Saturday, March 27, 2021

「悪い種子」発売のお知らせ

先日ウィリアム・マーチ作「悪い種子」の書評をこのブログに掲載したが、あの小説を戯曲化した作品を翻訳して出版することにした。作者はマクスウェル・アンダーソン。彼は生前は非常に評価の高い劇作家だった。死後はなぜかアメリカ文学のキャノンからはずされてしまったが、政治を題材にしたよい作品をいくつか書いている。「悪い種子」もブロードウェイで当たりを取り、ピューリッツァー賞の候補にもなった。


「悪い種子」は八歳の美少女が連続殺人を犯すという衝撃的な内容の話で、フェミニストたちも着目する作品だ。1950年代には映画化もされている。主人公の少女ローダを演じたパティ・マコーマックがすばらしい演技を見せているが、アメリカ映画の悪弊で、原作のインパクトが弱まるような物語に作り替えられている。ぜひとも小説版あるいは戯曲版を読んでもらいたいと思う。

小説の新訳を出そうかなとも思ったのだけれど、商業出版されたものとはよほどのことがないかぎりかち合わないようにするのが私の方針。それに原作を書いたウィリアム・マーチは他の作品を訳すかも知れないので、今回は見送ることにした。

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エドワード・アタイヤ「残酷な火」

  エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...