このサイトを見ていたら「ステラ・メイベリの告白」が所蔵リストに加わっているのに気づいた。
この本は以前にもレビューしたことがある。1896年に F. Anstey が出した作品だ。(F. Anstey は Thomas Anstey Guthrie のペンネーム。「ファンタジー」みたいに読めるのがミソである)彼は父と息子の心が入れ替わってしまう「入れ替わり」という奇想小説を書いて有名になった。
しかし「ステラ・メイベリ」は恐怖小説である。ステラの親友の心が悪魔に乗っ取られている。そう思った彼女が、親友を殺害するのだ。しかし本当に親友が悪魔に乗っ取られていたのか、ステラのほうが精神に異常をきたしてそんなふうに思ったのかはわからない。
面白い小説なので LibriVox に朗読が出たのをきっかけにまた読み直してみようと思った。つまり朗読を聞きながら読み直そうと思ったのである。
しかしながら正直に言うが、朗読者 annie70 さんの朗読はわたしの好みではない。少々抑揚をつけすぎで、そくそくと迫ってくるステラの異常性が感じられないのだ。おしゃべりが大好きな、そこらへんによくいるおばちゃんのように感じられてしまう。コメディである「入れ替わり」ならこの読み方でいいかもしれないが、「ねじの回転」を彷彿とさせる「ステラ・メイベリ」の場合はまずい。ちなみにジェイムズの「ねじの回転」も LibriVox に所蔵されているが、Elizabeth Klett さんによる朗読はわたしが理想とするものに近い。表情を内輪に引き締めた、緊張感のある朗読である。
というわけで、朗読は聞かず、Valancourt から出た新しい版の「ステラ・メイベリ」を手に入れて読むことにした。解説やら資料が豊富に添付された版でなかなか勉強になる。