Sunday, November 17, 2024

関口存男「新ドイツ語大講座 下」(2)

§2. Der? ach, dem traut ja keiner.
あいつか?へん、あんなやつに誰が信用するものか。
trauen: 信用する。ja: (文の勢いを強めるための助辞)

 前項のは名詞に冠したものでしたが、こんどは名詞を省いたものです。この方は定冠詞と混同する心配がないので、必ずしも字間をあける必要はありません。また、前項の指示詞は、その格変化は全然定冠詞と同じですが、この方は、関係代名詞のような変化をします。

m.f.n.pl.
derdiedasdie
dessenderendessenderen (derer)
demderdemdenen
dendiedasdie

 この指示代名詞の用法で最も重要なのは「……のそれ」という場合です。たとえば「彼の場合は受験者のそれだ」 Sein Fall ist der eines Examinanden, 「私の意見は同時に私の妻のそれだ」 Meine Ansicht ist zugleich die meiner Frau, 「彼の良心は犯罪者のそれに似ている」 Sein Gewissen gleicht dem eines Verbrechers.

 二格の dessen, deren は、物主形容詞の不備を補うために用いることがあります。たとえば Der Detektiv erkennt den Verbrecher und dessen Methode wieder (探偵は犯罪者とその手口に心覚えがある)において、もし dessen の代わりに seine を用いると、ちょっと探偵自身の手口のような感じをあたえます。また Sie kennt meine Ansicht und deren Mängel (彼女は私の意見とその欠陥を知っている)において deren を ihre とするならば、その欠陥は彼女自身の欠陥を意味することになりましょう。

 次に、複数二格の deren と derer とには用法上の差があります。deren の方は只今述べたごとく、deren Ansicht (その人たちの意見)といったように名前の「前」につけて用いますが、derer の方は名詞の「後」につけて用います:Du verteidigst die Ansicht derer, die dich verhöhnen! (君は君を嘲っている者どもの意見を弁護しているじゃないか!)――この derer はつまり英語の of those にあたります。deren Ansicht と die Ansicht derer とは、意味は同じですが、deren の方は名詞の前に(すなわち冠詞の位置に)置かれて既述の者を指し、derer の方は名詞の後に置かれて未述の何者かを指します。かつ derer は大抵「人」を意味します。

§2. Fall, m.: 場合。Examinand, m. -en: 受験者。zugleich: 同時に。gleichen: 似る。Verbrecher, m.: 犯罪者。etwas wiederkennen: ある物を見て想い出す(recognize)。Mangel, m. pl. "_: 欠陥。verteidigen: 守る、防御する、弁護する。verhöhnen: 嘲る、侮蔑する。

関口存男「新ドイツ語大講座 下」(2)

§2. Der ? ach, dem traut ja keiner. あいつか?へん、あんなやつに誰が信用するものか。 trauen : 信用する。 ja : (文の勢いを強めるための助辞)  前項のは名詞に冠したものでしたが、こんどは名詞を省いたもの...