?
ハグしたがっているんじゃないかな。
そう、一杯食わされたのよ。
いいわよ。
(自分に言い聞かせる)深呼吸して、クリスタル。
あなたならビデオゲームくらいできるわ。
どうしてわたしから離れて行くのよ。
今の動きは楽しいわ。
ようし!
ヒューン!
待った、待った。
あのかっこいい空中複合技をやりたいわ。
いやね!
邪魔しないでよ。
もう!
どいて!
なによ!
回復薬がたくさんあってよかった。たくさん必要になりそうだから。

1 as fuck は「ひどく」「とてつもなく」「やたら」のような意味で直前の rundown (荒れ果てた)を修飾している。つまり「ひどく荒れ果てた」ということ。as fuck は AF と略され、「エー・エフ」と発音されることもある。
2 もちろん friendly にはまったく見えない連中があらわれたのだが、英語ではこういうふうに反語が多用される。とんだヘマをした人を smart (賢い)と形容したり、危ない目に遇わされて thank you と返したりして皮肉をあらわすのである。
3 「愛情をこめてハグする」ことを cuddle という。
4 秋山の「あの刑事に一杯食わされたってことか」(That sneaky detective... I bet he knew this would happen.)に対する反応。つまり Yeah, he did know this would happen. (そうよ、あの刑事、こうなることは分かっていたのよ)という意味。
5 速くて飛ぶような動きをあらわす言葉。「ヒューン」とか「ビューン」にあたる。
6 combo は combination の省略形で「複合」の意味。cool air combo thing の thing はうまく言い表す名詞が見付からないときに、臨時的にもちいる代用品。「かっこいい空中複合のやつ(「技」ということ)」
7 health items は「回復薬」のこと。この文の最後の that は health items を指す。複数形の名詞を単数形の指示代名詞で受けているが、口語ではこうした混同はよく見られる。

Thursday, October 21, 2021

関口存男「趣味のドイツ語」

Der Neandertaler

Der nachweisbar1 älteste Urmensch2 heißt nach3 seinem ersten Fundplatz im Neandertal4 bei5 Düsseldorf6 der Neandertaler. Er lebte schon vor vielen Zehntausenden7 von Jahren, als die Erdoberfläche8 zum Teil9 noch mit Eis bedeckt10 war.

逐語訳:Der nachweisbar 実証し得るかぎり älteste 最も古い Urmensch 原人は bei Düsseldorf デュッセルドルフ附近の im Neandertal ネアンデル谷における seinem ersten Fundplatz その最初の発見場所に nach 従って der Neandertaler ネアンデルタール人と heißt 呼ばれている。Er 彼は schon すでに vor vielen Zehntausenden von Jahren 年の数万以前(数万年以前)、die Erdoberfläche 地球の表面が zum Teil 部分的には noch まだ mit Eis 氷をもって bedeckt 掩われて war いた als 当時に lebte 生きていた。

nachweisen と aufweisen との使い分けは?【1】nachweisbar: nachweisen は「証拠として指摘する」(即ち証拠になるものを発見する)という、ちょっと厄介な動詞ですが、それに -bar または -lich がつくと、「証拠として指摘し得る」という形容詞になり、それを ältest 等の最高級の前に置くと、「証拠を指摘し得る限り」の意の副詞になります。同じような構造は、たとえば die denkbar vollkommenste Einrichtung (考え得る限り最も完全なる施設)といったような句にも見受けられます。――次に、論文調の文によく用いられる nachweisen と aufweisen とを、此の機にハッキリと覚えることにしましょう。たとえば、下山事件の現場で、レールの上手の方に、枕木(die Schwelle)の上に血痕(Blutspuren)が発見されました、こういう時は、同じ発見でも、「証拠」となる「指摘」的な発見ですから nachweisen が適当で Man wies Blutspuren auf den Schwellen nach (人は枕木上に血痕を発見指摘した)といいます。此の同じ文を、枕木を主体にしていうと、Die Schwellen wiesen Blutspuren auf (枕木は血痕を示した)と、aufweisen を用います。「示す」という aufweisen は、つまり発見されることです。違った例で云うと、「先生が私の作文を見て沢山の誤を指摘した(発見した)」ならば Der Lehrer wies in meinem Aufsatze eine Menge Fehler nach です。Aufsatz を主語にすると Ihr Aufsatz weist eine Menge Fehler auf (君の作文にはだいぶ誤が見受けられますね)ということになります。殊に科学者諸君には此の二つの動詞は重要です。
【2】Urmensch, m. (原人):Ur- という前綴は「原始的」、「最初の」等を意味します:Urwald (原始森)、Urzeit (原始時代)、Urform (最初の形)、Ursache (原因)、Ureinwohner (原住民)。
【3】nach: nach は「何々に従って」、「何々の通りに」という時に用います。殊に、此の場合のように、heißen、nennen 等、命名する意味の場合、名称の起源をのべる時には nach を用います(英語も after):Die Kometen werden nach ihren Entdeckern genannt (The comets are named after their discoverers)彗星はその発見者の名をとって命名される。
【4】Neandertal: Tal, n. (谷)という語が基礎になっているのでわかる通り、谷、盆地の名です。Tal は昔は Thal と書いたので、此の地名も学問書では多く Neanderthal という綴でのっています。
【5】bei: 地名と共に用いると「……附近」の意。Schlacht bei Mukden (奉天附近の会戦)など。
【6】dorf: Dorf (村)がついていますが、これは村ではなく、西独有数の大都会です。全ドイツの発電所とでもいうべき Ruhr 炭坑地区の中心地で、今後はまるでドイツ全体の経済首都のようなものでしょう。
【7】vor vielen Zehntausenden von Jahren: 数詞の用い方によく注目すること。百(hundert)と千(tausend)は、小文字のままで形容詞的にも用いますが、また大書して名詞(中性)としても用います(複数形は -e 語尾:die Hunderte、die Tausende)、万もこれに準じて das Zehntausend という名詞が用いられます。たとえば、「百人の人間」は、hundert Menschen ですが、「数百人の人間」という時には Hunderte von Menschen、einige Hunderte von Menschen、viele Hunderte von Menschen という方が普通です。Einige hundert Menschen と云ってもいいのですが、この方は往々にして「百人余の人間」という意味に用いることがあるので、「数百人」の意味の際には避けられる傾向があります。
【8】Erdoberfläche = die Oberfläche der Erde (地球の表面)
【9】zum Teil: 「部分的に」、すなわち「所々」、「所によっては」です。teilweise とも云います。
【10】bedecken (掩う):英語を知っている人は、英の bedeck が「飾る」で、独の bedecken は「掩う」――なにとなく似ていてまぎらわしい変な場合であることに気付くでしょう。

 Der Neandertaler wußte11 schon Werkzeuge12 herzustellen13. Er fand, daß ein spitzer14 Steinsplitter15 sich zum Schneiden16 eignete17, und verfertigte18 Fäustel19, Schaber20 und Kratzer21. Einem oberflächlichen22 Beobachter23 mögen24 diese primitiven25 Werkzeuge lächerlich einfach vorkommen26, für einen tiefer27 Denkenden stellen sie ein Problem dar28: wie ging denn nur29 der erste Mensch zu Werke30, um den harten Feuerstein so ganz ohne alle Werkzeuge zu bearbeiten31 und ihm die gewünschte Gestalt32 zu geben? Hierüber33 gibt es eine Menge34 Hypothesen35, aber eine restlos36 überzeugende37 Theorie steht noch dahin38.

逐語訳:Der Neandertaler ネアンデルタール人は schon すでに Werkzeuge 器具類を herzustellen 作ることを wußte 知っていた。Er かれは ein spitzer 尖んがった Stein- 石の splitter かけらが zum Schneiden [物を]切るのに sich eignete 適した(適する) daß ということを fand 発見した、und そして Fäustel 握りづちや、Schaber 削る器具や und Kratzer 引っ掻く器具を verfertigte 調製した。Einem oberflächlichen Beobachter 皮相な観察者には diese primitiven Werkzeuge これらの原始的な器具は lächerlich おかしいほど einfach 単純と vorkommen 思われる mögen かも知れないが、für einem tiefer Denkenden 更に一層深く物を考える者にとっては sie これらの器具は ein Problem 一つの問題を stellen dar 意味するのである。[即ち:] den harten Feuerstein 剛い燧石を so 斯くも ganz 全然 ohne alle Werkzeuge 一切の道具なしに zu bearbeiten 加工処理し und そして ihm その燧石に die gewünschte 望み通りの Gestalt 形を zu geben 与える um ためには、der erste Mensch 世界最初の人間は denn nur そもそも wie どういう具合に ging zu Werke 仕事をしたか? Hierüber 此の点に関しては eine Menge たくさんの Hypothesen 仮説が gibt es 存する、aber しかし、eine restlos 完全に überzeugende 承服せしめるような Theorie 説は noch まだ steht dahin 将来に属する。

wissen と zu + 不定法(大抵の場合ほとんど訳出の必要なし)【11】wußte......zu......: wissen (知る)を、zu を伴う不定形(此処では her-zu-stellen)と共に「云々する術を心得ている」、「云々できる」の意に用いることが非常に多いのに注目。此の場合は、「製作することを知っていた」とか「作る術を心得ていた」とか訳することが出来ますが、此の種の wissen の型は、一般的に云うと、ドイツ人は非常に屡々用い、いやしくも多少の技術または頭を必要とする場合にはすべて wissen zu の形をあてはめる結果、大抵の場合はほとんど können と同意、あるいは訳する立場から云うと全然何等の訳語もあてはめない方がよろしい事が多いのです。たとえば「諒とする」、「認める」、「有難く思う」、「多とする」ことを zu würdigen wissen とか zu schätzen wissen (評価することを知っている)と云いますが、Er wußte meine Mühe zu würdigen (かれは私の労を多とした)というのを「かれは私の労を評価することを知っていた」などと訳した日にはヘンなものでしょう。(ところがそんな翻訳が相当横行しています)――なほモウ一例:Ueberall wußte man von den Greueln der Rebellen zu erzählen 直訳すると「人は至る所叛徒の残虐について物語ることを知っていた」ですが、そんな日本語は、いわゆる翻訳家の頭の中に存在するだけで、日本中どこへ行ったってそんな妙な言葉を使っている所はありません。これはやはり「どこへ行っても叛徒の残虐行為の噂で持ち切りだった」とか何とか云うべきところでしょう。こういう wissen は分解して訳してはいけないのです。念の為め:例えば Goethe の散文などを読む人は、ほとんどマンネリズムのように繰り返される此の種の wissen を発見するでしょう。
【12】Werkzeug, n. (道具):英の tool に相当する語。das Zeug がすでに簡単な器具を意味するので、その合成語です。類例:Spielzeug, n. 玩具、Feuerzeug, n. ライター、Flugzeug, n. 飛行機、Schreibzeug, n. 文房具。
【13】herzustellen: zu を除いた herstellen が「製作する」(同意語:fabrizieren, verfertigen)。
【14】spitz は「とんがった」という形容詞。名詞は die Spitze (尖端)。spitzen (尖らす)という動詞もあります:Bleistift spitzen (鉛筆をとがらす)、Ohren spitzen (耳を聳てる)。
【15】Splitter, m. は「砕片」、すなわち zersplittern (砕け飛ぶ)した細片です。
【16】zum Schneiden: 「切るのに」、「切るために」、これは句でいうと um zu schneiden ですが、それを名詞形にすると zum Schneiden というのです。たとえば、「書くには紙が要る」は Um zu schreiben, braucht man Papier ですが、それは簡単にすると Zum Schreiben braucht man Papier です。また、「君の名は発音しにくいね」は Dein Name ist schwer auszusprechen とも Dein Name ist schwer zum Aussprechen とも云えます。
【17】sich eignen (zu): 「云々するに適する」という動詞。「……に適した」(英:fit)という形容詞は geeignet で、この方が普通で、平易な用語です。
【18】verfertigen: 「製作する」(前出 herstellen と同じ)で、fertig (出来上った)という形容詞から造った動詞。
【19】Fäustel, m. 握り槌(採鉱用ハンマー):博物館などによくある器具ですが、Faust, f. (拳、げんこ)から造られた語です。手で握って用いるからです。先年新聞(朝日、九月二十日)に出たところによると、桐生市の近郊でも石器が発見されたそうで、その中にも此の握り槌のことが見えています。こういう風に名詞または動詞の語幹に -el を附して、関係の「器具」を意味せしめた名詞が、若干あります。Ärmel, m. (袖)は Arm (腕)から作られ、Flügel (翼)は fliegen (飛ぶ)Flug (飛行)から造られ、Schlüssel, m. (鍵)は schließen (締める)、Schluß (閉鎖)と関係しています。此の「具」を意味する男性 -el 語尾は、現在ではもはや廃れて、新造を許さなくなっていますが、語学的見地からはまことに惜しいことです。日本語でも、「碍子}(Isolator)とか振子(Pendel)とか「扇子」(Fächer)とか云って、「子」(シ、コ、ス、と色々によむ)という字で器具を表わしますが、これも近頃は衰えて行くらしいので、私は遺憾に思っています。「ライター」を点子、あるいは「ともしこ」、「スイッチ」を「転子」あるいは……何と云いますかな? 「切りこ」か「向けこ」か何かそんな風な事を云う方が好いと思うのです。現在では -er が流行語尾です:der Bildwerfer (映写機)、der Schalter (スイッチ)、Bohrer (錐)、Empfänger (受信機)、Zeiger (指針)、Federhalter (ペン軸)、Hörer (電話の受話器)、Alkoholbrenner (アルコホルランプ)、Dosenöffner (鑵切り)、Hosenträger (ズボン釣り)など、これは無限。しかし -er 語尾は「行為する人間」にも用いるので、器具専門の語尾ではありません。たとえば der Flieger は、飛行機も意味すれば飛行士も意味します。これは明らかに欠点で、合理的にできている Esperanto には、ちゃんと器具、手段物を意味する -ilo という語尾が特に設けてあるのは非常に好い事だと思います:flug-i、飛ぶ、flugilo, 翼、distil-i、蒸留する、distililo 蒸留器、など。
器具を意味する -el 型の男性名詞:
der Hebel てこ
der Schlüssel 鍵
der Flügel 翼
der Würfel さいころ
der Aermel 袖
【20】Schaber, m.: schaben (けずる)から。-er の語尾については前項参照。
【21】Kratzer, m.: kratzen (搔く)から。原始人にとって一番必要だったのは、斃した獣の皮を剥いで、その肉を搔きおとして衣類を作ることだったのです。
【22】oberflächlich (皮相な、浅薄な):前出の Oberfläche (表面)と関係す。
【23】Beobachter: beobachten (観察する)はアクセントが -ob- の所にあります。アクセントを間ちがえて発音している人が多いようです。
【24】mögen: これは英の may と同じで、「……かも知れぬ」、「なるほど……かも知れぬ」という動詞。
【25】primitiv: 原始的な。-iv という語尾は必ずアクセントを持っています。それから、格語尾がつくと v は w の如く発音します。
【26】vorkommen (思われる) -scheinen。
【27】tiefer: tief の比較級、「一段と深く」、「更に深く」。
etwas darstellen. 何々「である」【28】darstellen: 此の語は、「表現する」、「描出する」の意味にも用いますが、此処はそれとは別途の、特殊な用法で、「……である」という意味にすぎません。すなわち、「これらの器具は一つの問題である」ということを Diese Werkzeuge sind ein Problem と云う代りに、色々な言い廻わしが用いられるのです。一番簡単なのは、bedeuten (意味する)を用いる言い廻わしで:Diese Werkzeuge bedeuten ein Problem. 次によく出てくる言い廻しは:Bei diesen Werkzeugen handelt es sich um ein Problem. それから次が repräsentieren、vorstellen、darstellen 等、とにかく「表わす」という意の動詞を用いる、即ち本文のような言い方です。たとえば「米人の意見によると、日本のインフレは一つの全然特殊な場合なのだそうな」ならば Die japanische Inflation soll nach Ansicht der Amerikaner einen ganz besonderen Fall vorstellen. ――本文について云えば、darstellen の代りに darbieten (提供する)を使うこともできます。
【29】denn nur: 「いったい」、「そもそも」(eigentlich または überhaupt に同じ)。
【30】zu Werke gehen: verfahren と同じで、斯う斯う云う「やり方をする」という熟語。
【31】bearbeiten: 加工する。加工処理する。
【32】Gestalt, f. = Form, f.
【33】Hierüber: darüber と殆んど同じ。dar- よりももっと鋭く或る論点を指すときには hier- を用います。
【34】eine Menge = eine Anzahl (数多の、たくさんの)。
【35】Hypothesen: die Hypothese は「仮説」、「仮定」、「*説」、「想像」、これはギリシャ語系の語で、純独逸語では Annahme と云います。希臘語で -sis という女性語尾のつく抽象名詞は、英語では、-sis のままの形を用い、独逸語では、独逸式の -se に変えます。-sis のまま用いることも無いではありませんが、それは何かよほど特殊な、むつかしい語に限ります。英:crisis (独:Krise、危機)、英:oasis (独:Oase、沙漠の緑地)、英:synthesis (独:Synthese、総合)、英:antithesis (独:Antithese 対照)。
【36】restlos: 残り隈なく、完全に。
【37】überzeugend: 人を承服せしめ、首肯せしめることを jemanden überzeugen (英:convince someone)というので、「納得の行くような」ということを überzeugen というのです。名詞に Ueberzeugung (確信、英:conviction)というのがあります。
【38】steht noch dahin: 直訳するとすれば「未だ猶お彼方に向って立っている」ですが、これは熟語で、「未だし」あるいは「将来に属する」、「未だ実現するに至らない」の意。

意訳:現在知れている世界最古の人類は、その最初の発掘地点がデュッセルドルフ市近郊ネアンデルタールであったところから、「ネアンデルタール人」と呼ばれている。生棲時は今を去る既に数万年の昔、地表がまだ所々氷に蔽われていた時代である。
 ネアンデルタール人は既に器具を作ることができた。即ち、先の尖がった石の砕片が物を切るに適することを知って、握り槌や、物を削るための石器や、物を掻き取るための石のへらなどを拵えたのである。これらの原始的な石器は、ちょっと見たところ、馬鹿馬鹿しく簡単な印象を与えるが、少し詳しく考えて行くと、そこにはいろいろと解けない謎が秘められていることがわかってくる。というのは、いったいどういう風にして此の堅牢な燧石を、全然何の道具も用いずに加工し、所望の形にしたかという点である。此の点に関しては、諸種の憶説はあるが、完全に承服せしめる底の説はなお今後の発表に待つの外はない。

Monday, October 18, 2021

COLLECTION OF ENGLISH IDIOMS

早稲田大學敎授 深澤裕次郎著

應用英文解釋法

東京英文週報社發行


(p. 180-182)


範例

(a) I took a map with me in case it might be useful.

(b) I took a map with me in case I should lose my way.

(a) 私は必要が有るかも知れぬと思つて地圖を持つて行つた。

(b) 私は道に迷はぬやうに地圖を持つて行つた。


解説

 In case は或る場合に備ふる意なり、次の解のいづれかに従ふ可し。

 (a) Suppsing that

  と思つて。

  場合を慮つって。

 (b) Fearing that

   For fear that

   Lest...should

   That...(may) not

  といけないから。

  と困るから。

  を恐れて。

  せぬやうに。


用例

1.  Take care in case you take cold.

  風を引くといけないから氣を付けよ。

2.  They took a whole carriage yesterday, and made a bed for her on the seat, in case she felt tired.

  W. Collins

  彼等は昨日馬車全體を使用した。而て疲れないやうに彼女の爲に坐席の上に寝床を造つてやつた。

3.  For a moment I thought of following him, in case there might be anything interesting in the parcel.

  A. Morrison

  其包の中には何か面白いものが有るかも知れぬと思つて、暫くは尾行して見ようかと思つた。

4.  So he began to look all about, and to listen, in case any one should be coming to fall upon him unawares.

  R. N. Bain

  それで彼は誰か不意に襲ひに来るかも知れぬとあたりを見廻し、耳を澄まして居た。

5.  George impressed upon us to take a change of under things and plenty of socks, in case we got upset and wanted a change.

  J. K. Jerome

  ジョージは吾々が轉覆して着換が要るといけないからと云ふので、下着の着換と澤山の靴下を持て行かうとすゝめた。

6.  You are upset and agitated, and had better not know more than necessary for a little while, in case you say or do something unguarded.

  A. Morrison

  君はひどくびつくりして居るやうだから、暫くは必要以上は知らぬ方がよい、うつかり何か云ふといけないから。

7.  I tried to keep a map in my mind in case it might be necessary for us to escape by this route, but needless to say, I failed utterly.

  R. Haggard

  私はこの道を通つて逃げる事が必要となるかも知れないから、心の中に地圖を覺えて居らうとしたが、云ふまでもなく全然失敗に終つた。

needless to say 「云ふまでもなく」 strange to say などと同じ形なり。

8.  His wife was then questioned; while, at the same moment, two Indians stood threatening the two children, with tomahawks, in case she did not confess.

  次に妻女が調べられた。同時に二人の印度人は彼が白状しなかつた時には斯うして呉れうと斧を以て二人の子供を脅かし乍ら立て居た。

9.  They parted there; Mrs. Michelson previously informing Miss Halcombe of her address, in case they might wish to communicate at a future period.

  彼等は其處で別れた。ミセス・ミチエルソンは自分が将来文通をしたいかも知れぬと云ふので、前以てミス・ハルカムに自分の住所を知らせておいて、其處で別れた。

10. "He looks as if he was a-going, miss," bawled Brittles, in the same manner as before. "Wouldn't you like to come and look at him, miss, in case he should?"

  C. Dickens

  ブリツトルスは前と同様に叫んだ「どうも助かりさうもない。來て見てやつて下さらんか、死ぬるといけないから」。

  a-going going と同じにて dying の意。 he should の次に go (=die) を補ひ見よ。

Friday, October 15, 2021

物語と対象a

スラヴォイ・ジジェクはこう言う。

「地球の最後とか、隕石と地球の衝突を描いたカタストロフィー・ムービーは、きまってエディプス的な物語、あるいは愛する二人の誕生の物語となっている」

たとえば「ハルマゲドン」。誰もがあれはサイエンス・フィクションであると思って観ているが、ジジェクはサイド・ストーリーに着目する。すなわち主人公ハリーの娘の恋愛である。ハリーの娘は彼の部下であるフロストと交際しているのだが、それを知ったハリーはフロストに銃を向けるのだ。このエピソードは映画全体の中における小さなディテールを構成するにすぎないように見える。ところがジジェクは、地球に向かって飛んでくる小惑星は、その父親の怒りが具象化したものにすぎないと考える。つまり小さなディテールこそこの映画の主眼であって、宇宙的規模のドラマはそれの、いわば比喩的表現になるのである。父親ハリーは最後に核爆弾を爆発させて小惑星の軌道を変え、みずからの命を絶つわけだが、そのとき彼は娘と恋人のフロストの未来を祝福している。つまり和解をするわけだ。「ハルマゲドン」は父親の怒りから和解へ至る物語だ、というのがジジェクの読み方である。

「ディープ・インパクト」も同様に、父親に対する娘の怒りがカタストロフィックな情況に具象化されており、それが和解という形で終わる。

ジジェクの読解の面白さは、脇筋と本筋の重要性を反転させるところにある。彼はとある講演(https://www.youtube.com/watch?v=24FUDelJ4Y0)の中でこう言っている。(1:01:40あたり)

Something that appears just an accidental side story is really what the movie libidinally is about.

本筋の物語は、脇筋で展開する人間同士の心理を形象化したものにすぎない、ということだ。

わたしはジジェクの読解には強烈な衝撃を受けた。(彼の読解のわかりやすい部分を紹介したが、くわしくは彼の出世作「崇高なるイデオロギーの対象」を読んでほしい。直接読解の方法を説いているわけではないが、その手掛かりは全編にばらまかれている)わたしは「イデオロギーの崇高なる対象」を読んだ直後にスチュアート・ゴードン監督の「ドールズ」という映画を観て、ジジェク的な読解が可能であることに気づいた。(ちょっとだけ自慢すると、それはジジェクの議論よりも精密で、反転がいかに可能になるのか、その構造をあきらかにもしている)それ以来わたしはこの読解法、そしてテキストの構造についてずっと考え続けている。

Tuesday, October 12, 2021

ジョン・ラッセル・ファーン「ブルータス・ロイド捜査に乗り出す」(1940)

ブルータス・ロイドはラテン語を意のままにあやつり、自然科学を知り尽くした天才である。本書で彼はその知識を生かし、異常な事件を次々と解決していく。

第一話は、爆発事故で視力を失った技師が、なぜか異次元世界を垣間見る力を得、その異次元世界と人間の世界とのあいだで、ある陰謀が企まれていることに気づくという物語。この陰謀を粉砕するため、ブルータス・ロイドが活躍する。

第二話は双子が持つテレパシー能力と、科学者の連続殺人事件を組み合わせたもの。第一話ほどの面白さはないが、チビのくせに傲岸不遜なブルータス・ロイドのキャラクターやSF的アイデアの楽しさで読ませる一編。

第三話はとある田舎町に恐竜が出現するという話。これに降霊術や催眠術などが加わり、パルプらしい滅茶苦茶な展開になる。最後はブルータス・ロイドが恐竜騒動の真の目的をあばいて、決着がつく。

この作品集のよさは、とにかくどの物語にも熱気があることだ。もちろんリアリズムなんか無視しているし、科学的な説明もでたらめきわまりない。しかしそんなことは気にならないくらい、物語が灼熱している。語りたいという人間の根本的な本能がうなりをあげている。わたしはパルプのこういうところがいちばん好きである。

Saturday, October 9, 2021

ジョン・ユリ・ロイド「エティドルパ」

19世紀の世紀末にあらわれた魅力的な小説の一つに「エティドルパ」がある。これは神秘学とSFを混ぜ合わせたような作品、あるいは日本で言う「伝奇小説」的な味わいを持つ、一風変わった作品である。この手の本が好きな人なら読書に没頭してしまうだろう。國枝史郎のような白熱した想像力が物語を支えているのだ。

神秘学に興味を持つルウェリン・ドルーリーという男が、自分が属する秘密組織(フリーメーソンのような組織を考えればいい)の貴重な情報を外部に漏らす。秘密組織はその罰としてルウェリンをとある場所へ送り込む。その場所とは、人類にはいまだ公にされていない地下世界だった。そしてルウェリンは、地上世界とは全く異なる原理に支配される地下世界の驚異を目の当たりにする。


といってもこの物語の大半は、「地上世界の科学や哲学的常識が、いかに特殊な原理のもとに成立しているか」という点を強調する議論で占められている。が、長々と続くこの議論に辟易するかといえば、さにあらず。その口調の熱気に思わず魅了されてしまうのだ。ここがこの作品の一番の美点と言っていいだろう。もちろんこの議論にはおかしなところが多多あるし、常識をひっくり返そうとしていながら、結局凡庸な理念(たとえば愛)に帰着するという欠点を持っているが、それでも当時の考え方の度台を揺るがそうとする試みは興味深い。


標題の Etidorhpa はアフロディテの綴りをさかさまにしたものである。この Etidorhpa という美しい女(女神)は地下世界の中心を愛の原理によって支配しているようなのだ。(「ようなのだ」と曖昧な言い方にせざるをえないのは、物語が地下世界の中心となるべき場所へ着く手前で打ち切られているからである。地下世界の核心部分、地上世界を超越した領域は、言語による表現を絶しているのだろうか。この終わり方はかえって想像力を刺激するものとなっている)イギリス文学に通じている人ならすぐサミュエル・バトラーの「エレホン」(1872)を思い出すだろう。あれも nowhere の綴りをさかさまにしたタイトルで、ユートピアを描こうとしたからである。そしてバトラーもヴィクトリア朝の既成観念を転覆させようとした。十九世紀世紀末における欧米の精神風土を探る上で貴重な作品だと思う。

Wednesday, October 6, 2021

ヘルミニア・ツア・ミューレン「労働者の子供たちのための童話集」(1925)

タイトルに惹かれて読んでみた。作者はドイツ人で、ドイツ語で書かれた作品なのだが、それをアイダ・デイルズという人が英語に翻訳したものである。原作は残念ながら手に入らなかった。

非常に短いお話が四編収められている。最初の作品は「バラの茂み」。お金持ちの家に咲くバラの茂みが、人の世の不公平に気づく。美しいバラの花を見て、貧しい家の子供たちが歓声をあげると、優しいバラの茂みは風にむかって「わたしの花を一つとってあの子供たちに渡して」と頼むのだが、バラの所有者である金持ちは、「うちのバラを勝手に取るな」と子供たちを追い払う。バラの茂みは怒り、それから庭師が水をやっても根でそれを吸収することをやめてしまうのだ。ついに枯れてしまったバラの茂みは労働者の家に引き取られ、そこで再び水を吸い、美しい花を咲かせる。

 


二番目に収められているのが「雀」。雀はツバメなどの特権階級に属する鳥の巣を作る労働者の息子である。彼は己の置かれた環境に嫌気がさし、一年中冬がない常夏の国へ向かおうとする。もちろん雀はそんなに距離が飛べないから、人間を真似て列車や船を使ってエジプトへ渡るのだ。彼はその道中、人間の貧富の状況をつぶさに見ることになる。さらにエジプトについてからスフィンクスに今も昔も人間の一部が奴隷のように使われている事実を知らされる。そこに北から渡って来たツバメがやってくる。聞くと故郷では冬がいつもより早く来たと言う。雀は故郷の人々を常夏の国へ誘導しようと帰郷を決意する。しかしながら彼は途中で大嵐にあい、命を失ってしまうのだ。では苦しむ仲間を救えなかった雀は無駄に命をなくしたのか。じつは雀の話を聞いてそれを胸にとどめた一人の少年は、大きくなって労働者のために立ち上がる指導者となったのだった。しかし、その話はここでは語られるべきではない、というように終わっている。

 第三話は捨てられた犬と奴隷少年の友情を描いている。アメリカ南部の奴隷少年が、捨てられそうになっていた犬をもらい受ける。その後少年の母、そして父が相次いで売られ、少年はひとりぼっちになる。さらに彼の主人である白人はまだ小さい彼にも重労働をさせるようになる。そのとき、犬が人語を発して少年に「逃げろ」と言うのだ。少年が「おまえはしゃべるのか?」と叫ぶと犬はこう言う。「金持ちが獣のように貧しい者を取り扱うとき、われわれ動物は貧しい者を助けなければならない。人間がひどく不幸になり、見捨てられてしまったとき、人間はわれわれの言葉を理解し、われわれがその人の幸せを願っていることを知るのだ」というわけで少年と犬は逃避行を開始する。そして犬は命を賭して少年を助けるのである。

第四話は貧民院のポール少年の話。貧民院は年寄りが入るところなのに、ポールは身寄りがないせいだろう、まだ少年なのに貧民院に入れられていた。彼はわからないことがあると、いつも「なぜ」とまわりに問いかけ、うとまれていた。

彼はなぜ自分がいつもお腹が減っていて、食べ物を与えられないのか、それを疑問に思っていた。貧民院の院長も、農家の家畜たちも、その問いには答えてくれない。

問いの答を求めてさまよううちに、彼は木の精霊から、世の中に格差があることを知らされる。格差があることを貧しい人々は知らない。豊かな人々は格差があることを隠そうとする。この不公平な世の中がいつなくなるかは人間次第だ。お話の最後に木の聖霊は言う。「おまえの疑問を忘れるな。それを貧しい人々の前で語れ。おまえにはきっと仲間が出来るだろう。そしていつか世の中は変わるかも知れない」

いずれの話も面白く読めた。プロレタリア文学など古いと言う人があるかもしれないが、社会的現実は、「どのようなものであれ」、亀裂を含んでいる。全き社会、完全な調和的世界は存在しない。プロレタリア文学はその亀裂を特殊な角度から描こうとしたものであり、今の時代と比較しながら読んでも、ある種の真実をそこに認めることができる。プロレタリア文学者は私がいう「亀裂」を階級闘争と称した。階級闘争はある。常にある。かりに階級闘争という言葉がピンと来ない人がいるとすれば、その人はなぜピンと来ないのか、なにが階級闘争という事実をぼやけさせているのか、それをポール少年のように自らに問うべきである。

Saturday, October 2, 2021

英語実況者のための英語(12)

Alice: Madness Returns というゲームは古いけれどもグラフィックスが秀逸で今でも楽しめる。その中から、アリスが巨大化し、トランプの兵士たちを蹴散らす場面をひろってみた。実況者は日本語のできるガブさん。   

Holy shit!1
That is so fucking2 cool!
Holy shit!
Oh, it's go time3.
Fuck you!
Nice! You don't stand a chance!4
Hell you!5
She's coming for you!6
Bam!7
Fuck you!
Fuck you and your chess!

おお、すごい!
これはいいわね!
すごい。
あら、戦闘開始ね。
ざまあみろ。
ナイス! わたしに勝てるわけないでしょう!
えい、くそ野郎!
アリスが向かっていくわよ。
バシーン!
糞くらえ。
あんたもチェスも糞くらえ!

1. 驚きを示す。Oh, damn! などとも言う。
2. ここでは very と同じ意味。
3. go time は「さあ、やるぞ(闘うぞ)」という意気込みを示す句。It's time to fight. といってもいい。
4. not stand a chance は「見込みがない」というイディオム。この場合は「(勝てる)見込みはない」ということ。You stand no chance of winning. でも同じ。
5. Fuck you! と同じ。
6. be coming for you と聞けば、「エルム街の悪夢」のファンならこの数え歌を思い出すだろう。
  one, two...Freddy's coming for you...
  tree, four...Better lock your door...
  five, six...Grab your crucifix...
  seven, eight...Can you stay awake?...
  nine, ten...Never sleep again...
(1,2,フレディが来るぞ、3,4,ドアにカギをかけなさい、5,6,十字架を握りしめなさい、7,8,あなたは起きていられる? 9,10、二度と寝ちゃだめ)
7. 何かを強くたたくときの擬音語。コミックなどでは BAAAAAM!! などと書かれたりする。

英語読解のヒント(111)

111. never so / ever so (1) 基本表現と解説 He looked never so healthy. 「彼がそのように健康そうに見えたことは今までになかった」 He looked ever so healthy. 「彼はじつに健康そうに見...