Friday, January 22, 2021

ベン・エイムズ・ウィリアムズ「いたずら」(1933)

ベン・エイムズ・ウィリアムズ(1889-1953)は南北戦争を描いた House Divided (1947)で有名な作家だが、ミステリもいくつか書いている。わたしが今回読んだのは「いたずら」という、メーン州の田舎町を舞台にした短めの小説である。前半はニューイングランドの田舎の生活が匂い立つような描写がつづくが、後半に入ると殺人事件が起きる。しかしミステリかというと、そうではない。ジャドという障害を持ち、心のねじけた男が、嘘をつきまくって田舎町の小さな共同体に波乱を引き起こそうとするのだが、結局みずからの目論見におぼれて命を失うという、モラリスティックな内容となっている。

べつに面白い小説ではないのだが、ジャドにはイアーゴのような悪の魅力を少しだけ感じた。冒頭で彼は見知らぬ旅人に道を聞かれるのだが、もちろん彼はでたらめを教える。彼は人が困ることを想像するのが大好きなのだ。他の人の境遇にたいする羨望の念が悪意に転化しているのだ。彼は田舎町(フラターニティ、つまり友愛という町だ)で陰湿ないたずらを繰り返す。男の子がお母さんのおつかいで砂糖を買いに来ると、彼が見ていないすきに砂糖の入った袋の位置を変え、男の子が振り返ったとき、その肘が袋に当たって中身がぶちまけられるようにする。しかしこんな男に町の人は注意したり抗議したりしない。ジャドは異常に執念深く、恨みを抱くととことん相手にいやがらせを繰り返すからだ。

彼は恨みを抱いているある男が殺人事件に関わっていることを見出し、それを保安官に伝える。彼の証言にもとづいてその男は拘留され、ジャドはしてやったりと大満足だ。ところがジャドの証言が必ずしも正確ではなく、犯人がほかにいる可能性もあることを拘留された男の兄が見事に証明する。兄はさっそく保安官にその話をしに行くのだが、ジャドは気に入らず、見つかった新証拠を消してしまおうとするのだ。ところがその途中で彼は命を落とす。

コミュニケーションとその齟齬、悪意と正義などといった主題が読み取れ、わたしはこういうものに着目する作家はわりと好んで読むほうだ。代表作は二三冊読んでおこうという気になった。

独逸語大講座(20)

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