Saturday, June 14, 2025

関口存男「新ドイツ語大講座 下」(9)

§9. 不定の意を強める irgend

 「何か」(etwas, was)といえばよいところを、特に念を入れて「何でもよいからとにかく何か」といいたい時には irgend etwas, irgend was といいます。その他不定詞(ein, jemand, jemals, je)や疑問詞(wo, wann, wie, welcher)には、不定の意を強めるためにこの語を冠せ、一語に綴ることもあります:

(1) Ich muß irgendwen fragen.
  僕は誰かに問わなくてはならぬ。

(2) Er schläft irgendwo in der Ecke.
  彼はどこか隅っこで寝ている。

(3) Es wird mir irgendwie gelingen.
  なんとかマア首尾よくゆくだろう。

(4) Der Mensch muß irgendeinen Glauben haben.
  人間はなんらかの信念を持たねばならぬ。

(5) Habe ich dich irgendworin beleidigt?
  僕は君をなんらかの点で侮辱したかね?

(6) Hat er irgend jemals gelogen?
  かれは未だかつて嘘を吐いたことがあるか。

 単に irgend のみを用いると irgendwie (なんとかして、なんらかの方法で、なんらかの形で)と同意になります:Hilf mir, wenn es irgend möglich ist! (なんとか出来ることなら私を助けてくれ!)

 元来は irgend に対する否定形であった nirgend または nirgends は、nirgend(s)wo (英:nowhere 「どこにも……〔しない〕)と同意です:Solch ein Wolkenkuckucksheim gibt es ja nirgends in der Welt (そんな夢想郷は世界中どこにだってありゃせんよ)。

§9. (3) gelingen (=glücken): 成功する、うまくゆく。(5) beleidigen (=kränken):傷つける,怒らす。(6) gelogen: lügen (嘘を吐く), log, gelogen. Wolkenkuckucksheim, n.: 夢想郷, ユトピア。

エドワード・アタイヤ「残酷な火」

  エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...