わたしはあまり人に知られていない、隠れた名作というやつが大好きである。翻訳が出ていないことが多いので、訳しやすいし、宣伝のしがいがある。今年読んだ、そうした本の中でよかったのは三つある。
まず第一位は RENE FUELOEP-MILLER の THE NIGHT OF TIME。これはすごい。軍隊が317高地を攻略するために無謀な戦いをつづける物語だ。ひどくリアリスティックであり、同時にシュールリアリスティックな描写、カフカのような展開に圧倒された。「カチアートを追いかけて」とかアンドレーエフの作品を二葉亭が訳した「血笑記」などが思い出された。Goodreads のサイトを見たらこの本は出てこない。名前すらあがっていないのである。読んでいる人は世界でもそんなにはいないと思う。わたしが読んだのは英訳されたもので、なんとかしてドイツ語の原文を手に入れたいのだが、日本の大学には一冊もないようだ。
第二位は EDGAR MITTELHOLZER の作品群。「エルトンズブロディ」と「わが骨、わがフルート」の二作は訳したが、ほかにも THE SHADOWS MOVE AMONG THEN とかいいのがある。人に知られていないというのはわたし好みで結構なのだが、それは作品が入手しにくいという事実の裏返しであって、困る点でもある。幸い、この本は Internet Archive で借りることができるのでようやく読むことができた。
第三位は STELLA BENSON の LIVING ALONE。これはかなり有名なファンタジー小説なのだが、翻訳はまだ出ていないようだ。ドイツ軍に空爆されるロンドンという、シリアスな状況の中で、魔女の物語が軽やかに展開される、実に風変わりな物語だ。ただわたしは訳さないと思う。この物語のチャーミングさを表現できるような日本語をわたしは持っていないから。
Wednesday, December 26, 2018
独逸語大講座(20)
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