本作は「闇に包まれて」(The Night of Time)の続編となるファンタジー。前作では東部戦線と思われるどこかの高地で、主人公のアダムが墓堀り班の一員として活躍するのだが、本作では疲弊しきった軍隊がドロヒッツの町に到着する場面からはじまる。彼らはここで大歓迎され、負傷兵は手厚い看護を受けることになる。将校たちは町のお偉方と贅沢な晩餐会に招かれ、したたか酔っぱらい、ついつい紅灯の巷に繰り出してしまう。
ところが、そこでお楽しみにふけっているとき、町長やら売春婦が奇怪な死を遂げてしまうのだ。軍医の診断によると疫病であるという。指揮官はさっそく紅灯街地区を隔離し、疫病との戦いがはじまる。前作は本物の戦争を描いていたが、本作では疫病との戦いだ。そしてアダムは相変わらず死者の埋葬に携わることになる。
ネタ晴らしになってしまうけれど、疫病は結局克服できない。ドロヒッツは死の町と化する。しかし軍隊はこれを逆用するのだ。もうすぐ敵がこの町に来る。そうすれば敵は疫病にかかって全滅するだろう、と。この強烈なシニシズムでもって本作は終わる。
前作も本作もどこかシュールな印象のある不思議な物語だが、それでいて現実に非常に鋭く切り込んでいる。
関口存男「新ドイツ語大講座 下」(4)
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