C.St.ジョン・スプリッグはクリストファー・コードウェルの本名である。この早世したマルクス主義批評家については以前どこかで書いたような気がするので、ここでは省略する。彼は小説も書いていて、この方面でもなかなかの力量を示している。「飛行士の死」などはミステリとしても悪くない。
しかし「わが手」(原題 This My Hand)は彼の作品の中でもとりわけ傑出した出来を示している。わたしはこの心理小説に圧倒された。知られざる名作とはまさにこういう小説を云うのだろう。
なにがすごいのか。この作品では登場人物の心理的な側面に注目してその生い立ちがたどられるのだが、その成長の仕方が有無を言わせぬある種の論理性を帯びているのである。しかもそれでいて、確かにこういう人間はいるな、と思わせる自然な人間性の表現にもなっている。こんな書き方ができるだけでも並の実力じゃないのだが、さらに作者はそうした人物たちを絡み合わせて、やはりある種の必然性をともなった結論へと物語を導いていく。つまり個々の人物の心理表現もすばらしければ、異なる性格のインターアクションも見事に表現されているのである。
明らかにフランスの心理小説をモデルにして書かれているが、「マクベス」の一節をタイトルにしているところからもわかるように、イギリス文学もその根底には横たわっている。アクションによってわくわくさせる物語ではない。あくまで文学の玄人好みの作品である。しかし静かに鈍色の光を放つ秀作だと思う。
ジョン・ロード「クラヴァトン事件」
ジョン・ロードのプリーストレイ博士ものには文章にある種の風格があって、わたしは物語よりそちらのほうを楽しんでいるようなところがある。名文家というわけではない。にもかかわらずどっしりと構えた、悠揚迫らぬ語り口で楽しませてくれる。 「クラヴァトン事件」はこの堂々たる語り口という点では...
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197. strange to say 基本表現と解説 Strange to say, many great men are superstitious. 「不思議にも偉人には迷信家が多い」 strange to say とか wonderful to relate の...
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十一月の第三木曜日、今年は二十日だが、この日は世界哲学デーである。というわけで今日は哲学書を扱う。東浩紀の「存在論的、郵便的」。じつは「批評空間」という雑誌に出ていた分は昔読んでいたのだが、本になったものは今回はじめて見た。 ラカンの精神分析を否定神学ととらえ、デリダはそれに対抗...
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§9. 不定の意を強める irgend 「何か」(etwas, was)といえばよいところを、特に念を入れて「何でもよいからとにかく何か」といいたい時には irgend etwas, irgend was といいます。その他不定詞(ein, jemand,...