Monday, February 25, 2019

文学とは


ほとんどの人が絶望的なまでに誤解していることなのだが、文学というのは、まさしく文学を批判することなのである。うんとわかりやすく言うと、蝶よ、花よと歌うことが文学ではなく、そうした文学に対する観念を批判することこそ文学なのである。

そして文学とは閑文字なりと思い込んでいる人々こそ、こうした「ダメな」文学的観念にやられてしまう。最近のいい例は安倍首相で、自衛官の息子が「自衛隊は違法なのか」と眼に涙をためて尋ねた、などと話をしている。「眼に涙をためて」。文学を知らない人は、自分が文学にやられていることを知らない。

エドワード・アタイヤ「残酷な火」

  エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...