この前、超能力が軍事的な目的で研究されている話をしたが、今度は動物が軍事利用されている話。ジュールズ・ハワードという動物学者がガーディアン紙に「白イルカを武器利用するなら、人類は真の意味で道を迷ってしまったことになる」というタイトルの記事を書いていた。四月の三十日に掲載されたものだ。
それによると先週、ノルウエーのある漁村の海に白イルカがあらわれ、水から顔を出し、奇妙な振る舞いをしてみせたのだという。しかもこのイルカの身体にはなにかが巻きついていて、「サンクトペテルブルクの器材」と書かれていたのだそうだ。次の瞬間、白イルカは夢のように姿を消した。
イルカは偵察に使われていたのか、なんなのかはよくわからない。しかし軍事利用されていたことは間違いないだろう。ロシアもアメリカも、イルカやアシカを飼い慣らし、機雷捜査や物品回収、人命救助といった用途に役立てようとしている。2007年、アメリカ海軍は千四百万ドルを海軍計画に費やしたが、その中には七十五匹のイルカを機雷除去用に訓練する計画も入っていた。
これは記事とは関係ないが、人間も動物も、電気的に脳を刺激することによって自由に行動を操作できるらしい。実験はすでに成功しており、たとえば人間の頭に電極をとりつけ、それをコンピュータにつなぎ、人間が右と「思え」ば、右に動く電動椅子などが可能なのだそうである。海洋生物をそのような技術開発の対象にするところまでは、まだいっていないのかも知れないが、わたしは軍事的な研究は進められていると思う。昔は人間魚雷などというものがあったが、それが魚雷イルカに変わるだろうと思う。
話が横道にそれたが、記事の書き手はこうした状況を歎き、「胸が悪くなる」とまで言っている。わたしも同感である。彼は映画の「エイリアン」に言及し、地球の軍事企業が宇宙の果てまで行って酸を吐き出すモンスターを軍事利用のために捕獲する、などというアイデアは荒唐無稽もはなはだしいと思っていたが、イルカやクジラを武器化する軍事産業を見ると、あれは人間に対する正確な観察であったと思わざるを得ないと嘆息している。
わたしもこれを読んで、沖縄の海を平気で埋め立てる自衛隊や政府のメンタリティーがすこし理解できたような気がした。ジュゴンに兵器としての大きな価値があったなら、彼らはけっしてその生息地を埋め立てなかったにちがいない。
Friday, May 3, 2019
H. W. ローデン「首つりは一度だけ」
ローデン(1895-1963)は食品会社の重役をしていた人で、四冊ほどミステリを書いている。この人を知っているのはよほどのマニアなのだろう。わたしは名前は知っていたが、作品が手に入らなかった。それがこのたび「首つりは一度だけ」と「死ぬには忙しすぎて」の二作を手に入れた。さっそ...

-
久しぶりにプロレスの話を書く。 四月二十八日に行われたチャンピオン・カーニバルで大谷選手がケガをした。肩の骨の骨折と聞いている。ビデオを見る限り、大谷選手がリングのエプロンからリング下の相手に一廻転して体当たりをくわせようとしたようである。そのときの落ち方が悪く、堅い床に肩をぶつ...
-
今朝、プロジェクト・グーテンバーグのサイトを見たら、トマス・ボイドの「麦畑を抜けて」(Through the Wheat)が電子書籍化されていた。これは戦争文学の、あまり知られざる傑作である。 今年からアメリカでは1923年出版の書籍がパブリックドメイン入りしたので、それを受けて...
-
「ミセス・バルフェイムは殺人の決心をした」という一文で本作ははじまる。 ミセス・バルフェイムは当時で云う「新しい女」の一人である。家に閉じこもる古いタイプの女性ではなく、男性顔負けの知的な会話もすれば、地域の社交をリードしもする。 彼女の良人デイブは考え方がやや古い政治家...