Sunday, June 14, 2026

関口存男「新ドイツ語大講座 下」(21)

§21. 「それらすべて」

(1) das alles(2) alles das
(3) alle das(4) all das

 殊に注目していただきたいのは all-e das と all das です。たとえば「これらすべてについて、彼は全然なんにも知らなかった」は Von alle dem (あるいは一語で alledem)wußte er rein gar nichts あるいは all dem, あるいは allem dem あるいは dem allem あるいは語尾を弱語尾にして dem allen ともいいます。

 次に物主形容詞がくると (2), (3), (4) の形式になります:「すべての私の財産」は alles mein Gut, alle mein Gut, all mein Gut, (1) の形式は不可:Mein alles Gut. --dieser, jener なども同じです:All diese Menschen 等々。

§21. rein gar nichts: rein (全然)

Thursday, June 11, 2026

英語読解のヒント(223)

223. many a

基本表現と解説
  • They met with many a thrilling adventure. 「幾度も戦慄すべき冒険に出会った」
  • Many and many a time in my childhood I loitered among the woods. 「幼少の頃、自分は幾度も幾度もその林の中を歩き回った」

many a は many の意。many and many a という形は意味はおなじだが、語勢が強い。

例文1

The time had been when many a friend would have crowded round him in his affliction, and many a heartfelt condolence would have met him in his grief. Where were they now?

Charles Dickens, Sketches by Boz

彼が不幸に会えば多くの友がまわりに集まって来たときもあった。彼が悲しみに会えば多くの人が心から慰めてくれたときもあった。あの人々はいまどこに行ったのだろう。

例文2

She told us many an innocent tale of her life there — of her childish days, and of her dear old governess, whose name, I remember, was Cardigan.

Dinah Mulock Craik, John Halifax, Gentleman

彼女はそこでどんな生活を送ったか、いろいろ無邪気な話をした。子供のころの話とか、たしかカーディガンという名前のなつかしい家庭教師の話とかである。

例文3

So I left Rivermouth, little dreaming that I was not to see the old place again for many and many a year.

Thomas Bailey Aldrich, The Story of a Bad Boy

こうしてぼくはリヴァーマウスを去ったが、それから幾十年ものあいだふたたびそこを見ることがないとは夢にも思わなかった。

Monday, June 8, 2026

英語読解のヒント(222)

222. for the love of

基本表現と解説
  • For the love of Heaven, spare him! 「後生ですから助けてあげてください」

for the love of は in the name of 「……に代わり」とか for the sake of 「……のために」とか by 「……にかけて」の意味となる。例文の Heaven のほかにもいろいろな文句が用いられるが、たいていは全体として「なにとぞ」、「ぜひ」、「後生ですから」などと訳す。

例文1

"By the mother who bore you — for the love of Heaven — by your hope of salvation, I implore to put back for the box!"

Edgar Allan Poe, "The Oblong Box"

「どうぞ……是非……拝むから……箱を取りに船をかえしてください」

 by the mother who bore you も for the love of Heaven も by your hope of salvation もすべて「なにとぞ」の意。

例文2

"Almost, captain, — don't give up: for the love of our dear little ones at home, don't give up, captain," replied Larkin.

Charles W. Sanders, Sanders' Union Fourth Reader

「もう少しです、船長……あきらめないでください。お願いですから、あきらめないでください、船長」とラーキンは答えた。

 直訳するなら「家にいるいとしい子供たちへの愛のため」だが、「お願いですから」と訳して問題はない。

例文3

"For God's sake, Sire! For the love of your mother spare him!" she cried, falling upon her knees at the Emperor's feet.

Arthur Conan Doyle, Uncle Bernac

「どうか、陛下、後生でございます、彼をお助けください」と彼は皇帝の足許に跪いて叫んだ。

Friday, June 5, 2026

英語読解のヒント(221)

221. little or nothing

基本表現と解説
  • During those years little or nothing was heard from him. 「その間何年も彼からはほとんど消息がなかった」

little or nothng は hardly anything の意味。

例文1

The preliminary inquiries before the magistrates elicited little or nothing that was new against the accused.

J. E. Muddock, Stories Weird and Wonderful

予審においても被告に不利となるような新事実はほとんど引き出せなかった。

例文2

"Eighty pounds a year!" My reader can imagine that this was no great fortune. I had little or nothing to spend in kid gloves or cigars....

Charlotte M. Braeme, Coralie

年収八十ポンド! それがまことにわずかな財産であることは読者にもご想像いただけるだろう。わたしには革の手袋や葉巻を買う余裕などほとんどなかった……。

例文3

...it might strike the reflective mind with some surprise that hitherto little or nothing of a fundamental character, whether in the way of Philosophy or History, has been written on the subject of Clothes.

Thomas Carlyle, Sartor Resartus

思索的な人々にはいささか驚きかもしれないが、これまで哲学の分野においても歴史の分野においても衣装を真っ向から扱った本質的な書物は書かれていないのである。

Tuesday, June 2, 2026

英語読解のヒント(220)

220. little or no

基本表現と解説
  • There was little or no difficulty in it. 「困難はほとんどなかった」

little or no は hardly any の意味。

例文1

There is very little or no Christian feeling for women in the breasts of women..

Max O'Rell, Between Ourselves

婦人の胸のなかには婦人に対するキリスト教的感情がほとんどない。

例文2

The country then consisted of a number of small kingdoms, which had little or no connection with one another.

Samuel Griswold Goodrich, Peter Parley's Common School History

この国は当時、あまたの小王国から成っていたが、これらはほとんど互いに関係がなかった。

例文3

To an unwilling person, or one who will not learn, instruction is of little or no use.

Alexander Hislop, The Proverbs of Scotland

やる気がない人、習う気がない人に教えてもほとんど意味がない。

Friday, May 29, 2026

AIの翻訳力

AI が人間には見つけられないようなブラウザーの欠陥を見つけたとか、プログラミング能力がすごいとか、ずいぶんもてはやされているけれど、言語能力に関してはどうだろう。わたしはたいしたことはないと思っている。最近たまたまつぎのような文をAIに解釈させた。

John Bull, good patriot as he is, prefers a British article to any other.

「ジョン・ブル」は英国人のことである。good patriot as he is は二重に解釈しうる。つまり「よき愛国者だが」とも読めるし、「よき愛国者なので」とも読める。いずれで解釈すべきかは文全体から判断しなければならない。述部の prefers a British article to any other は「英国の製品をほかの(他国の)製品より好む」となる。この述部から判断すれば、good patriot as he is は「よき愛国者なので(国産品を好む)」となることがわかるだろう。ところがAIはこの一節を though he is a good patriot と解釈したのである!

もしかするとAIはこの手の曖昧さを伴う文章が読めないのではないかと思い、こんな文章も解釈させてみた。(やりとりは英語で行われた。日本語はいっさい使っていない)

Surrounded as I was on all sides, I could make no resistance.

Surrounded as I was on all side は「周囲をぐるりと包囲されていたので」とも読めるし「周囲をぐるりと包囲されていたが」とも読める。いずれの意味になるかは残りの部分を読んでからでないと決定できない。I could make no resistance は「抵抗できなかった」。当然前半部分の意味は「包囲されていたので」となる。ところがAIは前半の分詞構文をまたもや although I was surrounded on all sides と解釈したのである。名前はあげないがわたしはこれを二つのAIでためしてみた。するとどちらもおなじ間違いを犯したのだ。AIの英語の能力は他の言語の能力より高いはずなのだが、こんな基本的なミスを犯すのか、とわたしはあっけにとられた。

AIの翻訳の実力はまだ低い。しかしこの調査というか実験をしているあいだに、ふと思いついたことがある。まず一定の長さの英文を一つのAIに翻訳させる。つぎにその原文と翻訳を見せて、間違いがあれば直せ、と指示する。これを繰り返すと間違いは訂正されるだろうか。訳文は洗練されるだろうか。いつかやってみたいと思う。


お知らせ

ルイ・レヴィ作「タマネギ人間クズラドック」をキンドルから出版しました。奇妙なタイトルですが興味深いパルプ小説で、ヴァルター・ベンヤミンやゲルショム・ショーレムが注目した作品です。ご購読いただけると幸いです。


Tuesday, May 26, 2026

オクタヴァス・ロイ・コーエン「ブロードウェイの東」


コーエンの書くものはどれも生気にあふれていて楽しい。彼は黒人を主人公にした作品で有名になったが、たしかにステレオタイプな人物設定ではあるものの、はじけるような明るさを持っている。ミステリも書いていて、なかなかの出来だ。読んで損はしない。

本書は三人の芸人の話である。エディという司会者、その友人で綽名こそタイニィ(Tiny)だが雲突くような大男のサクソフォン奏者、そしてリンダという南部の田舎出身の歌手。三人とも個性豊かな人間ですぐに読者は彼らに好感を持つだろう。エディは気さくで、貧乏だがいつも明るい。ただ女性の気持ちがさっぱりわかっていないという欠点がある。タイニィは図体がでかい割に、控え目な男なのだが、エディよりは人情に通じている。リンダは背が低いが愛らしく、その歌声はブロードウェイでちょっとしたセンセーションを巻き起こす。彼女はまだ若く、親は彼女がブロードウェイに行くのを反対するのだが、エディは彼女と「結婚」し、夫婦者として彼女をニューヨークに連れて行く。もっともこの「結婚」はあくまでビジネスのためのもので、エディはリンダとキスすらしない。一方リンダはエディに静かな愛の炎を燃やしている……。

物語の興味の焦点は二つある。一つは金の話だ。これはちょっとややこしい話なので、簡略化して説明する。エディは現在あまり売れない司会者なのだが、じつは幼少のとき彼の叔父がエディ名義で買った株があり、それがいまやとてつもない額になっていたのである。ところがエディはそのことを知らずにいた。そしてこの事実を偶然知ったノースという悪党が、エディに近づきその金をだまし取ろうとするのである。

もう一つの焦点は、エディとリンダの関係だ。すでに紹介したようにエディはリンダとの関係をあくまでビジネスとして割り切っている。しかしリンダは心密かにエディに愛情を持っている。この二人がどうなるのか。ブロードウェイのショービジネスを背景に金と愛の物語が展開されるというわけだ。

作者はおそらくブロードウェイの実態に相当通じているのだろう。ビジネス上のやりとりなどはなかなか真に迫っている。しかしショービジネスに愛と金の主題を結合させるというのは、あまりにも通俗的すぎるし、エンディングも「この手の物語ならこういう終わり方をするだろうな」という予想の範疇を超えるものではなかった。型にはまった作品である点は残念だったものの、コーエンらしい明るさはやはり気持ちがいい。米国的なユーモア、あるいはオプティミズムをよく体現した作者だと思う。

関口存男「新ドイツ語大講座 下」(21)

§21. 「それらすべて」 (1) das alles (2) alles das (3) alle das (4) all das  殊に注目していただきたいのは all-e das と all das です。たとえば「これらすべてについて、彼は全然なんにも...