全日本プロレスはシリーズとシリーズのあいだの中休みの時期だが、盤外では活発な動きがあるようだ。まず暴走大巨人組が大日本に乗り込み、関本・岡林組に世界タッグへの挑戦をアピールした。諏訪魔は三冠戦で負けたばかりだが、すぐに切り替えて次なる目標に向かうところが素晴らしい。レスラーにはこういう「生臭さ」がなければならない。
また野村がネクストリームを抜けて、三冠の宮原に挑戦することになった。レスラーというのは基本的に個人事業主、一人一人が一国一城の主であって、戦略的に徒党を組むことはあっても、それはいつかは分裂することを前提としている。だから野村が青柳とのコンビを解消し、さらにアジアタッグのベルトも返上したことは、わたしはどうとも思わない。
ただ青柳は野村にいいようにあしらわれ、腹を立てているようだ。まあ、それはわかる。しかし記者会見の席で「野村の邪魔をしてやる」といったのは感心しない。そんなせこいことをして、どうするのだ。青柳が言うべき台詞は、「三冠に挑戦すると大きく出たが、お前はほんとうに挑戦できるくらいの強さなのか。宮原の前に俺の屍体を越えて行け」でなければならない。ついでにジェイク・リーも出てきて、三つどもえの戦いになれば、見る側の楽しみも二倍三倍になる。全日本の若き武将が、思い切り火花を散らせば、ファンの気持ちだって盛りあがらないわけがないのだ。
わたしは今回はちょっとだけ若手がしくじったな、と感じる。もっともっと面白い展開が工夫できたのに、それを逃してしまったのだから。チャンスは一瞬。今度は見逃さないで欲しい。
Friday, March 1, 2019
ジュリアン・マクラーレン・ロス「四十年代回想録」
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