著作権が著者の死後五十年で切れる国において、来年は1970年に亡くなった作家がパブリックドメイン入りすることになる。これがなかなか豪華な顔ぶれとなっている。
まずジョン・ドス・パソス、「U.S.A.」の作者。わたしはどちらかというと初期の One Man's Initiation とか Thres Soldiers, Manhattann Transfer などのほうが好きだが。
つぎにE. M. フォルスター。この人はほんとうにいい小説を書く。筋がよく練られていて表現も格調高い。「洗練」という言葉がぴったりの作家だ。
それからジョン・オハラ。日本での知名度はないが、アメリカでは今でも映画化された作品を通して知る人が多い。わたしは訳そうかな、と思っている作品がひとつある。
さらに小説家ではないが、文化的影響力では上記の誰にも負けていないバートランド・ラッセル。
ドイツ語圏からはエーリッヒ・レマルク。「西部戦線異状なし」の作者だ。フランス語圏からはフランソワ・モーリアック。「テレーズ・デスケール」は読んだ人も多いはず。日本人作家としては三島由紀夫がパブリックドメインに入る。
いずれも国際的知名度の高い、じつに豪華なメンバーだが、これにミステリ分野からスタンレイ・ガードナーが加わるのだ。圧巻としかいいようがない。
ほかにも良い作品を書いているマイナー作家が大勢、パブリックドメインに入る。ナイジェル・バルチンとかガイ・エンドアとかフランシス・パーキンソン・カイズとかV. C. クリントン・バデレイとかジョン・ガンサーとか、たぶん本国でも知る人はほとんどいないだろうが、いずれも生きていた頃は著名な作家で、今読んでもおもしろい作品を書いている。フランシス・パーキンソン・カイズのチェス小説やミステリは訳したいけどやたらと長いのでどうしようか迷っている。