Sunday, September 6, 2020

ジェファーソン・ファージョン「七死体」(1939)

 視点の切り替えが効果的に用いられていて、最後まで物語興味を持続させる好作だと思う。たぶんファージョンの代表作の一つと言えるのではないか。


最初はテッド・ライトというけちな泥棒の視点から始まる。彼が海にほど近い、人気のない家に忍び込むと、そのうちの一部屋に七人の死体が転がっていた。泡を食って逃げ出すテッドを怪しい男だとフリーランス記者のヘイゼイルディーンが追い、警察官に引き渡す。


次はケンダル警部とヘイゼルディーンの視点に移る。もちろん彼らは問題の家を捜査し、死体を発見する。彼らはこの家にフェナーという男が姪と一緒に住んでいたことをつきとめる。ところが彼らは殺人の起きる数時間前にどこかへ出かけているのだ。いま彼らはどこにいるのか。


ここからヘイゼルディーンの冒険がはじまる。彼はフランスに渡ったフェナーと姪を発見するが、悪党どもの計略にひっかかって頭部をなぐられ、監禁される。


ここで物語はすこし時間をさかのぼり、ケンダル警部の捜査の様子が語られる。彼はユーモアもあるし、捜査官としても優秀だ。すぐさま手掛かりからフェナーたちの居場所をつきとめ、フェナーの姪とヘイゼルディーンを救出する。しかしフェナー本人は依然として行方不明だ……。


こんな具合に視点を変化させつづけ、また冒険の場所もイギリス、フランス、アフリカの小島と変遷し、それが物語をあきさせずに読ませるうまい仕掛けになっている。推理にばかり興味を持つ人はがっかりするかもしれないけれど、最後の日記の部分には意外なひねりも隠されていて、気晴らしに面白い本を読みたいという人には大いにお勧めできる作品だ。Farjeon

関口存男「新ドイツ語大講座 下」(4)

§4.  Solch ein kleines Kind weiß von gar nichts. そんな 小さな子供は何も知らない。  一般的に「さような」という際には solch- を用います(英語の such )が、その用法には二三の場合が区別されます。まず題文...