戦争小説を訳そうと思っているが、これを機にと、戦争小説でまだよんでなかった本を去年の終わり頃から読みはじめた。火野葦平の兵隊ものはその一つである。
彼は戦犯作家と認定されたが、確かに「土と兵隊」や「麦と兵隊」を読むと、他者にたいする視線の欠如に唖然とする。
ただ「土と兵隊」は非常に参考になった。どこが参考になったかというと、兵隊が泥まみれになって、進軍していくという部分である。
わたしが訳そうと考えている小説も「土と兵隊」と同様に季節は秋だ。そして山中を行軍するのだが、雨が降り、本道は泥濘と化し、兵隊達は泥人形のようになるのである。そして主人公である語り手は、「われわれは敵と戦っているのではなく、泥と戦っている」とすら考えるようになる。この作品はかなりシンボリックな書き方がされているのだが、しかし泥まみれになることが兵隊の現実であることを知ることが出来たのは貴重だ。わたしが作品に踏みこんでいくときの、ひとつの足場となるだろう。
Saturday, June 8, 2019
関口存男「新ドイツ語大講座 下」(4)
§4. Solch ein kleines Kind weiß von gar nichts. そんな 小さな子供は何も知らない。 一般的に「さような」という際には solch- を用います(英語の such )が、その用法には二三の場合が区別されます。まず題文...
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