日本の著作権(ここでは書籍の著作権に話を限る)の保護期間が現行の五十年から七十年に変更されることはもう決定されたといっていい。カナダも同様である。カナダにはグーテンバーグやフェイド・ペイジというすばらしいサイトがあって、精力的に電子テキストを出しているが、パブリック・ドメインには意外な宝石がいくつも隠れているのだから、冬の期間が始まったなどと思わずに、これからも活動を力強く継続して欲しいと思う。知性というのは低い声で、しかし執拗にささやきつづけるものなのだ。
ひとつだけ、保護期間延長反対派にいいたいことがある。保護期間が延びると作品が死蔵されるなどという意見があるけれど、それは議論のための議論で、わたしなどは、なにを心にも無いことをいっているのか、と怒鳴りたくなる。わたしは知られていない作家や、有名な作家でも知られていない作品を一生懸命探し出してきて読む人間だが、わたしのような酔狂は滅多にいない。ほとんどの人は名の知られた作家、名の知られた作品しか読まないのである。日本人にいたっては読書する人じたいがいなくなっているのだから、もともと話にならないのだけれど。
保護期間が短くたって、興味を持たれなければ作品は死蔵する。逆に保護期間が長くたって、活字文化への興味が大きければマイナーな作品にも光があてられるようになる。わたしが読書少年であったころはそうしたことがよくあった。尾崎翠なんかはいい例である。しかし今の日本ではもうそんなことは起きないだろう。知の領域はすっかり独立性を失い、商業化されてしまっているから。
知の力が世界的に衰退しているという事実を、著作権保護期間の延長は物語っているように思えてならない。
Sunday, December 30, 2018
独逸語大講座(20)
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