もちろんレマルクの名作だが、新潮文庫に収められた訳文は、はっきりいってあまりよくなかった。自分の日本語能力を棚に上げて言えば、文章がぞろっぺえでがある。
こういう文章は一文一文を丁寧に、かみしめて読むことができない。ついつい走り読みになってしまう。軍隊に関する用語、訳語をチェックするつもりで読みはじめたのだが、内容のよさが感じ取られただけに、しみじみと作品世界にひたってみたかった。
一つだけ感想を書いておく。この作品の中で、新兵が(はじめて戦場に来た兵士たち)が毒ガスの性質を知らずに死んでいったり、恐怖のあまり塹壕を飛び出したり、爆弾の音を聞き分けられずに命を落としたりという、実に生々しい事実が語られる部分がある。あれを読んだとき、黒部ダムの建設に携わった人から聞いた話を思い出した。それによると落盤事故などで死ぬ作業員は、やはり新人が多かったのだそうだ。ある程度経験を積むと、危険な場所や事故の発生を、徴候や勘で察知することができるのだが、それができない新人は危険な場所で危険な真似をしてむざむざ死んでしまうこともよくあったそうだ。黒部ダムの建設もある意味では戦争状況だったのだ。そしてそのような状況に置かれる人々はいつも同じである。さらに、兵士が死のうと戦況報告は「異常なし」となるように、黒部ダムでいくら人が死のうと、一般の人はダムの栄光のことしか聞くことがない。
Friday, August 30, 2019
マージェリー・アリンガム「ブラック・ダドレイ事件」
マージェリー・アリンガムはどうも苦手だ。ミステリ作家と分類されているもののそこにはファンタジーやSFの要素が組み込まれている。しかしそれはいいのだ。問題は物語にさっぱりのめりこめないという点である。わたしがミステリを読むとき、事件が起きるまではゆっくりと読む。しかし人が死ぬと...
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ウィリアム・スローン(William Sloane)は1906年に生まれ、74年に亡くなるまで編集者として活躍したが、実は30年代に二冊だけ小説も書いている。これが非常に出来のよい作品で、なぜ日本語の訳が出ていないのか、不思議なくらいである。 一冊は37年に出た「夜を歩いて」...
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§9. 不定の意を強める irgend 「何か」(etwas, was)といえばよいところを、特に念を入れて「何でもよいからとにかく何か」といいたい時には irgend etwas, irgend was といいます。その他不定詞(ein, jemand,...
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「ミセス・バルフェイムは殺人の決心をした」という一文で本作ははじまる。 ミセス・バルフェイムは当時で云う「新しい女」の一人である。家に閉じこもる古いタイプの女性ではなく、男性顔負けの知的な会話もすれば、地域の社交をリードしもする。 彼女の良人デイブは考え方がやや古い政治家...