Tuesday, August 13, 2019

精神分析の今を知るために(7)

ヒステリーの問いとは、「なぜ私はあなたが私がそうであるといっているものなのか」である。つまり、主人によって私に押しつけられた象徴的同一性を私は問うのである。私は「私の中の私自身以上」のもの、小文字の対象aの名において抵抗する。ここにラカンの反アルチュセール的な要素の根本がある。$としての主体は、呼びかけ、イデオロギー的な召喚における再認の結果〔効果〕ではない。それ〔主体〕はむしろ、呼びかけによって私に与えられた同一性を疑問に付す身振りそのものを表しているのである。

(スラヴォイ・ジジェク「否定的なもののもとへの滞留」田崎秀明訳から)

エドワード・アタイヤ「残酷な火」

  エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...