Thursday, September 10, 2020

巻末の楽しみ

プロジェクト・グーテンバーグのよいところは、本を一冊まるごと電子化する点である。英語には from cover to cover という言い方があるけれど、まさにそれを地でいくところがすごい。本には本文以外にも注目すべき部分があるからだ。


わたしがもっとも気になるのは巻末に置かれた出版社の本のリストである。日本の文庫本などにも巻末に既刊本の紹介が載っているが、あれである。


最近たまたまバリー・ペイン(Barry Pain)の Here and Hereafter という本を読んでいたら、巻末にメシューエン社の出版物のリストが三十ページも載っていた。しかも「文学一般」とか「古代都市」とか「骨董」とかいろいろにジャンルわけされている。これを見ると Here and Hereafter が出版された1911年当時にどんな本が読まれていたのか、如実にわかって興味深い。


たとえば「文学作品」のリストを見ると、まず最初に Albanesi (E. Maria) というまったくわたしの知らない作家の本が六点あがっている。作家の並びはABC順である。あげられている作品数が多い作家に注目してみようか。


Baring-Gould (S.) 19点

Corelli (Marie) 15点

Hope (Anthony) 12点

Jacobs (W. W.) 11点

Phillpotts (Eden) 12点

Williamson (C. N. and A. M.) 10点


十点以上作品があがっているのは以上六名。コレーリやホープ、ジェイコブズ、フィルポッツあたりは当然の人気だが、ベアリンググールドが19点というのは驚きだ。ベアリンググールドは「六ペニー本」のカテゴリーにおいてもいちばん出版点数が多い。六ペニー本は安価な文庫本みたいなものだが、他の作家はどれも多くて五六点しか出ていないのに、彼だけは一四点も出ている。たぶんこれは出版社の趣味とか、作家と出版社との関係とかだけでなく、当時の人々の本に対する嗜好を示すものとして考えるべきなのだろう。他の出版社のリストがあったなら、それと比較することでより正確なことがいえるようになるだろうけど。


こんな具合に巻末の既刊本リストは当時の人気作家や人々の趣味を知るのに非常に重要な資料となる。わたしは暇な折には知らない作家をネット上でチェックし、本が入手可能かどうかも調べる。たまに面白い本が見つかるからだ。ほとんどは絶版となっているのだけれど。


このリストの中で一点、喉から手が出るほど読みたい本があった。それは Olivia Shakespear の Uncle Hilary である。この本は1909年に出版されてそれ以後再刊されたことがないんじゃないだろうか。しかし最近 Valancourt から出た彼女の Beauty's Hour を読み、その才筆に一驚した人なら、彼女の最高作と言われる Uncle Hilary を必ず読もうとするだろう。どこかから出してくれないだろうか。

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