わたしがよく閲覧するサイトはもちろん電子化された書籍が手に入る場所である。プロジェクト・グーテンバーグ(これにはヨーロッパ、カナダ、オーストラリアなどの「支部」がある)、FadePage、ManyBooks、Hathi Trust、Internet Archive などだ。ほかにも書評を書くという条件付きで新刊書が読めるサイト、なんの条件もつけずに新刊書を無料配布する出版社のサイトなどもあって、これらをめぐっていると読む本には事欠かない。
パブリックドメイン入りした本を扱っているサイトにあるのは古くて詰まらない本ばかりではないのか、と思い込んでいる人もあるかもしれないが、そんなことはない。
プロジェクト・グーテンバーグ・カナダを見ると、最近はオラフ・ステープルドンの「オッド・ジョン」や「シリウス」といったSFの名作が並んでいる。今でも人気があるし、SFが好きな人にとっては必読とさえいえる小説である。
FadePage を見ると、ジェイムズ・ヒルトンの「So Well Remembered」(日本語訳はまだないはず)やオルダス・ハックスレイの「島」、イアン・フレミングの「オクトパシー」が並んでいる。いずれも秀作で、読んで損はない。(フレミングはわたしの愛読作家。映画のイメージとは違って文章は格調高い)
本家のプロジェクト・グーテンバーグは書籍を電子化する工場と化していて、娯楽書から専門書にいたるまであらゆる書籍がずらりと勢揃いしているが、今ちらりと「新刊」のリストを見ると、バジル・ウーンという人の「私が知るサラ・ベルナール」なんて本が出ているようだ。フランスの大女優や、ベル・エポックに興味のある人ならつい覗きたくなる本だろう。またスエーデンの作家シーグフリート・シーヴェルツの代表作 Selambs(英訳タイトルは Downstream)もある。これは第一次世界大戦と資本主義をテーマにした本として有名で、いま戦争文学を読んでいるわたしはいつか読もうと目をつけていた本だ。
Internet Archive となると、その蔵書は二百万冊を越える。重複するものも多数あるが、とにかくその増え方は尋常ではない。日本語の本も、近代デジタルライブラリの本よりきれいで読みやすい。わたしは芥川の全集を Internet Archive からダウンロードして愛読している。
こんな具合にフィクション、ノン・フィクションにかかわらず、興味深い本がほとんど常時あたらしく提示されている。読むのが追いつかず、本が溜まっていくというのが現実である。本好きにはたまらない時代になったと思う。
Monday, December 30, 2019
アリス・ジョリー「マッチ箱の少女」
この本はまだ読んでいない。ただ数日前に作者がガーディアン紙に新作「マッチ箱の少女」に関する一文を寄稿していて、それが面白かったのでさっそく注文した。寄稿された記事のタイトルは「自閉症に関する彼の研究は思いやりに溢れていた――ハンス・アスペルガーはいかにしてナチスに協力したか」( ...
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ウィリアム・スローン(William Sloane)は1906年に生まれ、74年に亡くなるまで編集者として活躍したが、実は30年代に二冊だけ小説も書いている。これが非常に出来のよい作品で、なぜ日本語の訳が出ていないのか、不思議なくらいである。 一冊は37年に出た「夜を歩いて」...
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アリソン・フラッドがガーディアン紙に「古本 文学的剽窃という薄暗い世界」というタイトルで記事を出していた。 最近ガーディアン紙上で盗作問題が連続して取り上げられたので、それをまとめたような内容になっている。それを読んで思ったことを書きつけておく。 わたしは学術論文でもないかぎり、...
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§9. 不定の意を強める irgend 「何か」(etwas, was)といえばよいところを、特に念を入れて「何でもよいからとにかく何か」といいたい時には irgend etwas, irgend was といいます。その他不定詞(ein, jemand,...