権田保之助著
有朋堂発行
「基準独文和訳法」より
問題1(p.41)
Ich denke an ein Wort Goethes: daß ein Mann mit Ideen, der geistig schaffen will, nicht in einem Zimmer wohnen dürfe, das mit prächtigen Gegenständen vollgestellt sei, weil er dadurch abgelenkt werde.
研究事項
1)ein Mann Ideen の訳、殊に Idee の訳語は?
2)geistig schaffen とは何の意か?
3)an etw (4) denken の句と、mit etw vollgestellt sein の句とに注意。
4)最後の文にある dadurch は何を指すか?
5)...wohnen dürfe, ...vollgestellt sei, ...abgelenkt werde という接続法は何の為に使用されているか?
解釈要項
1)Idee は Idea(イデア)で、「観念」「理念」と訳す。故に ein Mann mit Ideen は「観念の人」「イデアを有する人」と訳す。然るに Idee を「思想」とか「意志」とかと解し、又は Ideal と混同して「理想」と解したる為め、或は「思想家」とか「理想ある人」とかと訳すことは誤である。
2)schaffen は「創造する」であって、其の創造が精神的の方面で行はるることを geistig schaffen と称す。「精神的に創造する」の義。
3)an etw (4) denken,「或物のことを思ふ」。――mit etw vollgestellt sein,「或物で飾り立てられてゐる」。
4)dadurch は上に記した事柄の„in einem Zimmer wohnen dürfe, das mit prächtigen Gegenständen vollgestellt sei“ を全部受けてゐる。其の一部丈けしか受けさせぬと、誤読となる。
5)daß 文章に接続法が使用されてゐるのは、Goethe の言葉を間接に表はさんとする間接説話法の為めである。
訳文
精神的に創造せんとする観念の人は、綺羅美やけき品物もて飾り立てられし部屋に住むことは、その為めに心擾さるゝが故に、其処に住み得ざるものであるといふ、ゲーテの言葉を憶ふ。
Tuesday, February 4, 2020
エドワード・アタイヤ「残酷な火」
エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...

-
アリソン・フラッドがガーディアン紙に「古本 文学的剽窃という薄暗い世界」というタイトルで記事を出していた。 最近ガーディアン紙上で盗作問題が連続して取り上げられたので、それをまとめたような内容になっている。それを読んで思ったことを書きつけておく。 わたしは学術論文でもないかぎり、...
-
今朝、プロジェクト・グーテンバーグのサイトを見たら、トマス・ボイドの「麦畑を抜けて」(Through the Wheat)が電子書籍化されていた。これは戦争文学の、あまり知られざる傑作である。 今年からアメリカでは1923年出版の書籍がパブリックドメイン入りしたので、それを受けて...
-
63. I don't know but (that /what) 基本表現と解説 I don't know but that he did it. 前項の Who knows の代わりに I don't know とか I cannot say ...