Fowlers End by Gerald Kersh
Fadepage
「ファウラーズ・エンド」というのはロンドンの郊外にある工業地区のことで、労働者が居住している。そこにある映画館の支配人が住民たちや仕事仲間とかわす会話を集めた本で、とくにドラマチックな筋があるわけではないのだが、しかしこの会話が圧倒的におもしろい。ただしいわゆるコックニー訛りがきつくて読むのは大変かもしれない。中流家庭出身の支配人を除くと登場人物はみな奇矯な人物か悪党で、ロンドンという都市の猥雑な魅力が爆発している。アンソニー・バージェスが本書をコミック小説の傑作と呼んだのもうなずける。
Angel Pavement by J. B. Priestley
Project Gutenberg
プリーストレーはディケンズばりのふくよかな物語を展開させる。「仲好し座」や本書の「天使通り」は彼の最上の作品といっていいだろう。わたしはモダニズムの作品が好きだが、神経衰弱的なところがあるウルフやジョイスらの作品ばかり読むのはしんどい。ときにはディケンズやベネットのような豊かな物語性をもつ作品も読みたい。そんなとき、まっさきに手に取るのがプリーストレーの作品である。最後の数頁にいたって彼くらい「ああ、こんなに面白い物語がもう終わってしまうのか」と悲しい気持ちにさせる作家はいない。しかし彼にはモダンな感覚もあって、ミステリ風味の戯曲などは一読に値する。
Jenny by Sigrid Undset
Standard Ebooks
シーグリ・ウンセットはノルウエーのノーベル賞作家だ。ノルウエーがナチスに侵略されたときはアメリカに逃亡している。本書は若き女性画家の、愛の転落を描いているのだが、いま読んでも生々しさがある。これが書かれた1911年頃はヨーロッパでフェミニズム運動が盛んだった時期で、独立を求める女性を描いた作品が多数生まれた。わたしはその手の作品をたくさん読んでいるわけではないが、本書はかなり上等の部類に属すると思う。彼女の代表作「クリスティン・ラヴランスダッテル」三部作や「ヘストビケンのあるじ」四部作など日本では翻訳が出ているのだろうか。