さて、日本ではロックダウンの最中に賭け麻雀に興じた検事長がいたが、イギリスにはロックダウン政策を推し進めたにもかかわらず、自分はその期間中に両親の家へ400キロ以上も旅した政治家がいる。ドミニク・カミングズのことだ。イギリスも日本も右派が政権を取っているが、どちらも違反者に対する措置は大甘である。黒川検事長は賭博の罪にもかかわらず訓告・辞任ですまされ、カミングズに対してジョンソン首相は擁護の立場に回っている。これには普段は政権を応援しているデイリー・メールもかんかんに怒った。「カミングズがロックダウンの精神も規則も破ったことは明白だ。ジョンソン首相はこの件に関する一般市民の感情はよく理解しているというが、あきらかにわかっていない。どちらも信頼関係を破ったことに対して後悔のかけらも示していていない。彼らはわれわれを馬鹿だと思っているのか。政府と国家のためにもカミングズは辞任しなければならない。さもなければ首相は彼を辞めさせなければならない。言い訳は一切通用しない」と猛烈な論調で非難している。
ブラジルのボルソナロにしろアメリカのトランプにしろ、右派の指導者というのはどうしてこうも人々の気持ちを理解しない、想像力に欠けた人間ばかりなのだろう。カミングズは両親が心配だったのかもしれないが、親がコロナに感染し、死に際に立ち会えなかった人も大勢いるのだ。そうした人々の感情を理解する力がまるでない。イギリスの医療専門家チームの一人はロックダウン中に恋人に会ったということで辞任したが、そうした潔さもない。金と権力にしがみつく薄汚さばかりが目立つ。
危機に瀕したときほど人間の本性があらわれるというのは事実で、われわれは遅ればせながら自分たちの指導者がいかなる人間であるかを知ったわけである。これを奇貨として今後の選挙に役立てなければならないだろう。