Thursday, August 20, 2026

今月の注目作

The Infinite Moment by John Wyndham

FadePage


ウィンダムもシマックも「ぬるい」とか「牧歌的」とけなされることがあるが、わたしは好きだ。文明批評という点から見ると、案外的を射た、いいことを言っているからである。本書は短編集で、いろいろな人が突然自分の人生の過去へ、あるいは未来へ飛ばされてしまう。ジェンダーに関する考察などは面白い。


The Necromancers by Robert Hugh Benson

Standard Ebooks


ベンソンは十九世紀の世紀末に活躍したカトリックの牧師さんだが SF、ホラー、歴史小説などを書き、どれもが水準以上のみごとな出来となっている。本書はホラーで婚約者を亡くした男が彼女の霊とコンタクトしようと降霊会を開くのだが……という話。ヴィクトリア朝の物語らしく展開はゆっくりしているが雰囲気は恐い。


In His Steps by Charles M. Sheldon

Project Gutenberg


これはすでに電子化されていた本のアップデート版。カンサスのある教会の牧師が信者たちに言う。「キリストならどうするか、それを考えて行動しろ」と。その結果社会が大きく変わるという、今でもよくある話の、誉れ高き第一号。わたしはこの手の物語が大嫌いだが、最近はなぜ理想的な社会を提示しようとする物語が嘘くさく、ペテンじみて感じられるのか、考えている。


Vera by Elizabeth von Arnim

Project Gutenberg


ダフネ・ドゥ・モーリエの「レベッカ」やシャーロッテ・ギルマンの「黄色い壁紙」がお好きな人はぜひ読んでほしい。ルーシーという女がとある男やもめと恋に陥り、男の屋敷に住むようになるが、そこは男の前妻ヴェラの想い出に取り憑かれている、という話。男の妄想空間をみごとに作り出している。フォン・アーミンは、抑圧的なヴィクトリア朝期の家庭生活から光と花とロマンにあふれたイタリアへむかう女たちを描いた「魅惑の四月」で有名だが、出来はこの作品のほうがはるかに上。


Au bagne by Albert Londres

Project Gutenberg


アルベール・ロンドルはフランスのいわゆる investigative journalism (調査報道)の元祖みたいな人。本書「徒刑場にて」はフランス領ギアナの流刑地の過酷な状況を報告している。二十世紀前半の気骨あるジャーナリズムがほとんど日本語に訳されていないがどういうことだろうか。ネリー・ブライやイーダ・ターベル、メンケンやフィリップ・ギブスすらろくに紹介されていない。

今月の注目作

The Infinite Moment by John Wyndham FadePage ウィンダムもシマックも「ぬるい」とか「牧歌的」とけなされることがあるが、わたしは好きだ。文明批評という点から見ると、案外的を射た、いいことを言っているからである。本書は短編集で、いろいろな人...