トランプ大統領がメキシコとの国境に壁を作ろうとしているが、ミステリ作家のドン・ウインズローがそのことに関しツイッター上で「フォックス・ニュースでおれと討論しようぜ」と持ちかけた。それを知ったスティーブン・キングは、「そいつは見たいな。一万ドル出すぜ」とウインズローに言った。ただし二十一日の時点ではトランプからはまだ返事がないそうだ。
ウインズローが出したツイートの内容はこんな感じだ。「親愛なる本物のトランプよ。トランプ・ウオールについて議論しようぜ。そして国民に決定してもらおう。おれはあんたのニュース・ネットワークにだって出る。フォックス・ニュースだ。どんな番組でもいい。アンカーも誰でもいい。時間もいつだっていい。大統領選挙のときは十八人の共和党の人間と議論したんだから、作家を一人相手にするくらい朝飯前だろう。返事を待つ」
これはガーディアンの記事を読んで知ったのだが、彼はもとから壁の設置に反対していて、二年前には全面広告を出して「交通事故でより薬物の過剰摂取で死ぬ人が多いこの時代、ドラッグ問題を根本的に解決する代わりにトランプは国境の壁というファンタジーをわれわれに与えようとしている。そんなものはドラッグの流入を防ぐのにちっとも役に立たないのだが」
彼はこんな具合にさかんにトランプ批判をやっているようだ。キングもトランプにたいして臆することなく批判する。つい先日、トランプの国家非常事態宣言に対して「民主主義からの大きな後退、独裁主義への大きな前進だ。二百年以上つづいてきたアメリカの統治の形を彼は破壊しようとしている」とやった。
ひるがえって日本の作家はどうだろう。文化人はどうだろう。議論しようぜ、と安倍首相にもちかける人間はいるだろうか。そっちの都合のいい条件を呑んでやる、と言える人はいるだろうか。わたしはおそらく野坂昭如ならやっていただろうな、と思う。かなり確信を持ってそう思う。
しかし不幸なのは安倍にしろトランプにしろ教養がないから(どちらもゴルフはするが読書はしない)議論らしい議論にならないという点が残念である。論点をずらすとかヒステリックに関係のない話をするとか(とくに安倍)、そんな程度しかできないのだ。論理的に問い詰めることを知っているなら高校生でも安倍首相を容易に窮地に追いやることが出来るのだろう。
だからだろう、ウインズローがディベートのセッティングはいっさい大統領の判断に任せると言ったのは。まともにやったのではトランプ不利は明白。そこで相手の都合のいい条件、たとえばアンカーがトランプに口添えすることもできるような状況でやろうと言ったのだ。さすがアメリカ人、ウエスタンに出てくるガンマンのような格好良さだ。わたしはウインズローが最近出した「国境」という本をさっそく読んでみようと思う。
Friday, February 22, 2019
関口存男「新ドイツ語大講座 下」(4)
§4. Solch ein kleines Kind weiß von gar nichts. そんな 小さな子供は何も知らない。 一般的に「さような」という際には solch- を用います(英語の such )が、その用法には二三の場合が区別されます。まず題文...
-
昨年アマゾンから出版したチャールズ・ペリー作「溺れゆく若い男の肖像」とロバート・レスリー・ベレム作「ブルーマーダー」の販売を停止します。理由は著作権保護期間に対するわたしの勘違いで、いずれの作品もまだ日本ではパブリックドメイン入りをしていませんでした。自分の迂闊さを反省し、読者の...
-
久しぶりにプロレスの話を書く。 四月二十八日に行われたチャンピオン・カーニバルで大谷選手がケガをした。肩の骨の骨折と聞いている。ビデオを見る限り、大谷選手がリングのエプロンからリング下の相手に一廻転して体当たりをくわせようとしたようである。そのときの落ち方が悪く、堅い床に肩をぶつ...
-
ジョン・ラッセル・ファーンが1957年に書いたミステリ。おそらくファーンが書いたミステリのなかでももっとも出来のよい一作ではないか。 テリーという映写技師が借金に困り、とうとう自分が勤める映画館の金庫から金を盗むことになる。もともとこの映画館には泥棒がよく入っていたので、偽装する...