ポウイスといえばわたしはジョン・クーパー・ポウイスを思い出すのだが、T. F. ポウイスはその弟に当たる。弟も小説を書いていて、「ミスタ・ウエストン」はその代表作と云われている。Fadepage.com から電子化されていたので読んでみたが、なるほど馥郁たる文章で書かれた名作だと思う。
話は登場人物が多いため、説明し出すと面倒くさいのだが、要はウエストンとマイケルというワイン商人が、フォリーダウンという田舎町へ行ってワインを売りつけるという内容だ。なんだ、そんなことか、と思われるだろうが、どうもこのウエストンとマイケルは神様と天使らしいのである。神様が商売人に身をやつすとは奇妙に思われるかも知れないが、ワインはイエスの血と見なされているキリスト教文化を考えればべつに驚くことではない。
彼らがワインを売りに行くフォリーダウンには、さまざまな人々が住んでいる。他人の幸せそうな様子を見ると我慢がならなくなり、悪巧みをはたらこうとするミセス・ヴォスパー。神への信仰を失ったグローブ神父。若い娘を強姦して楽しんでいる自己中心的なマンビー家の二人の息子。動物たちにむかって神の教えを説くルーク。天使が自分を迎えにくると夢見るジェニー。物語は彼らの暮らしぶりを事細かに伝え、そののちウエストンやマイケルがワインを売りに来る場面がつづく。
ウエストンのワインは村人達に不思議な効果を与え、それまでの彼らの暮らしぶりに応じてよいことが起きたり、望みが叶ったり、罰を受けたりする。つまりこれはバンヤンの「天路歴程」みたいなアレゴリーといっていいだろう。しかしこの作品にはなにか変なところがある。なにか秘密を隠しているような、おかしな感触がある。たぶん近いうちにまた読み返し、考え直すことになりそうだ。
関口存男「新ドイツ語大講座 下」(19)
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