Friday, February 22, 2019

闘う文学者

トランプ大統領がメキシコとの国境に壁を作ろうとしているが、ミステリ作家のドン・ウインズローがそのことに関しツイッター上で「フォックス・ニュースでおれと討論しようぜ」と持ちかけた。それを知ったスティーブン・キングは、「そいつは見たいな。一万ドル出すぜ」とウインズローに言った。ただし二十一日の時点ではトランプからはまだ返事がないそうだ。

ウインズローが出したツイートの内容はこんな感じだ。「親愛なる本物のトランプよ。トランプ・ウオールについて議論しようぜ。そして国民に決定してもらおう。おれはあんたのニュース・ネットワークにだって出る。フォックス・ニュースだ。どんな番組でもいい。アンカーも誰でもいい。時間もいつだっていい。大統領選挙のときは十八人の共和党の人間と議論したんだから、作家を一人相手にするくらい朝飯前だろう。返事を待つ」

これはガーディアンの記事を読んで知ったのだが、彼はもとから壁の設置に反対していて、二年前には全面広告を出して「交通事故でより薬物の過剰摂取で死ぬ人が多いこの時代、ドラッグ問題を根本的に解決する代わりにトランプは国境の壁というファンタジーをわれわれに与えようとしている。そんなものはドラッグの流入を防ぐのにちっとも役に立たないのだが」

彼はこんな具合にさかんにトランプ批判をやっているようだ。キングもトランプにたいして臆することなく批判する。つい先日、トランプの国家非常事態宣言に対して「民主主義からの大きな後退、独裁主義への大きな前進だ。二百年以上つづいてきたアメリカの統治の形を彼は破壊しようとしている」とやった。

ひるがえって日本の作家はどうだろう。文化人はどうだろう。議論しようぜ、と安倍首相にもちかける人間はいるだろうか。そっちの都合のいい条件を呑んでやる、と言える人はいるだろうか。わたしはおそらく野坂昭如ならやっていただろうな、と思う。かなり確信を持ってそう思う。

しかし不幸なのは安倍にしろトランプにしろ教養がないから(どちらもゴルフはするが読書はしない)議論らしい議論にならないという点が残念である。論点をずらすとかヒステリックに関係のない話をするとか(とくに安倍)、そんな程度しかできないのだ。論理的に問い詰めることを知っているなら高校生でも安倍首相を容易に窮地に追いやることが出来るのだろう。

だからだろう、ウインズローがディベートのセッティングはいっさい大統領の判断に任せると言ったのは。まともにやったのではトランプ不利は明白。そこで相手の都合のいい条件、たとえばアンカーがトランプに口添えすることもできるような状況でやろうと言ったのだ。さすがアメリカ人、ウエスタンに出てくるガンマンのような格好良さだ。わたしはウインズローが最近出した「国境」という本をさっそく読んでみようと思う。

英語読解のヒント(145)

145. 付帯状況の with 基本表現と解説 He was sitting, book in hand, at an open window. 「彼は本を手にして開いた窓際に座っていた」 book in hand は with a book in his hand の...