タンタルスの苦しみはリビドー的な構造を持っていて、注目に値する。それは「必要」「要求」「欲望」というラカンの区分を明確に表現している。つまり、われわれのある「必要」を充たすための日常的な物体は、「要求」の弁証法の中にからみとられるや、「欲望」を生み出すようになるのである。われわれは誰かになにかを「要求」するとき、そのなにかの「使用価値」(それがわれわれのある「必要」を充たすという事実)それ自体が「交換価値」の表現となる。そのなにかは間主観性のネットワークを指し示すようになるのだ。もしも他者がわれわれの望みに応じたなら、それによってその他者はわれわれにある態度を示したことになる。われわれがなにかを「要求」するその最終的な目的は、「必要」を充たすことではなく、われわれにたいする他者の態度を確認することにある。たとえば母が子供にミルクをやるとき、ミルクは彼女の愛をあらわすものとなる。タンタルスは気の毒にも貪欲(「交換価値を」求めたこと)の代償を払わなければならない。彼が手にした物は、「使用価値」を失い、「交換価値」の純粋でむなしい化身に変わる。彼が食べ物にかぶりつくや、それは金に変じてしまうのだ。
(スラヴォイ・ジジェク Looking Awry から)
Sunday, March 17, 2019
エドワード・アタイヤ「残酷な火」
エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...

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