Tuesday, September 14, 2021

ジョン・ラッセル・ファーン「ひとつのことを除いて」(1947)

ファーンのミステリ、おそらく彼の全ミステリの中でもかなり出来のいいミステリだろうと思う。

リチャードは美しいとある女優と秘密裡に付き合い、結婚の約束までしていた。ところが彼女の冷たい人柄に嫌気が差し、かつまた別の女と恋をした結果、彼は女優に別れてくれと頼み込む。しかし女優は女優で自分の都合があり、おいそれとそんな要求はのめない。あくまで彼との結婚を求める。そこでリチャードは女優の殺害をもくろむのである。

もう一人の架空の人物を設定し、家と自動車を買い、殺害の準備を万端に調えるリチャード。そして計画の実行。予定していなかった殺人も犯してしまったが、まずまずうまくいったと彼は考える。

ここまでが物語の前半三分の一である。残りの部分は、その犯罪がいかに警察の捜査によって解き明かされるか、それを描いている。つまり本書は倒叙形式のミステリだ。

ただちょっと変わっているのは、リチャードが知り合いの警部の誘いのおかげで捜査に付き添うことになり、その状況をつぶさに知ることができるという点である。彼は自分が犯した犯罪の捜査の過程を知る立場に立つのだ。そこで自分のへまに気づき、それを糊塗しようとさらに予定になかった行動をしなければならなくなる。ここに奇妙な緊迫感が生じて、物語を面白くしている。

リチャードは有名な化学者という設定になっているが、見栄ばかり張る、落ち着きのない、短気な少壮学者である。化学はよくできるのだろうが、世間的な知恵はない。どんなに犯罪をうまく仕組んでも、この性格が彼を破滅へと導いていく。完全犯罪を構成し、それを周到に遂行できる、天才的な犯人でないのは残念だが(ホームズ対モリアーティーのように善と悪の頂上対決はいつの世も読者を興奮させてくれる)、リチャードはリチャードで興味深い個性を持っている。なにしろ元恋人の肉体を細片化し、それがまじったモルタルで自動車のガレージを作るのだから。

パルプ作家らしい異常な設定もあるが、しかし意外なくらい正統的な倒叙ミステリにしあがってもいる。

独逸語大講座(20)

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