大好きなプロレスが興業中止となって、しかたないので将棋番組をちらちら見るようになった。そのなかで世界コンピュータオンライン大会がけっこう面白かった。その中の一戦、Daigorilla∞ 対 スーパーうさぴょん2Xを紹介したい。Daigorilla の中盤以降の指し回しがじつに整然としていてすばらしかった。
上の図は先手が56歩と突いて銀ばさみを見せたところ。後手はそれを避けて72銀と引いたが、先手はかまわず五筋の歩を突き出し、次図のように角を設置する。
上図以下△72銀▲55歩△63銀▲55歩△72銀▲56角
この角は七筋と三筋の桂馬を攻めるのが狙い。後手はその狙いをはずそうと工夫する。
上図以下△86歩▲同銀△54歩▲同歩△24歩
これでどちらの桂馬も歩のえじきにはならない。途中、五筋の歩を突き捨て角頭を攻める準備をしておいたところは後手もぬかりない。しかしそれでも先手は七筋を攻める。
上図以下▲75歩△同歩▲74歩△85桂▲67角△74銀▲76歩
上図以下△同歩▲75歩△77桂成▲同桂△同歩成▲同金△63銀▲55桂
上図まで進んで見事に桂馬の両取りが成立。後手は銀を83に引けばこの手は避けられるが、飛車先が重くなるし、先手に56銀と出られると、銀の性能に差が出すぎる。後手が54金と出てきたとき、63の銀を取らずに、じっと56銀と出た手がいい手だと感心。63の銀が逃げると、76角で無駄な駒が一つもない。コンピュータはただ駒得するより、駒の性能を高める指し方をする。以下、先手は順調に圧力をかけていって下図。
上図以下△57歩▲68金△54金▲56銀△84桂▲63桂成△同銀▲55歩△53金▲85銀△52玉▲74歩
後手も角の打ち場を求めて57歩をきかせたり、玉を早逃げしたりしてがんばっている。しかしここで72歩とは卑屈すぎて打てないだろう。どうするのかと思っていたら、勝負手を繰り出してきた。
上図以下△76歩▲78金△95歩▲同歩△98歩▲同香△97歩▲同香△74銀▲同銀△96歩
歩で細工をし、74銀から96歩がすごい。一応、飛角桂桂歩の攻めなので迫力がある。ここを凌げば勝ちだが、人間同士の実戦だといろいろ迷って間違えそうだ。ところがここから三手でコンピュータは明解な勝ちに持っていく。
上図以下▲96同香△75桂▲85銀打
なるほど、85銀まで来ると先手陣が安泰であるとはっきりする。以下は安定の手順で先手が後手の玉を追い詰めていった。
これはDaigorilla の会心譜だろう。指手が論理的で流れがあるから、人間にとっても参考になる。