Monday, May 29, 2023

チャールズ・ペリー「溺れゆく若い男の肖像」

近々この本をアマゾンから出そうと思って、今その最終チェックにいそしんでいる。忘れられた作家、マイナーな傑作を出版するというのがわたしの方針だが、本作はまさにそれにふさわしい作品だと思う。新しい本を出すときはどういう後書きを書こうかといつも迷うのだが、今回はあっさり短くすませることにした。しかし書こうと思えばいくらでも書ける。それくらい内容の豊かな作品なのだ。書こうかなと思っていた内容を簡単にここに示しておく。

1 芸術家小説からギャング小説へ

タイトルを見ただけでこの作品がジョイスの「若き日の芸術家の肖像」に影響を受けていることはわかる。ただし、ジョイスの傑作は芸術家を主人公に描いているが、ペリーは貧しい家庭に生まれ、ギャングとしてのしあがろうとする若者を主人公にしている。このギャップはすごい。

2 文体

この小説は主人公ハロルド・オドゥム(通称ハリー)の幼少期からギャングになり、ついには暗殺されるまでを描いている。ジョイスの「芸術家の肖像」とおなじように、幼少期の文章は構造が単純で、大きくなるにつれ、それが複雑化する。しかしハロルドはギャングとしては教養のあるほうだが、一般人よりは学がないので、「芸術家の肖像」ほど文章構造に揺れが生じてはいない。大きくなっても単文が多用されている。もちろん彼の認識は成長するにつれ深みを増し、クライマックスに達したときは抽象性の高い文章になったりする。

3 反覆のイメージ

この作品にはいくつか鍵となるイメージが登場する。まず強壮剤のラベルの絵。このラベルには、まさしくその強壮剤を持つ女の子の絵が描かれている。その女の子が持つ強壮剤にもラベルがついていて、そこにも強壮剤を持つ、おなじ女の子の絵が描かれている。さらにその女の子が持つ強壮剤のラベルにも……という具合に永遠におなじものが反覆されていくのだ。これを見てハロルドはくらくらし、恐怖を感じる。

このイメージはパターンの反覆と、そのパターンから逃げ出せないことを示しているように思われる。ではパターンとはなにか。たとえばハロルドの父親と母親は、別居したり同居したりを繰り返している。このような人間関係のパターン。またギャングの世界においては殺し屋が殺され、殺し屋を殺した殺し屋が、またべつの殺し屋に殺される、という連鎖を続けている。このような人間のあり方のパターン。さらにハロルドの母親は小さい時からつちかわれてきた彼女のある種の性癖(所有癖とでもいうのだろうか)からのがれることができないでいる。このような性格的なパターン。そしてハロルドは所有癖の強い母との近親相姦的な関係から抜け出せないでいる。つまり親子関係のパターン。こうしたいくつものパターンがこの物語では反覆され、そこからハロルドは逃れることができない。逃れることができないから最後に悲劇に陥るのである。

4 神話との重ね合わせ

ハロルドの悲劇。彼は貧乏を抜け出し、ギャングの世界でのし上がっていこうとするが、まさにその野望ゆえに悲劇を迎える。このパターンはイカロス神話にその遠い源がある。

塔に幽閉されたダイダロスとイカロスの親子は、羽根を作って塔を脱出しようとする。しかし子供のイカロスは太陽に近づきすぎ、羽が溶けて海に落下する(溺れ死ぬ)。このような青春の悲劇が幾度も幾度も繰り返されてきた。ジョイスの「芸術家の肖像」はその挫折のパターンが、人類の歴史において何度も繰り返されてきたことを、神話との重ね合わせによって表現しているのだが、ペリーもその普遍的な挫折のパターンを逃れられない若者の姿を描いたのである。

5 分裂のイメージ

最初の頁で主人公ハロルドは、「ぼくはぼくだ」と自己の同一性を主張する。しかし彼の成長を見ていると、その自己同一性の主張は嘘であることがわかる。彼はマドゥンという alter ego を持っている。つまり彼は分裂しているのだ。

ハロルドの相棒であるエイビーは自分の手について「おれはときどき手が怖くなる。なんだかこいつらには脳みそがそなわっているみたいだ。おれを憎んでいるじゃないかと思うときもある。こいつらがおれの思い通りに動くのは、おれの意志のほうが強いからみたいだな。しかしこいつらは、おれが望まないことをやっておれを裏切る機会を狙っているんだ」と言う。彼も自己の分裂に直面している。そしてハロルドもエイビーもこの分裂が彼らの破滅の原因となる。

こう書くと分裂がいけないかのような印象を与えるかもしれないが、わたしは人間も社会ももともと分裂を抱えているものだと考えている。その分裂は社会(人間)を壊すものでもあり、かつまた社会(人間)に統合を目指させる原動力でもある。

6 子宮のイメージ

電灯のない真っ暗なハロルドの寝室は子宮であり、母親の寝室からのびる電気コードはへその緒である。これはこの作品のなかでもっとも強烈な、衝撃的なイメージである。自己の内部に他者を抱えている状態。自己と他者(分裂した自分)が平和に共存している状態を暗示する。ハロルドの母親は息子に対して他者となること、分裂することを許そうとしない。つまりこの子宮のイメージは平和的な共存をあらわすと同時に、同一者の専制的な支配をあらわしもする。

Friday, May 26, 2023

レスター・デント「離陸の時には死体となって」

 

この物語は一つの物語が三方向から描かれる。まず第一の方向。チャンス・モロイはニューヨークでは名を知られたビジネスマンだが、この物語ではなぜかウォルター・ランドと偽名を使っている。しかも部下二人を使ってジャネット・ロードという二十五歳の美しい女を偵察させ、彼女をつけてニューヨーク発アルバカーキ行きAEA 第十四便に乗り込む。モロイは彼女の父ロード議員に恨みがあるらしく、その復讐に娘に対してなにかをやらかそうとしているらしい。いったいそれはどんな復讐なのか。

第二の方向は殺し屋どもの視点から展開される。まずニューヨークのとあるホテルの一室に男の死体が転がっている。そして殺し屋がその一室でなにか作業をしている。殺された男はジャネット・ロードと一緒に第十四便に乗るはずだった彼女のいとこだ。なぜ彼が殺されたのかはすぐには読者にはわからないように書かれている。その部屋にさらに二人目の殺し屋が到着し、さらに三人目の殺し屋が電話をかけてくる。AEA 第十四便にジャネット・ロードとチャンス・モロイが乗ろうとしているという内容だ。いったい殺し屋たちはチャンス・モロイやジャネット・ロードとどう関わっているのか。

そして第三の方向は、第十四便の美しいキャビン・アテンダントと操縦士たち三人の物語だ。キャビン・アテンダントは結婚しているのだが夫とは別居状態で、その美しさ故に操縦士二人を虜にし、どっちと一緒になろうかと、いわば彼らを天秤にかけている状態。彼女はチャンス・モロイと過去に関係があったりもする。そして彼女はこの十四便の勤務において過去の恋人と、別居中の夫に相まみえることになる。

第一と第二の方向は、いろいろと謎を含み、しかも刺激的な描写がつづく。第三の方向は、この物語の人間関係の複雑さを示し、サスペンスだけでなく人間ドラマとしても楽しめそうだという期待を抱かせる。三方向から紹介された登場人物たちは、第十四便に集合し、そのなかで謎はすこしずつ解き明かされ、かつそれまで積み上げられてきた緊張がついに爆発する。

レスター・デントは「ブロンズの男」シリーズで知られているが、わたしはあまり好きではない。文章やプロットが雑で、登場人物もあまりにステレオタイプすぎるからだ。しかし本作に限っては語り方に工夫が凝らされていて、物語に厚みがあり、楽しく読むことが出来た。謎めいた物語が徐々にその背景をあきらかにするという書き方もいい。汽車の中、あるいは飛行機の中でサスペンスにあふれた事件が展開するという物語が好きな人なら夢中になって読めるだろう。

Saturday, May 20, 2023

フィリップ・ギブズ「汝の敵」


フィリップ・ギブズは第一次・第二次世界大戦のあいだ従軍記者としてすぐれた記事を書いたジャーナリストである。その業績で大英帝国二等勲爵士を得ている。彼の著作は膨大で、大量の記事のほかにも小説を書き、そのうち九作が映画化されている。二十世紀前半、もっともよく読まれたジャーナリストの一人といっていい。日本では翻訳が出ているのかちょっとわからないが、ほとんど知られていないのは間違いない。しかし彼の戦争ルポタージュは欧米では今でも評価されていて、電子化もさかんにされている。わたしも前から気になっていた作家なのだが、最近 fadepage.com から彼の小説「汝の敵」(Thine Enemy)が出たので、読むことにした。

物語は現在ロシア領となっているカリーニングラード、1945年まではケーニヒスベルクと呼ばれていたドイツの都市からはじまる。第二次大戦末期で、ドイツの敗色は濃く、人々はロシア軍の侵攻、その凶暴な兵隊たちの噂に怯えて暮らしていた。暮らしていると言っても空爆を受けて家は崩壊し、地下壕で暮らしているのである。食べものはなく、ナチス政権は人々に町を離れるのを禁じ、夫を兵隊に取られた若い妻のなかには、絶望の余り、子供と心中をする者もいるくらいだ。

(ちなみに言っておくと、この作品は作者がドイツに取材に出かけ、実際に見聞きしたり、直接当事者達から聞いた話しを元に書かれている。)

そしてとうとうロシアがケーニヒスベルクに来ると云う情報が人々のあいだに伝わってきた日、この都市の若い女達は子供と老人とともに逃避行を開始する。雪が降るなか、老人、女、子供が馬に牽かせた荷車に乗り、あるいは徒歩で、延々列をなしプロイセンに向けて移動して行くのである。

非常にドラマチックな始まりで、一気に物語に引きずり込まれた。しかしここで場面は一転し、ケーニヒスベルクから数キロ離れた地点でロシア軍と戦いながら退却を繰り返すドイツ軍が描かれる。こちらのエピソードはフランツ・レーバーという軍曹の視線から語られる。彼はもともとは芸術家で、愛国者でありつつもヒトラーの残酷さには批判的な人間だ。彼のまわりでは爆弾が落ち、飛び散った破片にあたった兵隊、レーバーの戦友たちがハエのように目の前で死んでいく。

レーバーたちが後退をつづけていると、ケーニヒスベルクからの避難民の列にぶつかり、一緒にプロイセンへ向かうのだが、その間にもロシアの爆撃機の攻撃を受け、多くの人が死んでいく。

息つく暇もなく戦争の惨状が描かれ、読んでいる方は胸が潰れる思いをする。ナチスの残虐を知らない人々、なぜイギリスやアメリカが自分達に冷たいのか理解できない人々、その反対にナチスの蛮行を憎む人々、家を破壊され、食べものはなく、自殺したり殺されていく人々、寒さに死んでいく幼児、死を覚悟して全員が毒薬をポケットにしのばせている家族、愛する人の名を口にしながら死んでいく兵士、ヒトラーの暗殺計画を練った人々、それゆえに拷問され殺された人々、産まれた時から戦争を見、戦争しか知らない子供達、ベルリンも含めて都市という都市がすべて灰燼に帰したドイツ、地下室で四人五人と固まって生活する人々、食糧難と闇市、栄養不足で死んでいく人々、食べる為にアメリカやイギリスの兵隊に身を売る女達、イギリスに支配された地域とロシアに支配された地域の違い、敗戦国ドイツがこれからどう国を建て直すのかという政治的議論等々、戦争の現実をたたきつけるように次々と描いている。

一つのまとまったドラマ的展開があるわけではない。おもにフランツ・レーバーの視点から彼が体験することを時系列に沿って記述しているだけである。また小説の技術的・芸術的な側面に於いてそれほど秀でたものがあるわけではない。が、さまざまな階層の人々の、さまざまな戦争に対する反応がリアルに描かれ、とほうもなく面白い。こういうのを無技巧の技巧というのだろうか。戦争小説はかなり読んでいるつもりだが、敗戦時における一般人の行動や心情が克明に記された本書はそのなかでも非常に印象に残る一冊だ。


Wednesday, May 17, 2023

独逸語大講座(8)

第五課

複数に四種の語尾ある事
Lehrer, m. 先生bekommen 得る
lehren 教えるschreiben 書く
Straße, f. 街道arm (形)[poor]
Gast, m. 客ihn (er の四格)[him]
Fürst, m. 国君、侯爵 [prince]oft [often]
Leute, pl. 人々 [people]schön (形)[beautiful]
Eltern, pl. 両親ganz [quite]
Fabrik, f. 工場nach と三格 ……の方へ、……の後に
Geld, n. 銭、貨幣
Wort, n. 言葉(Wörter, pl. =単語。Worte, pl. =文句、詞)

1. Väter und Mütter loben den Fleiß ihrer Kinder. 2. Die Lehrer werden diese Leute nicht immer loben. 3. Keine Wanderer wandern auf dieser Straße. 4. Die Häuser dieser Stadt sind nicht sehr schön. 5. Unsere Kinder ehren uns Eltern. 6. In der Stadt hier sind Bäume, Gärten, Straßen und Fabriken. 7. Die Könige fürchten den Mut ihrer Feinde. 8. Diese Kinder wollen keine Bücher haben. 9. Ich werde diese Briefe bald zu Ihrem Lehrer schicken. 10. Die Straßen dieser Städte sind sehr schön.

【訳】1. 父母達は(Väter und Mütter)彼等の子供達の(ihrer Kinder)勤勉を(den Fleiß)褒める(loben)2. 先生達は(die Lehrer, der Lehrer の複数)此の人達を(diese Leute)必ずしも(nicht immer)褒め(loben)〔ない〕であろう(werden)3. いかなる徒歩旅行者も(keine Wanderer)此の街道を(auf dieser Straße)旅し(wandern)〔ない〕4. 此の市の(dieser Stadt)家々は(die Häuser)大して(sehr)美しくは(schön)ありません(sind nicht)5. 我々の子供達は(unsere Kinder)我々両親を(uns Eltern)註1尊敬する(ehren)6. ここの(hier)市の中には(in der Stadt)幾多の樹(Bäume)註2幾つかの庭園(Gärten)幾本かの街道(Straßen)そして(und)幾つかの工場が(Fabriken)ある(sind)7. 王達は(die Könige)彼等の敵の(ihrer Feinde)勇気を(den Mut)恐れる(fürchten)8. 此の子供等は(diese Kinder)いかなる本をも(keine Bücher)持つことを(haben)欲し(wollen)〔ない〕 9. 私は(ich)之等の手紙を(diese Briefe)程なく(bald)貴君の先生の所へ(zu Ihrem Lehrer)送る(schicken)でしょう(werde)10. 之等の市の(dieser Städte)街道は(die Straßen)大層(sehr)美しく(schön)ある(sind)

11. Die Leute besuchen die Fabriken dieser Männer. 12. Diese Mägde sind immer sehr gesund. 13. Eure Brüder werden uns überall suchen, aber nicht finden. 14. Die Menschen loben immer nur ihre Freunde. 15. Die Gäste bekommen nach dem Besuch ihre Hüte und Stöcke. 16. Die Kaiserinnen sind die Frauen der Kaiser. 17. Diese Männer verteidigen unser Vaterland. 18. Die Mütter lieben und loben ihre Kinder. 19. Diese Weiber haben keine Kinder. 20. Die Soldaten loben die Pferde ihrer Generäle.

【訳】11. 人々は(die Leute)註3此の男達の(dieser Männer)工場を(die Fabriken)訪問する(besuchen)12. 此の女中等は(diese Mägde)常に(immer)非常に(sehr)丈夫で(gesund)ある(sind)13. 汝等の兄弟等は(eure Brüder)我々を(uns)到る所に(überall)探す(suchen)併し(aber)見出さ(finden)ない(nicht)だろう(werden)14. 人間は(Die Menschen)常に(immer)自分の味方のみ(nur ihre Freunde)褒める(loben)15. 客達は(die Gäste)訪問の後で(nach dem Besuch)彼等の帽子(ihre Hüte)と(und)杖とを(Stöcke)受け取る(bekommen)16. 皇妃は(die Kaiserinnen)皇帝の(der Kaiser, 男性、複数、二格)妻で(die Frauen)ある(sind)17. 此の男等は(diese Männer)我々の祖国を(unser Vaterland)守る(verteidigen)18. 母等は(die Mütter)彼等の子供等を(ihre Kinder)愛し(lieben)且(und)褒める(loben)19. 此の女達は(diese Weiber)子供を一人も(keine Kinder)持た(haben)〔ない〕20. 兵士達は(die Soldaten)彼等の将軍等の(ihrer Generäle)馬を(die Pferde)褒める(loben)

21. Die Stöcke dieser Gäste liegen dort im Garten. 22. Die Frauen der Könige heißen Königinnen. 23. Was er uns sagt, ist sehr schön, aber er tut nichts für uns. 24. Er schreibt einen Brief und schickt ihn zur Fabrik. 25. Die Arbeiter werden die Arbeit ihrer Kameraden loben. 26. Die Gäste der Fürsten sind Könige und Königinnen 27. Unsere Lehrer lehren uns Deutsch und Japanisch. 28. Meine Eltern sind ganz arm, und haben oft kein Geld. 29. Die Ärzte werden heute Abend meine Schwestern besuchen. 30. Was für Vögel sitzen auf dem Dache Ihres Hauses ?

【訳】21. 此の客達の(dieser Gäste)杖は(die Stöcke)彼所に(dort)庭園に(im Garten)横わっている(liegen)22. 王の(der Könige)妻は(die Frauen)王妃と(Königinnen)呼ばれる(heißen)23. 彼が(er)我々に(uns)云う(sagt)事は(was)大層(sehr)結構で(schön)ある(ist)併し(aber)彼は(er)我々の為めに(für uns)何も為さない(tut nichts)24. 彼は(er)手紙を(einen Brief)書き(schreibt)そして(und)それを(手紙を)(ihn)註4工場へ(zur Fabrik)送る(schickt)25. 労働者等は(die Arbeiter)彼等の同輩の(ihrer Kameraden)仕事を(die Arbeit)褒める(loben)だろう(werden)26. 侯爵等の(der Fürsten)客達は(die Gäste)王(Könige)及び(und)王妃達で(Königinnen)である(sind)27. 我々の先生達は(unsere Lehrer)我々に(uns)註5独逸語(Deutsch)及び(und)日本語を(Japanisch)教える(lehren)28. 私の両親は(meine Eltern)全く(ganz)貧しく(arm)ある(sind)そして(und)屡(oft)一文の金をも持たない(haben kein Geld)29. 医者達は(die Ärzte)今晩(heute Abend)私の姉妹等を(meine Schwestern)訪問する(besuchen)であろう(werden)30. どんな種類の鳥が(was für Vögel)貴君の家の(Ihres Hauses)屋根の上に(auf dem Dache)とまっているか(sitzen)

31. Die Soldaten gehen durch die Straßen dieser Stadt. 32. Arbeiter und Arbeiterinnen reifen nach ihrer Heimat. 33. Die Mädchen bekommen in diesem Jahre kein Geld. 34. Die Hände dieser Hausmädchen ruhen immer. 35. Die Länder dieses Fürsten gehören jetzt dem Kaiser. 36. Die Knaben schreiben Briefe zu ihrem Lehrer. 37. Warum wollen Deine Brüder nicht nach ihrer Heimat reisen? 38. Die Bäume dieser Gärten sind sehr schön. 39. Die Weiber dieser Arbeiter bekommen noch keine Kinder. 40. Was für Fabriken sind in diesem Lande?

【訳】31. 兵士等は(die Soldaten)此の市の(dieser Stadt)街道を通って(durch die Straßen)行く(gehen)32. 労働者(Arbeiter)及び(und)女労働者達が(Arbeiterinnen)彼等の故郷の方へ(nach ihrer Heimat)旅行する(reisen)33. 娘達は(die Mädchen)今年(in diesem Jahre)一文も得ない(bekommen kein Geld)34. 此の家婢等の(dieser Hausmädchen)手は(die Hände)常に(immer)休む(ruhen)35. 此の侯爵の(dieses Fürsten)国々は(die Länder)今(jetzt)皇帝に(dem Kaiser)属する(gehören)36. 少年等は(die Knaben)彼等の先生に(zu ihrem Lehrer)手紙を(Briefe)書く(schreiben)37. 何故に(warum)君の兄弟等は(Deine Brüder)彼等の故郷の方へ(nach ihrer Heimat)旅行することを(reisen)欲し(wollen)ないか(nicht)38. 之等の庭園の(dieser Gärten)樹は(die Bäume)大層(sehr)美しく(schön)ある(sind)39. 此の労働者等の(dieser Arbeiter)妻達は(die Weiber)未だ(noch)子供を(keine Kinder)儲け(bekommen)〔ない〕40. 如何なる種類の工場が(was für Fabriken)此の国の中に(in diesem Lande)あるか(sind)

41. Die Arbeiter werden heute Morgen sicher ruhig arbeiten. 42. Diese Königinnen haben keine Eltern mehr. 43. Seine Freundinnen wollen uns verteidigen. 44. Die Arbeiterinnen arbeiten in ihrer Fabrik. 45. Unsere Eltern werden uns Wörterbücher schenken. 46. Seine Worte sind sehr schön, aber was er tut, ist nicht schön. 47. Die Mädchen wollen den Fleiß jener Studenten gar nicht loben. 48. Diese Diener bekommen ihr Trinkgeld nicht sehr oft. 49. Ich werde diese Wörter in mein Buch schreiben. 50. Die Zimmer dieses Hauses sind sehr schön.

【訳】41. 労働者達は(die Arbeiter)今朝(heute Morgen)屹度(sicher)しずかに(ruhig)働く(arbeiten)でしょう(werden)42. 此の王妃達は(diese Königinnen)最早両親を持たない(haben keine Eltern mehr)43. 彼の女友達等は(keine Freundinnen)我々を(uns)守らんと(verteidigen)欲する(wollen)44. 女労働者達は(die Arbeiterinnen)彼等の工場に於いて(in ihrer Fabrik)働く(arbeiten)45. 我々の両親は(unsere Eltern)我々に(uns)字引を(Wörterbücher)贈る(schenken)でしょう(werden)46. 彼の詞は(seine Worte)大層(sehr)結構で(schön)ある(sind)併し(aber)彼が(er)行う(tut)所の事は(was)宜しくない(ist nicht schön)47. 娘等は(die Mädchen)あの学生達の(jener Studenten)勤勉を(den Fleiß)全然(gar)褒めようと(loben)思わ(wollen)ない(nicht)48. 此の下僕等は(diese Diener)彼等の心附けを(ihr Trinkgeld)大して屡は(sehr oft)もらわない(bekommen nicht)49. 私は(ich)之等の単語を(diese Wörter)私の本の中へ(in mein Buch)書く(schreiben)であろう(werde)50. 此の家の(dieses Hauses)部屋々々は(die Zimmer)大層(sehr)美しく(schön)ある(sind)

【註】〔1〕uns Eltern は「我々両親を」で、uns も Eltern も四格、之れを同格名詞と云う。
〔2〕Bäume、Gärten 等、此の単数形は、ein Baum、ein Garten である。言い換えれば、不定冠詞の附いている名詞は、複数に於て冠詞がなくなるのである。〔文法第六講57参照〕
〔3〕複数形のみが用いらるる名詞。
〔4〕ihn は、er の四格なる事は、既に、単語表にて、判っています。此の ihn 即ち、er は、Brief の代名詞です。それは Brief が男性名詞であるからです。この事に就いては、いずれ文法の方で詳しく説明があります。
〔5〕uns は「我々に」と訳すが、実は四格。Deutsch、Japanisch も四格。即ち、lehren は、二つの四格の補足語をとる。

Sunday, May 14, 2023

英語読解のヒント(59)

59. breathe again / freely

基本表現と解説
  • Marius breathed again, for ... she was saved. 「彼女が助かったのでマリウスはほっとした」

Victor Hugo, Les Misérables (translated by Lascelles Wraxall)

  • His attentive face brightened and relaxed; he seemed to breathe more freely. 「集中していた顔が明るくなり、やわらいだ。彼は前よりも安心したようだった」

Wilkie Collins, The Woman in White

breathe again や breathe freely には「ほっと(一息つく)」「安堵して」「胸を撫で下ろして」というニュアンスが含まれる。

例文1

The second and the third day passed, and still my tormentor came not. Once again I breathed as a freeman.

Edgar Allan Poe, "The Black Cat"

二日目が過ぎ、三日目が過ぎたが、それでもわたしを苦しめるものは来なかった。わたしはふたたび自由な人間として息ができるようになった。

例文2

"We are safe now, messieurs!" exclaimed Pierre at last; and we all, in one sense, began to breathe more freely, although the feeling of suffocation from the smoke was trying in the extreme.

William Henry Giles Kingston, Adventures in the Far West

「旦那方、もう大丈夫です」とピエールはついに叫んだ。われわれはみな、煙のために息が詰まるような気がしてじつに耐えられなかったけれども、ある意味では安らかに息ができるようになった。

例文3

“’Twas moonlight, and, as I reached the end of the wood, just about outside of this house, I breathed again with relief. But too soon — for when I got to the Druids’ Oak (you know it, for sure — that big old oak, the last of the wood), I saw a hobgoblin.”

VERA C. BARCLAY, Danny Again

「月明かりの晩で、森を抜けてこの家のすぐそばまで来たときはほっと安心したよ。しかし安心するのは早かった。あのドルイドの樫の木、あんたもきっと知っているだろう、森のいちばん端にある大きな古木の樫の木だ、あそこまで行ったとき、おれは小鬼を見たんだ」

Thursday, May 11, 2023

英語読解のヒント(58)

58. bow someone in

基本表現と解説
  • He bowed me in (out / upstairs / downstairs, etc) with great civility. 「彼は非常に鄭重に頭を下げて、わたしを内へ通し(送り出し / 二階へ通し / 階下へ見送っ)た」

みずから礼をして内に入ったり、外に出る場合は再帰代名詞とともに次のように言う。

  • He bowed himself out of the room. 「彼は頭を下げて部屋を出た」

例文1

I saw the station-master bow them into the carriage, and stand, bareheaded, beside the door.

Charles Dickens, "An Engineer's Story"

駅長が頭を下げて彼らを馬車に乗せ、帽子を脱いだままドアの側に立っているのが見えた。

例文2

I took from their sconces two flambeaux, and giving one to Fortunato, bowed him through several suites of rooms to the archway that led into the vaults.

Edgar Allan Poe, "The Cask of Amontillado"

わたしは壁の燭台から二本の松明を取って一本をフォルトゥナトに渡し、礼をしながらいくつもの続きの間を案内し、納骨堂へ行く門のところまで来た

例文3

It certainly did not seem probable that Mr. Watson would maliciously knock over his own chimney, and Lawyer Hackett, who had the case in hand, bowed himself out of the Admiral's cabin convinced that the right man had not been discovered.

Thomas Bailey Aldrich, The Story of a Bad Boy

言うまでもなくワトソン氏が悪意をもって自分の煙突を打ち壊すとは思えない。それでこの事件を引き受けていたハケット氏は、犯人がまだ発見されていないと確信して、頭を下げて提督の小屋を出た

   convinced 以下は分詞構文。being convinced that... と解する。

Tuesday, May 9, 2023

英語読解のヒント(57)

57. in duty / honour / courtesy bound to...

基本表現と解説
  • I am in duty bound to stand by him. 「義務上、彼を助けねばならない」
  • I am in honour bound to stand by him. 「名誉上、彼を助けねばならない」
  • I am in courtesy bound to stand by him. 「礼儀上、彼を助けねばならない」

to be bound to... は「……しなければならない」「……する義務がある」の意味。次のような表現もある。

  • It is my bounded duty to stand by him. 「是非とも彼を助けねばならない」

例文1

He had bent down, as he considered himself in courtesy bound, to kiss her face when he bade her adieu; but it was no lover's kiss that fell so lightly on her lips.

Charlotte Mary Brame, Wife in Name Only

彼は女に別れを告げるとき、礼儀上そうしなければならないと思ったので腰をかがめて顔にキスをしたが、しかし彼女の唇に軽く触れただけのキスはけっして恋人のそれではなかった。

例文2

At last I sat down, and bethinking myself of my faithless widow (I wound up every day regularly by dreaming, as in duty bound, of this lady), I pulled out one of her letters.

Ivan Turgenev, Acia (translated by Constance Garnett)

とうとうわたしは腰を下ろした。不実な未亡人のことを思い出し(わたしは毎日かかさず、義務であるかのようにこの女性の夢を見た)彼女の手紙を一通取り出した。

例文3

We are in honor bound to put into practice what we preach; to remember that we are not to be excused if we do not....

Theodore Roosevelt, "Latitude and Longitude among Reformers"

われわれは名誉にかけて自分たちが唱道することを実行しなければならない。そして実行しないのなら弁解の余地がないということを憶えておかなければならない……。

Saturday, May 6, 2023

英語読解のヒント(56)

56. between us / among us

基本表現と解説

「二人で」「共同して」の意味になることもある。

例文1

 "Can you muster eighty pounds between you?" he demanded.
 Geraldine ostentatiously consulted his pocket-book, and replied in the affirmative.

R. L. Stevenson, New Arabian Nights

 「あなた方おふたりで八十ポンドこしらえることができますか」と彼は聞いた。
 ジェラルディンはこれみよがしに札入れを調べ、できると答えた。

例文2

Then I made a noise! I shouted until I was hoarse, and ruined our preserving-kettle with the poker. That brought our dogs out in full bark, and between us we made night hideous.

Frederic S. Cozzens, The Sparrowgrass Papers

それからわたしは音を立てた。声がかれるまで叫び、火かき棒で保存食用のなべをぼこぼこにした。すると犬たちが一生懸命に吠えながら出て来て、わたしと犬とで夜中に大騒ぎをやらかした。

例文3

These three little girls did not count four-and-twenty years between them, and already represented human society — on one side envy, on the other, disdain.

Victor Hugo, Les Misérables (translated by Lascelles Wraxall)

三人の少女は、全員の歳を合わせても二十四にはならなかったが、早くも人間社会を代表していた。つまり一方においては嫉妬、他方においては軽侮をあらわしていた。

英語読解のヒント(111)

111. never so / ever so (1) 基本表現と解説 He looked never so healthy. 「彼がそのように健康そうに見えたことは今までになかった」 He looked ever so healthy. 「彼はじつに健康そうに見...