The Scorpion by Anna Elisabet Weirauch
Project Gutenberg
正月早々びっくりしたが、ドイツのレズビアン文学で高名な「さそり」が電子化されていた。ナチスが政権を取る前の、レズビアニズムを肯定的に描いたこの作品は1919年、ヴァイマール時代に出版された。のちに有害図書ということで一般に広くは行き渡らなかったようだが、1932年に出た翻訳、つまり今回 Project Gutenberg から出た本によってアメリカに大きな影響を与えた。レズビアニズムに興味があるなら Radclyffe Hall の The Well of Loneliness (1928) と合わせて読んでいただきたい。どちらも名作だが、翻訳は出ていないと思う。「さそり」はドイツ語の原文も電子化されている。
Women in the Shadows by Ann Bannon
Project Gutenberg
「さそり」を見つけたときは驚いたが、そのすぐ下にアン・バノンの「影の女」を見つけたときは噴き出してしまった。今年はレズビアンもの、ホモセクシュアルものがたくさん出るのだろうか。アン・バノンはレズビアン・パルプ小説の女王と呼ばれる人で、ビーボ・ブリンカーを主人公にした一連の小説は大いに大衆受けした。作者は大学の先生でもあり、文章は読みやすい。「さそり」が1920年頃のレズビアン文化を示しているとするなら、アン・バノンは50年代、60年代のレズビアン文化をあらわしている。
2026年パブリックドメイン・デイを記念して Standard EBooks が次のような豪華なタイトルを電子化してくれた。
(作品..........作者)
The Castle..........Franz Kafka
The Maltese Falcon..........Dashiel Hammett
As I Lay Dying..........William Faulkner
Not Without Laughter..........Langston Huges
The Murder at the Vicarage..........Agatha Christie
Strong Poison..........Dorothy L. Sayers
Vile Bodies..........Evelyn Waugh
Years of Grace..........Margaret Ayer Barnes
Miss Mole..........E. H. Young
The Faraway Bride..........Stella Benson
The End of the World..........Geoffrey Dennis
Swallows and Amazons..........Arthur Ransome
Ash Wednesday..........T. S. Eliot
Short Fiction..........Daphne du Maurier
Cimarron..........Edna Ferber
Giant's Bread..........Agatha Christie
The Secret of the Old Clock..........Carolyn Keene
The Hidden Staircase..........Carolyn Keene
The Bungalow Mystery..........Carolyn Keene
The Mystery at Lilac Inn..........Carolyn Keene
おそらくこの中で一番日本人に馴染みがないのは Geoffrey Dennis だろうが、The End of the World は1930年にホーソーンデン賞を受賞している。終末に関するエッセイというかなんというか、奇天烈な本で、なぜこの本が賞を取ったのかよくわからないのだが、しかし詰まらないわけではない。それどころか結構おもしろい。この人は Harvest in Poland という、まことに奇妙なオカルト小説? 恐怖小説? それとも寓話?なのか、わけのわからない作品を書いている。ずば抜けた才能があるわけではないが、鬼才であることはまちがいない。