全日本プロレスのホームページを見ると、八月三日から開催されるジュニア・タッグ・バトル・オブ・グローリーのポスターが出ている。
出場選手が顔を並べるなか、中央でひときわ大きく腕を撫しているのは、マスクをかぶった青木篤志。彼は全日本の所属だし、実力もトップクラスだから、センターを占めるのは不思議でない。しかし……
……去年の優勝チームである丸山・竹田組が端っこに配されるという扱いはどうだろうか。変幻自在、円転滑脱、容易に尻尾をつかませない不思議なキャラの丸山と、気骨稜々、狷介不羈、野武士のような面構えの竹田が、今年も活躍することをわたしは期待する。
とりわけ竹田誠志。彼はいつもはデスマッチの専門家のようだが、たしか青木にもシングルで勝ったことがある強者である。わたしはデスマッチは好きではないので一切見ないが、しかし竹田のふてぶてしい、気合いの乗ったファイトが大好きである。デスマッチで身につけたであろう迫力が、全日本の王道スタイルで戦ってもにじみ出してきて、われわれファンは普段の全日の試合では味わえない、独特の雰囲気を楽しむことができる。
その竹田が、デスマッチなんて絶対にしそうもない丸山と組むのだから、面白くないわけがない。身体は極力動かさず、舌先三寸で勝とうとする丸山に、言葉より凶器という竹田のコンビ。ただこの漫才のようなコンビは、まだそのよさを充分に表現し切れていない。これだけ戦いの間合いやリズムに違いがあるのだから、そのギャップを利用すれば、相手にもよるだろうけど、試合を面白く組み立てることができるのではないか。彼らのタッグワークがいっそうの進化を遂げることを望む。
Wednesday, July 25, 2018
ジュリアン・マクラーレン・ロス「四十年代回想録」
ジュリアン・マクラーレン=ロス(1912-1964)はボヘミアン的な生活を送っていたことで有名な、ロンドン生まれの小説家、脚本家である。ボヘミアンというのは、まあ、まともな社会生活に適合できないはみ出し者、くらいの意味である。ロンドンでもパリでもそうだが、芸術家でボヘミアンという...
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