Sunday, December 26, 2021

ジェシカ・ライアン「理由を尋ねた男」(1945)


ジェシカ・ライアン(Jessica Dorothea Cadwalader Ryan (1914-1972))は映画俳優ロバート・ライアンの妻。彼女も俳優だったが、学校を創設したり、子供向けの本を書いたりもした。本作は彼女が書いたミステリ。

 書き方はつたないが、なんというのだろう、ハリウッド映画を見ているような楽しさがある。

主人公はグレゴリ・セルギエヴィッチ・パブロフというスラブ語の大学教授。小男で、独身で、まったく冴えないのだが、いろいろなことに「なぜ?」という疑問を感じる、学者らしい人物だ。彼が住むサンフランシスコの町で、一人の麻薬中毒者が野垂れ死にをした。この事件にふと興味を持ったパブロフは大学が夏期休暇に入ったのをいいことに自分なりの捜査をはじめる。すると意外や意外、事件の糸は高名な音楽家ザブロウスキや、市議会議員のウィチェットへと伸びているではないか。そしてパブロフの捜査の最中に関係者の一人が殺害され、容疑者として市議会議員の美しい娘が逮捕される。事件の背景を探るパブロフは大男の警察官オショーネシイの助力を得て、事件を解決していく。

この作品は推理小説ではない。十九世紀にはやったセンセーション・ノベルに近い。パブロフが事件を探っていくと、関係者のあいだに複雑な人間関係の存在することが分かってくる。そこから驚くべき事実が次々と浮かび上がってきて、絶えず読者を驚かせてくれる、そういう小説である。この手の小説はさんざん書かれて、ついには読者にあきられてしまった。しかし今でもソープオペラのような形で存続し続けている。実際、立て続けにこの手の小説を読むと食傷気味になるが、たまに読むと楽しいものだ。この手のメロドラマにはなにか不思議な魅力がある。

本作の中には人種偏見や世界大戦、亡命者といった当時の国際情勢を反映した内容が含まれている。古い形式を使いながらも題材には新しさがあり、最後までなかなか興味深く読ませる。文章はうまくないが、よく作り込まれた作品だ。

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