Sunday, April 5, 2026

英語読解のヒント(213)

213. least

基本表現と解説
  • Of all the teachers, he is the least popular. 「教師のなかで彼はもっとも評判がよくない」

言うまでもなく least は little の最上級で「もっとも……でない」の意味。

例文1

If she is pretty, well made, and possesses the least bit of a voice, she is tempted to look to the stage for support. But what chance of success has she?

Max O'Rell, Between Ourselves

もしも娘さんがかわいらしくて、スタイルもよく、ほんのちょっとでも通る声が出せれば、生活のために舞台に出てみようかという誘惑にかられるものだが、しかし成功できる見込みなどどれほどあるだろうか。

例文2

The man the least pardonable is the one who declines to correct his faults, unless it be he who prides himself on them.

Robert Christy, Proverbs, Maxims and Phrases of All Ages

もっとも許しがたい人間、それは間違いを誇るような人間をのぞけば、間違いを正そうとしない人間である。

例文3

The man of business is entirely subject to system and rule. The happiest home is that where the descipline is the most perfect, and yet where it is the least felt.

Samuel Smiles, Thrift

実業家は秩序と規則の完全な奴隷である。もっとも幸せな家庭とは規律がもっとも完璧でありながら、その規律がもっとも感じられない家庭である。

Thursday, April 2, 2026

英語読解のヒント(212)

212. see the last of / hear the last of

基本表現と解説
  • That was the last I saw of him for some time. 「それきりしばらくは会わなかった」
  • That was the last I heard of him for some time. 「それきしばらくは便りがなかった」

いずれも慣用表現で see the last of は see no more の意、hear the last of は hear no more の意。

例文1

"I shall be very glad to see the last of him."

Arthur Conan Doyle, Uncle Bernac

「あんなやつには二度と会いたくないね」

例文2

"I fancy it was because he believed me to be more than mortal, and was anxious to see the last of Bombyane."

Henry Rider Haggard, Allan's Wife

「思うに彼はわたしを人間を越えた存在と信じていたんだろうね。そしてボンビエーヌを殺してしまいたいと思っていたんだ」

例文3

She went with her father to California, and the last I heard of him was that he was managing a dry good store in San Francisco, and doing well.

James Edward Preston Muddock, "The Skeleton in the Cupboard"

彼女は父親と一緒にカリフォルニアへ行って、最近聞いたところによると、彼はサンフランシスコで織物商を営み、繁盛しているということだった。

Sunday, March 29, 2026

マージェリー・アリンガム「ブラック・ダドレイ事件」

 


マージェリー・アリンガムはどうも苦手だ。ミステリ作家と分類されているもののそこにはファンタジーやSFの要素が組み込まれている。しかしそれはいいのだ。問題は物語にさっぱりのめりこめないという点である。わたしがミステリを読むとき、事件が起きるまではゆっくりと読む。しかし人が死ぬと急に読書のペースが上がって、一気に最後まで読んだりする。ところがアリンガムの場合は事件が起きてもなんだか興が乗らない。ミステリにミステリ以外の要素が含まれた作品は好きなはずなのに、アリンガムの場合だけはいつも最後までのろのろと読む。キャンピオンという探偵も結構面白い男なのだ。本作では食事の席をギャングたちに襲われたとき、とんでもないいたずらをやって笑わせてくれた。他の登場人物は……まあ、普通である。よくもないが、悪くもない。なのに物語に引き込まれない。いったいなぜなのだろう。

退屈なミステリ作家というとドロシー・セイヤーズがよく挙げられるが、あれはかえって面白い。彼女は事件からセンセーショナリズムを徹底的に排除しようとしているところが興味深いのだ。しかしアリンガムは読者を楽しませようと趣向を凝らしている。でもわたしにはなんとなく詰まらない。

そんなことを考えながら本作を読んでいったのだが、おそらく理由の一つはこれだろうというものに思い当たった。つまり、装いは凝らされているが、ミステリの核となる謎自体に興味がわかないのである。

本作はキャンピオン探偵がはじめて登場する記念すべき作品である。内容はこうだ。ワイアット・ペトリという男がブラック・ダドレイというお屋敷に客を呼び週末にパーティーを開く。ところがみんなでパーラーゲームをやっている最中にペトリの叔父が殺害される。さらにその後、お屋敷はギャングどもに乗っ取られ、客はある品物をギャングに提出しないかぎり、ずっとお屋敷に監禁されるということになる。

あまりできのよくないミステリにおいては、事件が起きたあと、読者が味気ない捜査に長々とつきあわされるということがありうるが、本作ではギャングの登場、お屋敷の秘密の部屋、ちょっとしたロマンスという具合に、読者を楽しませる仕掛けがいくつも用意してある。だが、作品の中心となるペトリの叔父の殺人にはなんらの魅惑も感じないし、作者にとってもそこは重要なポイントではないような感じなのだ。事件をきっかけに日常の裏面が見えてくるとか、現実の様相が一変するとか、そういうことにはアリンガムは興味がないようなのである。舞台の上はなかなか賑やかで、表面的には楽しい芝居が展開するが、深みがあるかと言われると……どうなのだろう、わたしにはないように思われる。それともわたしはなにかを見落としているのだろうか。

Thursday, March 26, 2026

マリ・ドルトン「跪く女の謎」


マリ・ドルトン(Moray Dalton)は1881年にロンドンに生まれ、スコットランドヤードのヒュー・コリアー警部を主人公にしたミステリを三十冊近く書いた。近年 Dean Street Press が彼女の作品を電子化して出しており、わたしもはじめて彼女の本を手にした。1936年に出た「跪く女の謎」はコリアー警部が小さな村で起きる四つの殺人を捜査する物語で、一応ミステリの形を取っている。しかし推理が主眼というよりも、この事件をきっかけにして戦争に対する二つの態度、好戦的なそれと反戦的なそれが庶民のあいだにどのように広がっていたかということを描いた作品といっていいのではないだろうか。

物語は田舎の牧師クレア師が友人のキリックを尋ねる場面からはじまる。二人はともに六十になろうとする年頃でチェスという共通の趣味がある。しかしクレア師は温厚でキリックは人間嫌いのシニカルな男である。彼は化粧品の製造に携わっていた化学者で、仕事をやめて田舎に引き込んでからは毒ガスの研究をしていた。そしてふとクレア師にその毒ガスの製造法をある国のスパイに売るつもりであることを打ち明けるのだ。牧師は呆然とするが、製造法をスパイに渡すはずの日にキリックは自宅で殺害される。

キリックが殺された頃、もう一つの殺人事件が村で起きていた。トビーという少年がたまたま森の中を歩いていたとき、死にかけている男を発見する。村に住んではいないよそ者である。彼はトビーに「跪く女」という謎の言葉を残してこときれるのだが、はたしてこの男が外国のスパイなのだろうか。そして「跪く女」とはなにを意味するのだろうか。

地元の警察には手に余る事件ということでスコットランドヤードのコリアー警部が捜査にあたるのだが、二つの殺人事件を結ぶ線がなかなか見つからない。そのうち村で一番の金持ちサー・ヘンリー・ウェバーの息子二人が毒殺されるという事件が起き、事件は混迷を深めていく。

しかし最初に言ったように本書の眼目は謎の解明というより、戦争に対する人々の態度が随所に表明されるところにある。この本が出版された1936年というのは、イギリス国民のあいだに平和主義的気分が広がったのに、政府が軍備拡張を推し進めたという時期である。本書はこの時代の風潮を色濃く反映している。冒頭のクレア師とキリックの会話も戦争を巡るものだし、彼らの性格も前大戦の経験によって形作られたものである。コリアー警部が地元の警察とかわす会話でも戦争が話題になる。たとえばある人が砲弾ショックで神経に異常をきたした人のことを「卑怯者」とののしったとき、コリアー警部は顔を蒼白にして反論する。「なんの落ち度もないのに地獄へ突き落とされた兵士たちにそんなレッテルを貼るのか。わたしなら戦争を起こした連中を卑怯者というがね」また、ネタバレになるので詳しくは言わないが、本書の最後の裁判の結果、およびそれに対する人々の反応も、戦争に対する忌避感を暗に示しているだろう。

本書はミステリとして読むとがっかりするような内容なのだが、1936年当時の風俗を描いた作品としてはなかなかに面白い。

Monday, March 23, 2026

ウルリッヒ・ボシュヴィッツ「旅する男」

 


作者は1915年生まれのユダヤ系ドイツ人作家。この事実を聞いただけで苦難の人生を送っただろうと予測されるが、実際そのとおりだった。1935年には法律家の叔父がナチス批判をして殺害され、同年ボシュヴィッツは徴兵の命令を受ける。ボシュヴィッツと母親はノルウエーへ逃亡、さらにスエーデン、ルクセンブルク、フランス、ベルギーと渡り歩いて1939年にはイギリスにたどり着く。第二次世界大戦が勃発すると彼と母親は敵性外国人として収容所に入れられ、ボシュヴィッツは40年にはオーストラリアへ送られる。42年には自由の身となりイギリスに帰ることになるのだが、なんとその船がドイツの潜水艦に撃沈され、27歳という若さで亡くなってしまうのだ。

逃亡生活のあいだに彼は二つの小説を発表する。第一作は Menschen neben dem Leben で、これはスエーデンで出版されかなり評判になった。第二作が本書「旅する男」 Der Reisende で、英訳されアメリカでも出版されたが、残念ながら無視されてしまった。ところがである。2010年代に入ってこの小説は見直され大評判になった。数年前に英訳も出て、ベストセラーリストにも入った。いまでは彼はカフカやマン、ハインリッヒ・ベルなどとも比べられる存在となった。

ボシュヴィッツは他にも小説を書いていたのだが、他人に捨てられてしまったり、最後の作品も潜水艦に撃沈された船と一緒に海の底へ沈んでしまった。

本書の内容だが、主人公はジルファーマンという、結婚して子供もいるユダヤ人実業家である。戦争はまだはじまっていないが、ナチスが政権を取り、官庁では「ハイル・ヒットラー」が挨拶に使われていた頃、れいの水晶の夜と呼ばれる暴動が起きる。ジルファーマンは危険を悟った途端に家を抜け出し、商売のパートナーから金をもらい、列車に乗って逃亡生活をはじめる。表題は Der Reisende だが、呑気な旅ではなく、ユダヤ人という自分の正体を見抜かれないよう常に神経を使わなければならない、緊迫した旅である。

さいわいジルファーマンは外見ではユダヤ人とわからない人のようだが、逃亡生活をはじめてから知り合いに助けを求めても冷たくあしらわれるだけだ。ついには国境をこっそり越えてベルギーに入ろうとするが、失敗し、ベルギーの警備兵によってドイツへ戻されてしまう。全編に緊張感とすべてを失った人間のよるべなさ、フラストレーションがあふれていて、身につまされるのだが、しかし先を読まずにいられない不思議な語り口とストーリー展開になっている。徴兵忌避者をあつかった丸谷才一の秀作「笹まくら」とちょっと似た面白さだ。


Friday, March 20, 2026

今月の注目作

The Complete Plays of Gilbert and Sullivan by Arthur Sullivan and W. S. Gilbert

Project Gutenberg


ギルバートとサリヴァンのオペレッタはいずれも掛け値無しの喜劇の傑作で、音楽ファンでなくても一度は目を通しておくべきだろう。イギリス流の言葉遊びと諧謔の文化が爛漫と咲き誇っている。「ミカド」のような高名な作品は当然だが、それほど有名でない作品も水準以上の面白さだ。ギルバートは劇のほかにも詩や短編小説を書いている。しかしサリヴァンとのコンビを解消してからは力がやや落ちているような印象がある。


The monk and the hangman's daughter by Danziger, Bierce

Project Gutenberg


ビアスにあまり関心がないわたしは、彼がエイドルフ・ダンツィガー・ドゥ・カストロなどという人とこんな小説を書いていたとは知らなかった。要約を見ると、若い修道院僧が死刑執行人の娘を見て恋に陥るが、なにしろ不浄な職業についている親の娘だから社会的には除け者扱いされる存在である。個人的な感情と社会的な掟のあいだで修道院僧が苦しむという話らしい。短いので折を見て読んでみたい。


Tales Grotesque and Curious

Project Gutenberg


グレン・ショーという人が訳し、北星堂から出版された本の電子化。出版年は1930年だ。「鼻」とか「羅生門」とか「蜘蛛の糸」といった代表作11編が収められている。いま読むとちょっと堅苦しい訳文になっている。いかにも二十世紀前半の文章だなということは、たとえば「羅生門」の一節 He sneezed a great sneeze and then got up laboriously. Night-chilled Kyōto was cold enough to suggest the comfort of a fire. を見てもなんとなく感じ取れるだろう。原文と突き合わせてはいないが、かなり几帳面に日本語を英語に移植しようとした形跡はある。


Jean-Christophe by Romain Rolland

FadePage


FadePage は最近精力的にロマン・ロランの名作をデジタル化している。英語版は第十巻「新しい夜明け」まで出ているが、フランス語版はまだ三巻目である。FadePage はカナダの団体なので英語とフランス語の本を専門に電子化している。誰でも知っているだろうがノーベル賞を受賞したこの大河小説はベートーベンをモデルにしている。わたしは中学生の頃この本を読んだが、理想主義に燃えていたせいか、心にしっくりくる小説だった。

Tuesday, March 17, 2026

Elementary German Series (15)

15. Der Sommer

Der Frühling ist zu Ende. Wir sind im Juni. Es ist heiß.1 Die Luft ist heiß, die Erde ist heiß, die Häuser sind heiß, und nur im Keller, im Walde oder im Wasser ist es kühl. Jung und alt geht an den Fluß2 oder an den See,3 und alle schwimmen und baden in dem frischen, kühlen Wasser des Flusses oder des Sees.

1. heiß 暑い.
2. der Fluß 川.
3. der See 湖.

Wer viel Geld hat, geht auf das Land.4 Wer kein Geld hat, geht nicht aufs Land, sondern badet und schwimmt, so oft er kann, und arbeitet, so wenig er kann. Wenn es sehr heiß wird, haben die Kinder in Deutschland keine Schule. Wenn es sehr heiß wird, schreien alle Kinder in Deutschland: „Hurra!“

4. auf das Land gehen 田舎へ行く.

In den heißen Sommernächten schlafen viele Menschen im Park. Alle warten auf5 Regen, alle warten auf kühles Wetter. Nach dem Regen sind Tiere und Menschen glücklich, aber nicht lange, denn sehr bald6 wird es wieder heiß.

5. warten auf ~を待つ.
6. bald すぐに.

英語読解のヒント(213)

213. least 基本表現と解説 Of all the teachers, he is the least popular. 「教師のなかで彼はもっとも評判がよくない」 言うまでもなく least は little の最上級で「もっとも……でない」の意味。 例...