メイベル・エスター・アラン(1915-1998)が1968年に出した小説。聞いたことのない作家だが、子供向けの本をたくさん出していたらしい。
本書も文章が平易で、中学生か高校生向けに書かれたような作品だ。タイトルから推測されるようにゴシック風味の内容である。
グウェンダはパリの貸本屋で働く若いイギリス人女性だ。貸本屋というのは、全国各地に住む顧客からしかじかの本を送ってくれと頼まれると、その本を箱に詰めて送り、顧客のほうは返却期限までにそれを店に返すという仕組みで成り立っている。グウェンダはブルターニュに住むとある顧客の返却本の中に奇妙な手紙が混じり込んでいることに気づく。それには「城の中の様子がおかしい。不安だ」ということが書かれていた。これに興味を惹かれたグウェンダは休暇をブルターニュで過ごすことにする。
ふとした偶然から彼女は問題の城で休暇を過ごすことになる。二週間だけだがこの城に住む幼い女の子に英語を教える仕事を得たのだ。さらに返却本の中にはさまっていた手紙の主も発見した。なんと彼女は城の中の階段から滑り落ち、病院に入院していた。誰かに紐か何かで足をすくわれたようなのだ。
グウェンダも次第に城の中の様子がおかしいことに気づいていく。よくわからないが、城の主は不機嫌で、彼の弟は明らかに悪いことを企んでいるようだ。そしてついに彼女と幼い女の子にも危険が迫ってくる。
正直な感想を言うと、あまりたいした作品ではなかった。若い女の子の願望成就みたいな物語で、読み終わってばかばかしい気がした。グウェンダは貸本屋で働いているときアナトールという退屈なボーイフレンドがいた。彼女はこの男と手を切りたいと思っていた。そしてブルターニュへ行き、ミステリアスな環境の中でセバスチャンというロマンチックな男と出会い、恋に陥る。後にアナトールもブルターニュに乗り込んでくるのだが、さんざん無能っぷりを発揮してぷんぷんしながらパリに帰っていく。それを見てグウェンダとセバスチャンは笑いこけるのだ。そして二人は結婚し幸せになる。これはもう、テレビでやっているようなドラマチックな恋をしてみたいと思う、若い女の夢物語ではないか。こういう幼稚な物語に興味はない。
関口存男「新ドイツ語大講座 下」(16)
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