ガーディアン紙に Tales of the unexpected: 10 literary classics you may not have read という記事が出ていた。驚くような話、しかもあなたが読んだことがないであろう古典文学、わたしにとってはまさしく興味津々のリストである。
以下の十作品が挙げられていた。
Petronius, The Satyricon, cAD64
Lady Sarashina, As I Crossed a Bridge of Dreams, 11th century
Sivadasa, The Five-and-Twenty Tales of the Genie, c13th century
Marguerite de Navarre, The Heptameron, 1558
Margaret Cavendish, The Blazing World, 1666
Jan Potocki, The Manuscript Found in Saragossa, 1805-15
ETA Hoffmann, The Life and Opinions of the Tomcat Murr, 1820-2
Comte de Lautreamont, Maldoror, 1868
Emilia Pardo Bazan, The House of Ulloa, 1886
MP Shiel, The Purple Cloud, 1901
「サティリコン」はわたしも素晴らしい作品だと思う。映画にもなっていたが、あれを見てから原作を読むとイメージが膨らみやすいかもしれない。「更級日記」が二つ目に挙げられているのは日本人としてうれしいし、この記事の書き手ヘンリー・エリオットの読書の幅広さに驚かされる。あの異様な情念は確かに世界的に見ても類例を見ないと思う。堀辰雄が「更級日記」の現代語バージョンを書いていて、これも悪くない。実を言うと、わたしは「菜穂子」なんかよりそっちのほうが印象に残っている。
ホフマンの小説は「牡猫ムルの人生観」というやつだが、もう内容はすっかり忘れた。「砂男」はいろいろな本で言及されているので、そのたびに思いだし記憶に残っているが、「ムル」のほうはまるで覚えていない。しかし覚えていない作品のほうが無意識に沈殿していて、いつのまにか意識に大きな影響を与えていることがある。「マルドロールの歌」も大学時代に読んだ。記事の脇にペンギン・クラシックスの表紙が出ていて、いまでもあの図柄を使っているのかとなつかしかった。怪奇をうたった作品ではあるが、あまりわたしの好みではない。ロマンチックな想像力から生まれた怪奇にはさほど惹かれないのだ。それよりも明晰な理性から生まれたポーのような怪奇のほうが面白い。
最後のシールの作品「紫色の雲」は訳そうかどうか迷っている。彼の Children of the Wind という作品もなかなかの出来だし、プリンス・ザレスキー以外にもすぐれた作品を書いていることはもっと知られるべきだと思う。「紫色の雲」は語り手が北極を探検している間に紫色の雲が世界を覆い、人がいなくなってしまうという話である。語り手は誰もいない各地域を彷徨い歩くのだが、これが案外読み手をわくわくさせるのだ。
以上を除いた残りの五冊はまだ読んでいない。できたら年末にでも目を通したいと思っていたが、次に翻訳する本の関係で今は第二次世界大戦を描いた作品を大量に読みあさっており暇がなかった。残念。
Monday, January 7, 2019
エドワード・アタイヤ「残酷な火」
エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...

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63. I don't know but (that /what) 基本表現と解説 I don't know but that he did it. 前項の Who knows の代わりに I don't know とか I cannot say ...