Monday, November 20, 2023

ロバート・C・オブライエン「銀の冠」


十歳の誕生日の朝、宝冠のような帽子をプレゼントに受け取ったエレンは、それを持って近くの森へ行き、女王さまになった自分を空想する。ふと気づくとなにかが燃えるようなにおいがした。森を出て家に帰ると、なんと家がごうごうたる火に包まれている。家族は全員が死亡。彼女の家族は引っ越してきたばかりで近所に知り合いはない。彼女はたった一人で、遠く離れたおばさんの家に向かおうとする。
これがこの魅力的な冒険のはじまりである。何が魅力的なのか。謎がつきまとっているのだ。宝冠のような帽子は不思議な力を持っているらしく、それをかぶるとエレンは心が落ち着き、秩序だった考え方ができる。しかも宝石のように取り付けられた飾りは急に光を放ったりする。そしてエレンをつけねらう謎の男。緑色の仮面をかぶり、銃を使って店を襲い、警官を殺害するこの男は、おばさんの家までヒッチハイクしようとしたエレンを誘拐しようとする。
危険を察知し、からくも魔の手を逃れたエレンは、オットー少年に出会い、一緒になってさらに旅を続けようとする。
少し前に「グループ17からの報告」という小説を読んで、物語自体はそれほどでもないが文章がうまい作家だなと思った。透明感があり、不思議な静謐さをたたえた文体なのだ。わたしは文章がいい作家は必ず作品を複数読むことにしている。「銀の冠」は文体のすばらしさに加えて、物語も圧倒的に面白い。透明で静謐な文体で語られる物語が、しだいに悪夢のような性格を帯びていくところは見事としかいいようがない。現実がいつのまにか悪夢に転化するさまを描いた名作は多いけれど、これもその一つだろう。ヤングアダルト向けの一作だが、大人が読んでも夢中になる。

関口存男「新ドイツ語大講座 下」(4)

§4.  Solch ein kleines Kind weiß von gar nichts. そんな 小さな子供は何も知らない。  一般的に「さような」という際には solch- を用います(英語の such )が、その用法には二三の場合が区別されます。まず題文...