高知県立大学が蔵書三万八千冊を焼却した。中には貴重な郷土本、絶版本がたくさんあったとされている。
なぜ他の図書館に寄贈しなかったのかという、ごくごく当然の疑問が一般人から多数寄せられている。
しかし日本はもともと知的な財産をないがしろにする国である。貴重な資料であっても保管場所がなくなればぽいと捨てて顧みない。重要な行政文書もどんどんなくなっている。あれは自分たちに都合の悪いことを隠す意図も大いにあるけれど、もともと日本人には知的な財産を保存するという観念がないからである。
大学は文化の拠点のようにいわれるけれども、日本の場合はセクハラ、パワハラの巣窟であり、権威主義をもり立てるだけの商業施設で、文化なんか生み出してはいない。世界における日本の大学のランクは、今後、ますます下がっていくだろう。
今の政権はまさに日本を象徴する。日本語が読めず、ゴルフばかりする首相、漫画しか読まない大臣。愚昧な発言を繰り返す議員。なぜ彼らが選ばれるかと言えば、教養主義に対する漠然とした反感が国民のあいだに広がっているからだろう。
そんな日本にも知を紡ぎ出そうとする努力する思想家がかろうじていたものだ。吉本隆明とか江藤淳とか丸山眞男とかだ。しかしその系譜も柄谷行人(まだ生きているけど)で途切れたよう見える。日本にあったなけなしの知の伝統も消滅寸前である。
日本は西洋の猿まねをしてきたが、化けの皮がはがれた、あるいはお里が知れた、というのが現状ではないだろうか。森鴎外の「金比羅」は現代日本への批判としても有効に読める。
Tuesday, August 21, 2018
エドワード・アタイヤ「残酷な火」
エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...

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