最近読んだアカデミックな著作の中で、いちばん秀逸だったのはこのコルデラという人が書いた Surplus: Spinoza, Lacan という本だ。ラカンとスピノザの関係、とりわけスピノザの無限の概念からラカンの剰余の概念を説明していく手際はあざやかで、コンパクトにまとまっている。ジジェクなどはスピノザをラカンと相容れないと考えているようだが、そうではないということを見事を示してくれた。さらにマルクスの剰余概念にも議論は及び、わたしは大いに蒙を啓かれた。先月、岩井克人の「貨幣論」を読んで、まるでだめだと思ったが、コルデラの議論にははたと膝を打った。
コルデラはもともとはスピノザの研究者なのだろうか。ずいぶん大部の専門書を出しているようだ。しかしラカンに対する切り口は鋭く、明晰で、アレンカ・ズパンチッチにも負けないくらい知的な起爆力を持った議論を展開する。今年は彼女の本を探し出して、じっくり腰を据えて読もうと思っている。
Sunday, July 21, 2019
関口存男「新ドイツ語大講座 下」(4)
§4. Solch ein kleines Kind weiß von gar nichts. そんな 小さな子供は何も知らない。 一般的に「さような」という際には solch- を用います(英語の such )が、その用法には二三の場合が区別されます。まず題文...
-
昨年アマゾンから出版したチャールズ・ペリー作「溺れゆく若い男の肖像」とロバート・レスリー・ベレム作「ブルーマーダー」の販売を停止します。理由は著作権保護期間に対するわたしの勘違いで、いずれの作品もまだ日本ではパブリックドメイン入りをしていませんでした。自分の迂闊さを反省し、読者の...
-
久しぶりにプロレスの話を書く。 四月二十八日に行われたチャンピオン・カーニバルで大谷選手がケガをした。肩の骨の骨折と聞いている。ビデオを見る限り、大谷選手がリングのエプロンからリング下の相手に一廻転して体当たりをくわせようとしたようである。そのときの落ち方が悪く、堅い床に肩をぶつ...
-
ジョン・ラッセル・ファーンが1957年に書いたミステリ。おそらくファーンが書いたミステリのなかでももっとも出来のよい一作ではないか。 テリーという映写技師が借金に困り、とうとう自分が勤める映画館の金庫から金を盗むことになる。もともとこの映画館には泥棒がよく入っていたので、偽装する...