さて四月六日の全日本の試合だが、こちらはまた独特の雰囲気が漂っていた。選手のレスリングに対する愛がぎゅっと詰め込まれたような興業だった。試合が次々と中止になり、身体の中にエネルギーが鬱積しているのだろう。そしてレスラーはやはりレスリングを通じてしか自己表現ができないと、あらためて感じたのだろう。レスリングへの情熱を全員がふたたび確認し合ったような、ちょっと感動的な試合だった。
最初の数試合は短時間で決着がついた。たまりにたまったエネルギーを爆発させあったので、実力が上と目される選手が格下からあっという間にスリーカウントを奪ったという格好だ。最後のメインイベントは、大迫力だった。諏訪魔・宮原・ゼウス 対 石川・ジェイク・青柳という面妖なチーム構成だったが、いずれ劣らぬ実力者ばかりで、お互い意地もあるし、時間を掛けて調整ができたからコンディションも抜群だ。延々六十分戦い、時間切れ引き分け。試合後は六人全員が並んで、画面の背後のファンたちに腕を上げてみせた。
ジェイクは「プロレスってみんなに希望とか、夢だったりとか、そういうのを提供する職業」と言ったけれど、それは「いま全日本プロレスにできること」と銘打たれたこの興業に参加した全選手の思いとおなじだろう。力道山が敗戦後の日本を熱狂させ、小さな明かりを灯してくれたが、そうしたプロレスの原点を全員が再確認した感じである。
彼らのような文化の継承者を政府はしっかり支援しなければならないのだが、およそ効果のない施策しか打ち出せない政府はさっさと退陣してほしい。コロナよりも今の政府のほうが人を殺している。