Wednesday, March 13, 2019

グレート小鹿とプロレスLOVE

青柳と野村がコンビを解消し、アジアタッグのベルトも返上という事態を受け、三月二十一日に新チャンピオンを決定するためのトーナメント戦が行われることになった。参戦チームは四つ。全日本からは大森とブラック・めんそーれ、ジェイク・リーと岩本の二チームが出場し、大日本からは橋本と神谷、高橋と植木の二チームが出る。

三月一日には出場三チームによる記者会見が行われた。(ジェイクと岩本はプロモーションの仕事のため会見を欠席した。)その様子が全日本プロレスから動画としてアップロードされているのだが、両団体の記者会見のスタイルの相違が際だった、面白いビデオになっている。

全日本は、丸山みたいな例外がないわけではないが、どちらかというと真面目な、一本調子な発言が多い。それはそれでかまわないが、ときどきべつの側面も見せてもらわないと、見ているほうは退屈する。今回の会見でも全日本の選手は精彩を欠いた。ブラック・めんそーれは例によって例の如く、つまらないギャグをおりまぜながら意気込みを述べたが、要は、ひたすら相手をやっつけるということを言ったにすぎない。大森は真面目な顔をして真面目なことを言おうとするのだが、中味がないため、言葉が空回りをしはじめ、収拾がつかなくなってしまった。征矢とコンビを組んでいるときは絶妙の話術(あるいはぼけっぷり)を見せるのに、この会見では無慙な姿をさらしてしまった。

一方、大日本の選手たちは、いい意味で力の抜けた、愉快な発言を繰り広げた。橋本は「アジアのベルトを取って、アジアをもっと面白くするために来ました、狼ですう」と、終始張り合い抜けのするようなゆるい口調で話しつづけた。話の内容は面白くないが、神谷がうまくつっこみを入れて、二人の仲のよさが感じられた。高橋と植木はいろいろな方向、奇想天外な方向に話を持っていき、けっして口達者とはいえないが、視聴者へのサービス精神がたっぷりで、わたしはひどく好感を持ってしまった。

しかしこの記者会見をひきしめていたのは小鹿会長である。大森は小鹿の「アジアのベルトは大日本でこそ花が咲く」という言葉に反論して「それは一瞬のことで、すぐに散るだろう」と言った。小鹿はそれに再反論して「一年間三百六十五日ずっと花が咲くわけがない。しかし花の手入れをし、毎年咲かせてやるのが愛というものだ」と言った。この言葉には小鹿の左右に居並ぶ選手たちからも「そうだ」という囁き声が出た。大日本という団体の、選手への愛がはからずも会長の口から飛び出し、わたしはなんとなく温かい気持ちになった。これは凡庸な言葉ではあるものの、七十を越えた会長が孫のような若い選手たちに抱いている本音であるような気がした。この記者会見の価値は、小鹿会長のこの一言を引き出したことにある。

英語読解のヒント(145)

145. 付帯状況の with 基本表現と解説 He was sitting, book in hand, at an open window. 「彼は本を手にして開いた窓際に座っていた」 book in hand は with a book in his hand の...