Saturday, June 26, 2021

忘れられた作品を電子書籍化する

オーストラリアにはマイルズ・フランクリン文学賞というものがある。マイルズ・フランクリンは二十世紀前半に活躍した女流作家で、「わが輝かしき生涯」という小説で有名。同時に文学活動の支援も積極的に行い、その功績をたたえて文学賞が1957年に設置された。その第一回目の受賞作品はあの名作「ヴォス」である。

ところが2019年までにこの賞を受賞した62冊のうち、23冊はまだ電子化されておらず、40冊はオーディオブック化されていない。さらに10冊は完全に絶版状態だ。これではいけないと Untapped (「手つかず」という意味)というプロジェクトが開始された。要するに作家、図書館、研究者が寄り集まって絶版となっているオーストラリアの文学遺産を電子化しようというのである。

彼らはまずオーストラリアの読書家たちから、絶版となっているが文化的に重要な書物(それもまだ著作権の切れていないもの)を募ろうとしている。そこから専門家が二百冊にしぼりこみ、プロジェクトチームが個々の作家と権利関係の交渉にいどむという段取りらしい。

プロジェクトチームは消滅した著作権をもう一度復活させることによる経済的効果を検証したり、図書館と書籍売り上げの関係についても調べると言っている。アマゾンなどは図書館に電子書籍を貸し出す権利を与えるのは商売にとってよくないと主張しているが、これはアマゾンの勝手な主張であって、これを変える方向で検証を進めたいをしている。

今年の後半には電子化された本が図書館や市場に出回るそうだが、肝心なのはこのように忘れられた書籍を今後もカタログ化し、宣伝していくことだと言う。しかもそれを国家的な規模でやっていくべきだと彼らは考える。

ガーディアンでこの記事を読んだとき、オーストラリアにはまだまだ文化力があるなと思った。前にもこのブログで書いたが、本というのは歴史的に重要なものであっても意外なくらい入手困難になったり、なくなってしまうことがあるのだ。それどころかユニークな作品を残した作家がいつ生まれ、いつ死んだのか、それすらもわからなくなることがある。書籍を保存し、文化を後世に伝えるには不断の努力が必要になる。本来なら国家的事業にしてもよいくらいなのだが、我が国のリーダーはそういうことがまるでわからず、自国の文化力ががた落ちになったことにも気づいていない。彼我の差異に落胆しつつも、海の向こうの同志たちの知らせに勇気を得て、わたしも忘れられた作家・作品を掘り出し、その意義を考え直していこうと思う。

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