Friday, August 6, 2021

他者の視点

ガーディアンでもニューヨークタイムズでもタイムズ・リテラリ・サプルメントでも、英語圏の書評は国際的だ。自分の国の作家だけでなく、海外の作家の注目作もいち早く紹介してくれる。しかも日本とちがってLGBTに対する意識が高いので、多様性のある作家紹介になっている。Going Places: The international authors to read this summer というガーディアンの記事も、目配りの行き届いた、よい文学紹介になっている。

「今夏、読むべき本」として取り上げられているのは


1. ドイツ What You Can See from Here by Mariana Leky

2. フィンランド The Rabbit Factor by Antti Tuomainen

3. 日本 Black Box by Shiori Ito

4. アンゴラ Transparent City by Ondjaki

5. 中国 More Than One Child by Shen Yang

6. アルゼンチン Elena Knows by Claudia Pineiro

7. フランス The Last One by Tatima Daas

8. ロシア Just the Plague by Ludmila Ulitskaya

9. イタリア The Hummingbird by Sandro Veronesi


である。

1は精神分析的な味わいがある小説。2は人気作家による北欧ノワール。3は伊藤詩織のレイプ告発本。4はルワンダの下層階級を描き、5は中国の一人っ子政策に反してできた子供たちの命運を追っている。6は犯罪小説だが、抑圧的な社会における女性のありかたを研究し、7は複雑なアイデンティティーを担う若い女の生き方に着目した作品。8は「コロナ文学」ではなく、1939年にモスクワで発生した疫病を扱っている。9は実験的な書き方をした作品で、トラウマ的な記憶との和解を描いている。

日本の注目作として伊藤詩織の本を取り上げたのは選者の炯眼だと思う。フィクションのなかに一冊だけノンフィクションが混じり、奇妙な感じがするけれども、この選者が選んでいる作品はいずれも社会の陰を描いたものばかりだ。そして文化的劣化が進む一方の日本、コロナ禍で負の側面がますます露わになりつつある日本を、的確に表現している本として伊藤の著作は上位に位置するものだと思う。彼女が描くレイプの場面は、われわれをして男の醜く浅ましいファンタジー空間に直面せしめる。これが同時に(別姓婚をかたくなに否定し、女性蔑視発言をつづける)保守政治の原風景でもあることを、忘れてはならない。性的関係はじつは政治や文化の根底に潜み、それを規定する力を持つ。伊藤の作品はこのリストの中では異色であるかも知れないが、まさに性の政治性という、世界が直面している問題の本質を鋭くついている。

独逸語大講座(20)

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