危機に瀕したときにその人の本性が分かる、という俗説があるけれども、コロナ・ウイルスが猛威をふるう中、いろいろなことがはっきりと見えたのは悲しい「収穫」だった。ひとつはわれわれの健康に対する権利が利権によって制限されているという事実である。五輪延期が決まったとたん、罹患者の数の発表が急激に増えたこと、これは海外でも揶揄的に報道された。それまでも日本の発表する数字は少なすぎると疑われていたからだ。コロナに感染しているかどうかを調べるPCRテストが希望者に行われなかったのも、国立感染症研究所がデータを独占しようとして民間の機関には許可しなかったのだという。テストをしないことに対していろいろな「合理的説明」がなされたが、すべてはイデオロギーである。早期にコロナの封じ込めに成功した国、たとえば韓国や台湾では大規模で簡易な検査方法を用いて、患者の特定を急ぎ、その情報を共有した。
WHOですら利権団体である。日本から献金を受けると、日本のコロナに対する対応を賞賛したり、台湾がコロナの封じ込めに見事な手腕を発揮しても、中国に遠慮して彼らの成果を無視するのだ。香港ニュースに出演したWHOのアイルワード氏が台湾に関する質問を意図的に無視したことは世界的に大きく報じられた。これは大問題だ。武漢でコロナ・ウイルスが発見されたとき、WHOの対応が甘かったせいで、パンデミックに拡大したのではないかという指摘があるが、WHOが中国に遠慮しているという裏事情があったのだとしたら、なるほどそうした批判にはある程度の信憑性があるなと思う。しかしこれではWHOの意味がない。台湾がコロナ封じ込めのための知見を持っていてもWHOはそれを評価しないし、その他の国に伝えようとしない。たとえば台湾は中国からの人の流れを断固断ち切り、旅行者には早いうちから隔離を強制した。その結果、感染は他の国よりも抑えられ、死亡者もすくない。そのことをWHOが強調して世界に発信していたなら、もう少し状況は変化していただろう。
われわれはこうした利権の構造に安全や健康や自由や権利が、知らないうちに制限されているのではないかと、考えを巡らさなければならない。わたしがTPPに反対なのは、まさにそれがわれわれの自由の大切な一部を、企業に利権として売り渡すことになるからである。それは危機の時に甚大な損害となってわれわれにはねかえってくる。
Tuesday, April 7, 2020
英語読解のヒント(165)
165. 頓絶法の if 節 (1) 基本表現と解説 If I could but see him! 「彼に会えたなら!」あるいは「彼に会いたい!」という願望を示す。条件節のみを提示し帰結節を省略した、修辞学では頓絶法といわれる表現。また but は only の意味。...
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