Wednesday, December 8, 2021

ベイナード・H・ケンドリック「血に染まるルイーザ湖」

原題は Blood on Lake Louisa 。1934年の作品。ケンドリックの作品はたぶんはじめて読むが、予想以上の出来に驚いた。文章はとくに巧みなところはないけれど平明で読みやすい。オレンジ・クレストというアメリカの架空の町を舞台に事件が展開するが、どの章の最後でも意外な事実が提示され、どうしても次の章が読みたくなるようになっている。サービス精神旺盛な作者である。

物語はオレンジ・クレストの医者ライアンによって語られる。事件の発端は、釣りに出掛けたライアンが湖のほとりで死体を見つけるところから始まる。死んでいたのはミッチェルという銀行家である。なぜ彼は殺されたのか。事件の現場にはいろいろと不可解な事実があるのだが、ミッチェルの遺言により大金を受け取ることになっていたマーヴィンという男がいちばんの容疑者とみなされた。マーヴィンは、最初のうち、事件当日の自分の行動を秘密にしたりして怪しいことこのうえなかったのだ。が、どうやら彼は事件と関係がないらしいことがわかってくる。その間、オレンジ・クレストの町では次々と人が死に、事件の重要証拠が消されていった。それだけではない。事件の真相を知ろうとした語り手のライアン医師にも魔の手は忍びよる。

ライアンがショットガンで命を狙われる廃屋

本作は「推理」小説とは言えない。冒険小説、サスペンスと呼んだ方があたっている。ただし最初に言ったように、書き方がなかなか秀逸で先を、先をと読ませる力がある。犯人は……とある出来事がどうして起きたのか、それを考えたら犯人はかなりしぼられるだろう。しかし作者は精一杯レッド・ヘリングをばらまいて読者を楽しませようとしている。

英語読解のヒント(145)

145. 付帯状況の with 基本表現と解説 He was sitting, book in hand, at an open window. 「彼は本を手にして開いた窓際に座っていた」 book in hand は with a book in his hand の...