Friday, December 13, 2019

ウィリアム・ル・キュー

今はもうウィリアム・ル・キューなんて誰も読まないが、彼が活躍した1890年代から1920年代は、現在のル・カレにも比すべき、スパイ小説の大家だった。

Project Gutenberg から出ている Tracked By Wireless というル・キューの小説をのぞいたら、冒頭に作者に対する各メディアの賞賛の声が集められて掲載されていた。それが十八もある。

「ウイリアム・ル・キュー氏はミステリーの巨匠だ。息もつかせぬ巧みな展開で、読者を次から次へと事件の渦に巻き込み、最後のページまで一気に読ませる」ペル・メル・ガゼット
「ル・キュー氏はもっとも熟練したセンセーショナル・フィクションの書き手の一人だ。読者の興味をがっちりつかんではなさない」パブリッシャーズ・サーキュラー
「ル・キュー氏はセンセーショナル・ノベルを完璧の極にまで高めた」ノーザン・ウィッグ
「『良酒に看板は不要』というが、今人気のミステリ作家ル・キュー氏の作品に賞賛の言葉は不要である。彼の名を冠した小説はどれも独創的で最後まで巧妙に造り上げられている」メソディスト・リコーダー

こんな感じである。

ル・キューを一躍有名にしたのは1906年からデイリー・メール紙に連載された「1910年 侵略」という小説。第一次世界大戦がはじまるずっと以前に、ドイツによるイギリス侵攻を描いた作品である。ロバート・アースキン・チルダースの名作「砂州の謎」もそうだが、このころはドイツの軍事力拡大に警戒の目を向けるよう呼びかける声があった。そういう警戒心、恐怖心にうまく乗っかる形で、この本は大ベストセラーになった。

ル・キューの作品でわたしが好きな一冊は1915年に書かれた「緑色光線の謎」。殺人光線という稚気に充ちたテーマを扱いながらも、この作者にしてはめずらしく文章が引きしまっていて、緊張感をもって最後まで読める。いや、彼の作品は、当時の小説作法をわきまえて読むなら、どれをとってもだいたい面白いと言える。

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